「・・・ ユリンさまっ・・ あの・・もうそろそろお戻りにならないと、さすがにテジュン様が捜しにこられてユリンさまがおられないとわかり、皇子にー」

 

「いいのいいの、皇子が怖かったらダリも戻っていいわよ?」

 

「そんなっ!!そんなことをすればそれこそ皇子にー・・」

 

「あっ、いたいたっ!ボンソナ~~~!!おっはよぉーーー!!久しぶりぃ~~~」

 

 

私は、寝ていた部屋のドアを開けるや否や、本当にドアの前を見張るようにして座っていたテジュンと目が合って驚いた

目覚めたのならすぐに皇子のところへ、というテジュンに

ダリのところで着替えてから行くから、そう伝えてきて、と皇子の元へと追いやり

宮殿を抜け出し、こうして、久しぶりの庭園を散歩している

 

後ろから心配そうにダリがついてくる

 

宮殿の庭園を散歩する

私がここに居た頃の日課

 

わずかの間、離れていただけなのに

なんて懐かしく感じるんだろう

 

 

「ユリン様っ!?おおおぉぉぉーーっ、ユリンさまぁ~~~」

 

 

私の姿を見つけたボンソンが、駆け寄ってきてくれた

 

 

「ごきげんよう、元気だった?相変わらずいい香りがしてる。みんなが頑張ってる証拠ね」

 

「・・・ おはようございます。ユリン様こそ、お元気でしたか?あの・・・」

 

「シィーーーッ」

 

 

私は、人差し指を口元にもっていくと

 

「私のことは、誰にも内緒よ?」

 

そうボンソンに言った途端、後ろでダリが咳払いをした

とてもわざとらしく

 

 

「・・・ 滅多なことは、お口になさらぬよう、お願い申し上げます」

 

「あ・・、ごめんなさい」

 

 

ペロリと舌を出す私に、ボンソンが笑って

 

「使用人は口が堅いことが、雇用条件ですから!」

 

そう答えた

 

私としては、久しぶりに会えた旧友に抱きつきたいような衝動に駆られるところだけど

そんなことをすれば、ダリになんて言われるかわからない

いや、当のボンソンだって驚くかな

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、ユリン妃!よかった、会えて!貴女を捜していたのよ」

 

 

「ヨンア妃さまっ!?」

 

私よりも先に、後ろにいるダリがそう呼んだおかげで

ここまで出かかっているのに出てこなかった名前を思い出した

 

なんといっても、ミリョン皇子の奥様は数人いらっしゃるから・・・

 

でもこのヨンア妃とは、話す機会も多かったし

私が名前を憶えているふたりの妃のうちのおひとり

 

 

「ヨンア妃さま?こんな朝早くからいったい、どうなさったのですか?」

 

 

出来る限りの丁寧な言葉で話しかける

 

今日はミリョン皇子は一緒じゃないのね

だいたい、ふたりが一緒の時にしか会うことはなかったから

おひとりで、なんてちょっと不思議

 

しかも、朝早くに

 

「あなたに尋ねたいことがあったの」

 

「・・・ 尋ねたいこと?私に?・・・ですか?」

 

 

なんだなんだ?

 

ちょっと緊張する

 

 

「そう!」

 

 

そういうと、ヨンア妃は、ダリの方へと視線を向けた

 

「・・・・・」

 

 

内緒で話したい、ってこと?

 

その視線をうけ、ダリが私を見るので

私がうなずくと

 

「・・ 失礼いたします」

 

ダリは、お辞儀をしたまま、下がっていった

 

 

見えなくなるところまで、とは言わないが

小声で話す分には、その声は聞こえないであろうところまで

 

その姿を確認すると

私は、どうぞ、とヨンア妃を促した

 

 

 

「あなた・・・ この間、私のことをミリョン皇子の正妃だ、って言ったけど、それはなぜ?」

 

 

「・・っ!!?」

 

 

 

えええーーーーっ

 

私が、そんなことをっ!?

 

 

と、ここまで出かかった言葉を必死で呑み込んだ

 

 

ユリンだ!

 

ユリンが言ったんだわっ?

 

ヨンア妃のことを正妃だと?

なぜそんなことを・・・

 

あああーーーっ

もしかして、あっちで見た文献に、ミリョン皇子の正妃がヨンア妃だって書かれてたってこと?

