今日もユリンと訪れていた公園のベンチへと向かっていた

 

「もはや日課だな・・」

 

思わず漏れる独り言

 

 

りかさんに出会い

ユリンはもう、あっちへと戻ってしまったのはわかっているのに

 

どうしても彼女の影を求めてしまう

 

わずか2週間少しを共に過ごしただけなのに

考古学に明け暮れていた自分にとって

あの2週間は、なんて楽しん時間だったんだろう・・・

 

時が過ぎていくとともに

憶えておきたくても

薄れていく彼女との記憶

 

それでも顔を忘れずに済むのは

たまに会うりかさんのおかげなのかもしれない

 

いや、りかさんに会うことで、余計に彼女が恋しくなってしまっているような気がする

 

 

「ハハハ・・ 我ながら未練がましいな・・・」

 

 

・・・・え?

 

 

 

 

そんな僕の視線の先に

 

あのベンチに佇む、どう見てもこの景色にそぐわない恰好をした女性がひとり

 

 

 

「・・・ ユリン?」

 

 

 

幻か?

 

遂に僕は、そこまでー

 

 

「・・ ユンホっ!?」

 

 

僕の呟きに、彼女は振り向いて立ち上がると

僕の名を呼び、駆け寄ってきた

 

 

うそだろ・・

 

 

「ユリンっ?ユリンなのっ?」

 

 

勢いよく僕の腕の中へと駆けこんできた彼女を抱き締め

問いかけずにはいられない

 

でももう、確信していた

 

この、腕の中にいるのが、彼女だと

 

 

「ユンホッ・・ よかった・・会えた・・また、貴方に・・」

 

「それは僕のセリフだよ・・ ユリン・・」

 

 

僕の腕の中で震える彼女を包み込むように抱く

 

力のままに抱き締めかけ、そんなことをすれば彼女が

つぶれてしまうんじゃないかと思いとどまったのだ

 

 

「ユンホ・・ 私・・ 皇子に会ってきたの・・そしたらね?

ユノユノ皇子って、あなたにそっくりだったのよ?」

 

 

ビクンッ

 

 

それは・・・

りかさんから聞いていたとおり

 

やっぱり・・・

あっちへ行っていたのか・・・

そうだよな

この格好・・

 

出会った頃と同じだ

 

 

「え?どうして・・ どうして戻ってきたの?キミが戻ってきたってことは、またりかさんが?」

 

 

「なに?ユンホ・・ びっくりしないの?皇子のこと・・。り・・か・・さん?りかさんってダレ?」

 

 

「ユリン、とにかく、僕の部屋へ帰ろう?いいね?」

 

 

コクンとうなずく彼女の頭を撫で

僕は二度と離すまいという想いで彼女の手を握った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私と同じ顔をしたりかさんって人が居た、っていうことなの?」

 

 

部屋へ戻り、ユリンが消えてから出会ったりかさんとの話をして聞かせると

 

いったん驚いた顔をしていたものの

次第に考え込み始め、何かを納得したかのようにうなずき始めた

 

 

「そう・・ それで・・・ そういうことだったのね・・」

 

 

「どうした?何かあったの?」

 

 

僕が問いかけると

ユリンは、顔をあげ

そしてとても悲しそうな顔をした

 

 

「あのね?ユンホ・・ 私・・ あっちで・・」

 

 

そこまで言って、言葉を詰まらせる

 

 

「どうした?言いたくなかったら言わなくてもいいよ?」

 

 

ユリンは首を横に振ると

 

「私、・・・ 全く歓迎されてなかったの・・・ ユノユノ皇子に」

 

そう、振り絞るように言った途端、みるみる涙が目をためていく

 

大きな雫が頬を流れおちるのを

僕は親指で拭ってやった

 

 

「・・・ ひどい奴だな、ユノユノ皇子ってのは」

 

「皇子と同じ顔で言わないで」

 

「やっと笑った」

 

「・・っ!!」

 

「僕は歓迎するよ?」

 

「・・ ユンホ・・」

 

「また、・・・ 僕のところへ戻ってきてくれて・・・」

 

 

ゆっくり、ユリンを抱き寄せる

 

 

「嬉しくて、嬉しくて・・・ たまらない。ほら・・ 今もドキドキしてる・・聞こえるだろ?」

 

ユリンの耳を僕の胸につけるように抱き締めていく

 

「本当に・・。」

 

「君が突然消えてしまって、僕はどんなに寂しかったか・・。どんなに君のことを想っていたのか、思い知らされたんだよ?ねぇ、ユリン、君は?」

 

抱き締めたい・・

 

もっと強く・・

 

 

「私は・・・」

 

 

 

ハッー

 

 

そのとき、初めて、僕の腕の中で、戸惑いの表情をしているユリンに気がついた

 

僕は

今までユリンに再会できた喜びで

すっかり舞い上がってしまっていた

 

自分だけがー

 

 

「ごめん・・」

 

 

 

ぐいっー

 

ユリンの肩をもち、遠ざけると

 

「お腹は?減ってない?何か買って来るよ」

 

立ち上がった

 

 

そんな僕を

申し訳なさそうに見上げる彼女の瞳

 

あぁ、そうだった

彼女は

 

皇子の妃になるんだと

あんなに嬉々として語っていたじゃないか

 

皇子に歓迎されてなかったからといって

 

彼女はきっと

 

皇子を愛しているんだ・・・

 

僕と同じ顔をした皇子を・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン

 

 

 

僕は、部屋を出ると

ポケットから携帯を取り出して

りかさんの番号を鳴らしてみた

 

 

何度か鳴らすうち、留守番電話サービスへとつながるアナウンスが流れた

 

 

出ない・・・

 

 

 

「やっぱり・・・ 今度はりかさんが、あっちへ・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく・・・

 

 

 

 

 

現世では、切ないユンホさん

いったいどうなってしまうんでしょうか?