「どうも。これは僕が預かっておきますので。」

 

 

山風物産に行くと、通された応接室で、現れた仁宮くんが私の渡した企画書を手にして

松本主任にそういった

 

そして私に向かい

 

どうして連れてくるんだよぉー

 

と言わんばかりの視線を投げてきてる

間違いなく

そんな圧を感じずにはいられない

 

 

「ありがとうございます。ところでー・・ 新田さんは?」

 

 

そうそう、新田さん!

主任が厳しいよ、って言ってた人

 

 

「あー、新田ですか?新田はただいま席を外しておりまして」

 

そう言うと、にっこり微笑む仁宮くん

 

あれ?

何だか違和感・・・

 

すると今度は主任から、おまえ、ちゃんとアポとったんだよな?

と言わんばかりの視線の圧がー

 

 

「あの、仁宮くん・・ 私、電話で新田さんとー」

 

ーー お待ちしていますね

 

思ってたより優しい声だった

 

 

「では今日はこれで。もうお帰りになられて結構ですよ?」

 

 

なになに?

仁宮くんのこの有無を言わさない感じ

さっきから不自然極まりないんですけどっ

 

 

 

バーーンっ

 

 

そのときだった

応接室の扉が勢いよく開けられて

 

「にーみーやー!!!なんのつもり?第一応接室だなんて言っておいて

ここはどこよ!第三応接室じゃないのっ!!」

 

 

綺麗なロングヘアの人が現れた

 

 

「新田さんっ!?」

 

仁宮君の驚きの声が上がった

 

 

 

え?

新田さん、って・・

じゃあこの綺麗な人が?

 

電話でアポとったときに女性だって知ってちょっと驚いたけど

まさかこんなに綺麗な人だとは思わなかったから

めちゃくちゃびっくりしてます、ハイ

 

この人が・・・厳しいんですか?主任・・

 

という目を隣に立つ主任へと向けてみる

 

 

 

「松本くぅーーーーん!!!どんなの持ってきたの?

私をワクワクさせてくれるんでしょうね??」

 

「もちろんですよ、新田さん」

 

 

入ってくるなり、主任の目の前に立った

 

ピンヒールの似合うほんっとに綺麗な人だ

 

え?

厳しい?

っていうかこのひと、主任にくっつきすぎじゃない?

 

なんて思って見ていたら、ふっと新田さんの視線がこっちに移った

 

「あ、私、この度担当させていただく、桜井と申しますっ!!」

 

慌てて挨拶をして、名刺を差し出す

 

すると新田さんはその名刺を手にとってはみたものの

一瞥して仁宮くんへと渡した

 

「企画書に挟んでおいて」

 

「はい」

 

言われたとおりにする仁宮くん

 

 

「期待させると悪いから最初から言っておくけど。今回、実は別の会社でかなりいいプランをもらっているの」

 

 

・・え?

 

 

別の会社って・・

聞いてない

 

私は慌てて仁宮くんを見た

 

片眉下げてる・・!!

 

そんな・・・

かなりいいってことは、ほぼほぼそっちで決まりかけてるってこと?

 

 

「でも、決め手に欠けてるってことですよね?」

 

 

主任が新田さんに聞いた

 

 

すると新田さん、嬉しそうな顔で主任を見る

 

 

「さあ?どうかしら?」

 

 

「じゃないと、新田さん、貴重な時間を割いてうちの企画書、見てくださらないでしょう?」

 

 

うわぁ~

美男美女って見つめあうだけでこんなに絵になるんですねっ

 

じゃなくて!!!

 

 

「ありがとうございますっ!!そんな貴重な機会をくださって!!きっと新田さんの心を動かすものになってると思います!!もし興味をもってくだされば、すぐに詳しい説明をするためにお伺いさせていただきますしっー」

 

「ちょっとちょっと、なに?この子・・・」

 

「桜井ですっ!よろしくお願いしますっ!!」

 

「プッ!・・ 松本くぅん、ずいぶん熱い子、連れてきたわね?」

 

「だって、嫌いじゃないですよね?新田さん^^」

 

「ね、ちょっとこのまま待っていてもらえる?」

 

「もちろんですよ。な?桜井?」

 

「はいっ!!」

 

 

このまま?

まさかそれって・・・

今、企画書、見ちゃうってこと?