そうだわ、ミリョン皇子は王様になっていたんだもん

当然そこには、正妃の名前もあったはず・・・

 

 

ユリンはそれを憶えていたんだわっ

 

 

 

「・・ なぜ?って・・」

 

 

そんなこと聞かれても、なぜなんだか自分にはわからないし・・・

むしろ意外よ

だって、正妃はシンシア妃かな?なんて思ってたし

 

私が聞きたいわっ

 

どうしてヨンア妃が正妃になれたんだろう?

 

 

「そうよ、なぜあんなことを言ったの?ミリョン皇子だって・・・お気になさっていらしたわ。

私が正妃だなどと言われて・・・」

 

 

そういって瞳を落とすヨンア妃は、かつて私が話していた、もっと血の気の多い・・じゃなくてえと・・元気な感じ?がなくて・・・

 

 

「ミリョン皇子の正妃になるのは嫌なの?」

 

 

思わず聞いてしまった

 

 

「ちがっー・・ いいえ、そうではなく・・。私などが、正妃になれるわけないでしょう?なのにあなたが変なことを言うから、あれから何だか、皇子が余計、意地悪になった、っていうか・・」

 

「ええーーっ?ミリョン皇子って意地悪したりするの?」

 

 

ユノ皇子なら想像つくけど

 

 

「意地悪っていうか、からかっておられるのよ!きっと・・・」

 

 

ヨンア妃・・

顔が赤くなってる・・

 

え?

 

ええっ?

 

ヨンア妃って、こんな可愛い感じの人だった?

もっと怖いイメージだったけど・・・

 

実はいい人だったのっ?

 

 

「ヨンア妃、大丈夫!きっとあなたが正妃なのよ!私もびっくりだけど」

 

「は?何よ、それ・・」

 

「あ、いや、違う違う!変なこと言ってごめんなさい。でもきっと、貴女が正妃になるのよ。だから自信を持ってミリョン皇子と添い遂げて!!らっぶらぶ、いちゃいちゃして、バンバン子供を産んだらいいのよっ!」

 

 

・・って、何を言ってるの?私

確かミリョン王には子供ができなくてー

 

 

「御子を産むって、無理よ、そんなこと!そもそも・・ 私はなかなか寝所に呼ばれることはなくて・・いつも呼ばれるのはー」

 

そこまで言って口をつぐむヨンア妃

 

想像がついた

いつも呼ばれる妃が誰かということは

 

私が正妃になるであろう、と思っていた妃だということでしょう?きっと・・・

 

そうよね

きっと誰の目から見てもミリョン皇子が愛していらっしゃるのはー

 

 

「あ・・・」

 

 

でもそういえば・・・

ミリョン皇子、前に言っておられたわよね?

シンシア妃は、ユノ皇子が好きなんだとか・・・

 

 

「なに?」

 

「ううん、なんでもない」

 

 

そりゃあ、ここに来た当初はそうだったのかもしれないけど

だってユノ皇子と、だと思い込んで来たっていうし?

だけど嫁いでしまったらもう、そこはそれ、ミリョン皇子のことを愛してるに決まってる

 

 

「なに?気になるじゃないの!」

 

「あ、いや、ううん、なんでもなかった。ごめんなさい。それより、寝所に呼ばれないなんて・・

ちょっとよくわからないんだけど、ミリョン皇子の場合、妃がたくさんいらっしゃるじゃない?ある程度は順番とか・・あるの?それともー」

 

「まったくの皇子のお気に召すままで。続けて呼ばれるのは決まってひとり・・ あとはほんと、気まぐれでしょうね」

 

「じゃあ、いつ呼ばれるかわからないってこと?」

 

私の質問に、うんうん、とうなずくヨンア妃

 

何だかとっても可愛く感じるようになってしまった

 

ヨンア妃がミリョン皇子の御子を妊娠しちゃえばいいんじゃないの?

