「お昼、ちゃんと食べた?」
大場が、俺のデスクの横に満面の笑みでやってきた
「これ、俺と智子から。」
そういうと、ストンと栄養ドリンクを1本置いた
ーー 智子、って言ったな?
「ランチ、一緒にしてきたのか?」
「ん?そうなんだよ、今日たまったま、近くで仕事あるからって智子がね?」
何度も名前言うな
わーかった、わかった
「ハイハイ、おめっとさん。お幸せに」
せっかくなんでもらったドリンクのキャップをあけると
口をつけながら、大場にあっちへ行け、とばかりに手を振って見せる
ほっとくと、このままここでランチの会話でも聞かせられそうだ
「あ、そういえばお前さ、まどかちゃんと・・ 話してないの?」
「はっ?」
俺は慌ててまわりを確認した
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、まだみんな戻ってきてないって」
俺の心配をよそに、笑って見せる大場
まったく。。。
実は肝が据わってるんだよな、こいつ
「・・ 話すって何を?別に話すことなんかー」
「なぁ~んだ、てっきり昨日、あのあとまどかちゃんと話したんだと思ってたよ
お待たせ~、さぁ、付き合おうか!!」
両手を広げる大場
半ば、呆れ顔で見つめるオレ
おまえの頭の中はお花畑か・・?
「・・・ 待たないって言われたし」
「え・・?」
「よく考えたらそう言われたんだったな~って・・ っていうか、なんか男とランチしてるし」
どういう関係なんだか知らないが、ランチをするって親しそうだったし
もうオレのことなんて待ってないってことだ
そうだよな、こんなオッサン・・・
「ちょ、ちょっと待ってよ、シュン?なに?自虐ってんの?」
「は?」
もしかして・・
声、出てたか?
「まどかちゃん、男とランチしてるの?あー、じゃあ外でランチってそうだったんだ?」
「・・・・・・・」
ランチを終えた皆が、ぼちぼち、戻ってき始めた
「そろそろ休憩終わるぞ、おまえも自分とこ戻れ」
「はーい・・ でもさ、ちゃんと話した方がいいと思うよ?彼女、そんな簡単にー」
「もーいいから、黙って席行け」
しっしっしっ、と手を振って大場を追いやる
ふぅ~・・・
ゴクリ
ふたりからもらった栄養ドリンクが身体に染み渡る感じがした
遅くなった~!!!
焦って戻ると、もう、ほとんどみんな席について午後の仕事を再開している
松本主任と目が合った
パッー
思わず逸らす
習慣化していることって怖いよね
ついつい見てしまうのよね
席に戻るときの私の癖
すぐには治りませんっ
「桜井ー」
席につく前に呼ばれた
その声に
ドキッとなる自分が、やっぱりまだいる
「はい」
顔を向けると
当然だけど目が合う
「・・・ どうだった?」
「え?あ、はい、企画書を持ってこいとー」
「わかった。用意ができたら持ってきて。一緒に行く」
え?一緒に?
主任と一緒に行くことなんて
ここ最近ずっとなかったから・・・
ぶわっと身体の中が熱くなる
でもだめだめ
仁宮くんから、私ひとりで来るように言われたんだった
「あの、主任・・ 持っていくのは私ひとりでもー」
主任のデスクの横で若干しどろもどろ気味にそういう私に
椅子に座ったまま、じっと私を見上げてくる主任
うっ・・・ (やられるっー)
「・・・ あそこの新田さん、知ってる?結構厳しい人だよ?」
え?新田さん?
厳しい人?
そんなの知らないっ
聞いてないよー
でも私だって、右田さんみたいに新人なわけじゃないし
厳しい人だからってひるんでちゃダメだ!
それに仁宮くんだっているわけだし
「大丈夫です、今回は企画書を持っていくだけだしー」
「却下。」
「え?」
今、却下、って言いました?
「今おまえ、企画書を持っていくだけだ、って言っただろ?そんなんじゃ受け取ってもらえないよ?」
「え?でも、仁宮くんだっているしー」
ギロッー
うわっー
主任の目がっ・・
「知り合いだって言うから担当させようかと思ったけど、そんな甘いこと言ってると外すぞ?」
ビクッー
「す、すみませんっ!!」
た、確かに私、仁宮くんがいるからって簡単に考えてた
うわー
どうしよ
主任を怒らせちゃった
こんなの、マジで怒ってる顔だってば
「主任の言う通り、ちょっと・・いえ、かなり甘えてました!!気を引き締めて頑張りますので、外さないでください!!」
思いっきり頭を下げる
「じゃ、用意ができたら持ってきて。」
「はいっ!!」
よかったぁ~~~・・・
ホッとして顔をあげる
フッと笑った主任と目が合った
きゅーーん・・・
あ~・・
ダメだ・・
またやられた
どうやったら諦めることなんてできるんだろう?
このままだと私・・・
不倫でもいいですっ
なんて言ってしまいそうだわwwww