 

 

「仁宮、行くわよ?」

 

「はいっー」

 

 

そう言うと新田さんは仁宮くんを連れて出ていってしまった

 

 

残された主任と私

 

 

「・・・ どうしましょうか?」

 

 

「どうする、って、待っとくしかないだろ。」

 

 

主任は早々にソファに座り、最初に出されたお茶を飲んでいる

 

「お前も座ったら?さすがにちょっと時間、かかると思うぞ?」

 

「・・・ ですよね」

 

 

私も座る

 

主任の隣に

 

 

「失礼します・・」

 

 

何だか照れる・・

 

 

「あー、くそっ・・ もうちょっと攻めときゃよかったかなぁ~~」

 

 

ビクッ

 

突然、主任がぼやき始めたからびっくり

 

「え?」

 

「あれ、ほぼほぼ決まってる感じだったな?」

 

「ええーーっ!だって主任、なんか余裕そうに話してませんでした?」

 

「なわけないだろ。」

 

 

ひぃーーーーっ

 

全然余裕だと思ってた

もしかしてライバルいるのだって知ってたのかな

って思ったほど!!

 

 

「でも主任!!私、主任に言われて作り直してなかったら、あんな自信持って言えませんでしたよ?だから感謝してます!ありがとうございました!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「最初のままで、軽い気持ちで持ってきていたら、きっと・・・」

 

 

仁宮君に渡した企画書、取り返して帰ってたかも

 

 

「よくできてたよ。・・・ 俺だって、自信なかったら新田さんにあそこまで言えねーから」

 

 

 

ぽんぽんぽん・・・

 

 

うわ・・

わわわわわっ・・・

 

 

主任の手が、頭ぽんぽん、してくれてるっ

私の好きなやつっ!

 

 

なんだろ?

やっぱりこの手がいいっ!!

 

 

・・・・・ って、いかんいかん

すぐその気になってしまう

 

 

私は主任の手を両手で握ると

突き放した

 

 

「こういうのは・・ あんまり、しない方がいいと思います」

 

「・・ 悪い。セクハラか・・」

 

「セクハラっ?はっ?ちっがいますよっ!そりゃあ私だって、ちょっとはご褒美的な感じでほしいんですけど、でもやっぱりよくないじゃないですかっ、こんなのはっー」

 

「・・ ご褒美?」

 

「え?あ、いやあの・・」

 

 

仕事!!

取引先の応接室で何を欲情してるんだ、私は!!!

 

 

「そうだ、主任!さっき、もっと攻めておけばよかった、って言われたじゃないですか?具体的にどの辺を、ですか?戻ってこられたらそこをもう少しアピールしたほうがいいんじゃないかと思うんですけどっ」

 

「あー・・・・ そうだな、俺もそう思ってた」

 

 

 

 

 

そして、私たちの待ち時間は決して無駄にはならなかった

 

嬉々とした顔で戻ってこられた新田さんは

もっともっと、と私たちの企画を欲しがってくださり

要望点も加え、改善プランを後日また、お持ちすることになったのだ

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~・・ すっかり遅くなったな」

 

 

山風物産を出ると、外はもう暗くなってきていた

 

 

「はい、すみませんでした!遅くなって・・ でもよかったです!!やっぱり主任に一緒に来てもらえて・・・ 私一人だったら絶対こんなの、無理でしたっ」

 

「・・ そんなの、上司として当然のことだろうが」

 

 

ズキッ

 

ーー 上司として

 

 

「・・ ですよねー」

 

 

 

「まどかっー」

 

 

 

ドキッ

 

 

振り向くと、山風物産のビルから、仁宮くんが走ってきた

 

 

「仁宮くん・・?どうしたの?」

 

「・・ハァ・・ハァ・・、すみません、主任さん、ちょっとまどか・・いいですか?」

 

 

息を切らした仁宮くんが、私の手をとって、主任に聞いた

 

 

「それ、プライベート?」

 

 

主任が質問返し

 

 

「・・・・ そうですけど?」

 

「じゃあ悪いね、この後まだ、会社帰ってやることあるから」

 

パシーンッ

私の手をとっていた仁宮君の手をはたいて切り離し、

 

 

「お疲れ様でした。」

 

そう挨拶をすると

 

 

 

ぐいっと私の手を引っ張って、主任が歩き出す

 

 

「えっ?主任っ?・・仁宮くん・・」

 

 

気になって振り返ると

 

なんと仁宮くん・・・

 

 

私に向かって、握った手を挙げ、親指を突き出し、ウィンクをー!!

 

 

なになに?

 

くちもとが動いた

 

 

ーー あ、と、で、で、ん、わ、す、る・・?