ってことは・・・

ヨンア妃が排卵日に呼ばれたらいいのよね

でも呼ばれるのは皇子の気まぐれ・・・

 

「ねね、それって・・ 呼ばれたのがお月様の日、っていうかほら・・・そういうときだったらー」

「もちろん、すぐ下がるように言われるわ。忌み嫌われるもの」

 

私が声を潜めて聞いたのに、ヨンア妃のトーンは同じだった

 

 

「でもそうすると、次に呼ばれるのがますます遠ざかってしまうのよ

だから・・・ そこに当たらないよう祈るしかないのだけど・・」

 

 

祈るしかないってそんな・・・

 

要は、ヨンア妃がたくさん呼ばれるようになるといいのよね

 

「ねぇヨンア妃?その・・ 呼ばれたら、ミリョン皇子を悦ばせるためにその・・

色々やったりしてるの?」

 

今度も声を潜めて聞いた

 

でもヨンア妃は、きょとんとするだけで

 

「皇子を悦ばせるために色々やるって、何を?」

 

「・・・・・・・・」

 

 

何を?ってそんな・・・///////

 

 

「え?あの・・ そういうときってヨンア妃はどうしてるの?」

 

「どう、って・・ そんなの、皇子になされるがまま、ですわ?何か違う・・ああっ!!!」

 

 

突然ヨンア妃が大きく叫んだものだから

離れたところにいたダリがこっちを覗き込むように身を乗り出した

 

私は大丈夫だから、と手で制す

 

 

「どうしたの?ヨンア妃・・」

 

「あなたっ!ユノ皇子にたいそう寵愛をうけているとか・・そういえば、噂だったわ!!

夜伽担当の女官が一切呼ばれなくなった、と・・・なに?なんなのっ?皇子に悦ばれる何かがあるというのっ!?」

 

「いや、それはしてないけど・・・ え?私、そんなこと言われてたの?」

 

そういえば・・・

寵愛を受けてるっていうセリフは何度か聞いたような・・・

 

 

しかし、なに?

夜伽女官?そんなものがー

 

 

「ねぇ、ユリン妃!!教えてっ!皇子の寵愛をうけるためにはどうしたらいいのっ!?」

 

「え?あ、いや・・えと・・」

 

「あなたはいったい何をしていたのっ!?」

 

「いや、私は別にしてないけど・・」

 

 

とりあえず、頭に浮かぶあれやこれや・・・・

 

私は、声を潜めて、ヨンア妃と話し込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ それで?私のところへ報告に来て戻ってみたら、アイツがいなくなっていた、と?」

 

「だ、大丈夫だって。ダリもいませんから!きっとふたりして今頃、庭園の方にでもー」

 

「それは姿を確認してから言え!いや、自分で行くー」

 

「皇子っ!ちょっと待ってくださいよ、それはオレが行ってきますから・・。

皇子は今日の政務を進めておいてください。だいたい、本物でもないんだからそんな焦らなくても・・・ むしろ、本物の行方を追った方がいいんじゃないですか?あいつが言ってたあるところで無事にいるっていうのはいったいどこなのか、戻ってきたら吐かせてー」

 

「テジュン。自分で行く、と言ったら自分で行く。これ以上私の行く手を塞ぐといくらおまえでも許さぬぞ?」

 

「・・っ?・・はぁ?皇子・・ ちょっと落ち着いてくださいよ、許さないってー」

 

「元はと言えば、お前が目を離すのが悪い。お前は私の命に背いた。罰を受けよ」

 

 

行く手を阻むテジュンを退けた

 

 

「皇子の命に背いた、罰を受けよ、って・・・」

 

「私の代わりにお前が政務をすすめておけ。それとー」

 

「は~?政務をって・・・ そんな無茶苦茶な・・ まだ何かあるんですか?」

 

 

諦めてオレの後ろを早足でついてくるテジュンに

振り向いて告げた

 

 

「今夜から私が寝ずの番をしようではないか」

 

 

「・・っ!?」

 

 

 

そんなに驚くでない

 

 

 

「寝ずの番って・・ それは・・ え?まさか、皇子が部屋の前で?いやいや、そんなこと、父さんに見つかったらなんて言われるかー」

 

「だから罰を受けよ、と申したではないか」

 

「皇子っ!!」

 

「ならば、私があの者と寝所を共にすることを許せ」

 

「は・・?」

 

「まぁ、おまえの許しなど必要ないがな?私は皇子だ」

 

「ちょっ・・ 皇子ですよっ?皇子だから、ですよねっ!?アイツとはー」

 

 

 

諦めよ、テジュン

 

 

私はあの者が欲しいのだ

 

 

 

 

 

 

たまらなく・・・・  な?

 

 

 

 

 

消えたなど

 

 

 

許さぬぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ババーーン!!

 

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