「あれ?この研究室って、ユンホさんの名前じゃないよ?」
「あ、バレた?ハハ」
ユンホさんが通う大学の研究室へと招き入れられ
そのドアにかかる表札の名前の違いに気づいた
「実はここの教授、昔から放浪癖のある人でね、今も大学が休み中なのをいいことに、どこか行ってるみたいで、全然来てないんだ。
そういう時は自由に使ってもいいって言われてるからー」
確かに鍵、開けてたもんね?
よほど信頼されているんだろうな
「それにしても、すっごい本の数っていうか・・・ 散らかり方、半端ないね?これじゃあ、どこに何があるんだかわからない・・」
「そう?僕は結構わかるけど・・ これも慣れかな?ハハ」
どうやら、散らかしているのは、教授だけじゃなさそうね・・・
「あれ~・・ おかしいな・・ 確かこのへんにあったはずなのに・・・」
「ないの?」
さっきから、本の山を崩したり、どけたりして一生懸命探してくれてるけど
どうやらユリン姫と見ていた文献とやらは見当たらないらしい
「もういいですよ、ユンホさん」
「いやいや、ちょっと待って。僕も気になるし・・」
「また見つかったら、ってことで」
「・・・ せっかく来てもらったのに・・ ごめんね?」
きゅんっ
そ・・ そんな顔して謝らないでください!
はぁ~
顔は同じなのに、皇子とは全然違うなぁ・・・
「ユンホさんって、優しい」
「え?」
「皇子と同じ顔なのに、なんか・・ 全然違う」
「そう・・なの? キミだって、ユリンと同じ顔してるのに違うよ?」
「ユリンさんってどんなー」
「皇子ってどんなー」
ふたりのセリフが被った
どうやらお互い、自分とよく似たもうひとりの人が気になるみたい
顔を見合わせ、ププッと笑った
でも、先にしゃべり始めたのは、ユンホさんの方
「彼女はね、そうだな・・ おっとりしているようで、時々すごい強さを感じるっていうか・・
う~ん・・ うまく言えないな。でも、お姫様って感じだったよ。自分が嫁ぐ皇子は、すごくかっこよくって素敵な方だって評判なの
って嬉しそうに言ってた」
「え・・・」
そんな、楽しみにしてたの・・?
皇子に嫁ぐ日を・・・
「隣国だけど、自分の国にまで噂になるほど素敵なんだ、って何度自慢されたことか!」
「だったら今頃、皇子の顔を見てびっくりしてるわよねっ、あなたにそっくりで!」
「あ・・ え?そんなに似てるの?」
「うん、黙ってたらそっくり!」
「・・ 何だか照れるな・・ あんなにユリンが言ってた人とそっくりだなんて・・ハハハ」
「ちょっとぉ~~・・ そんなことで照れないでよ~もう、皇子なんてー」
「・・・?」
ん?て顔でユンホさんに見つめられた
うわっ・・・
似てるだけに照れるっ/////
皇子なんて・・・
皇子なんて・・・
「・・ ユンホさんは、ユリンさんがいなくなって・・ 寂しくないの?」
「あー・・ ん~・・ そりゃ寂しいよ。でも、もともと恋人だったわけでもないし・・」
「ええっ?恋人じゃなかったのっ?」
あんなに必死で捜してたから、てっきりー
「そうだよ?」
「・・・・・」
ってことは・・・ ユンホさんとユリン姫は・・・ 何もなかった、ってこと・・?
「まぁ、僕は好きだったけどね。伝える前にいなくなっちゃった・・・。」
「・・っ!!!」
「突然知らない土地にやってきて、僕しか頼れないなんてさ?
勝手に運命みたいに感じてたけど・・・ まさか本当にお姫様だったなんてね、ハハハ」
「ユンホさぁ~ん・・・ !そんな・・ 好きだとも言えなかったなんて・・・
なんて純粋なんですかっ!!!純朴っ!ダメですよぉーもうっ」
あーもうっ、そんなあなたのユリンさん、今頃皇子に食べられちゃってますって!
なんて気の毒・・!!
皇子は絶倫なんです!なんて、こんな純粋なユンホさんにはとても言えない!!
「でもユリンは、皇子に嫁ぐことを楽しみにしてたわけだから・・・ よかった、ってことだよね」
「・・・・・・・・・」
よかった?
よかったんだろうか・・・
あーでも・・
そうか・・
ユリンさんは、楽しみにしてたのよね、皇子の元に嫁ぐことを・・・
今までひとりも妃を迎えなかったユノ皇子の、たったひとりの妃
なんか・・・
羨ましいな・・・
「それで?皇子は・・ どんな人なの?」
「あ・・・」
どんな人か、って言うと・・・
「重臣たちにも・・・ 街の人たちにも・・・ とっても慕われていて・・」
テジュン・・・
ミヌ・・・
ダリ・・・
街で会った、リュウさんのお仲間さんたち・・・
「うん、ユリンさんがユンホさんに言ってたように、それはそれは、素敵な皇子だったよ?」
「・・ そっか。じゃあ・・ よかったね」
ほんと・・
素敵な皇子だった・・・
「・・・・・」
「・・・ りかさん?」
あっちにいるときは・・・
あんなに帰りたいって思ってたのに
夢であってほしい、って思ったのに
いざこうして帰ってきてみると・・・
もう、二度と会えないなんて・・・
「・・・ りかさんも好きだったんだね?皇子のこと・・」
好き・・?
私が・・ 皇子を?
・
・
・
・
・
トンバン王国では、ホラン国王参列の元、ユノユノ皇子とユリン姫の婚礼の儀が
滞りなく行われ、安心したホラン国王は隣国へと帰って行った
第一皇子であるミリョンは考えていた
不思議だ・・・
ユリン姫が最初にユノの宮殿にきたとき
私はあれが、偽物ではないかとずっと疑っていた
こちらに来る道中で襲われたと聞き
姫だけが助かるなど
ありえないと思ったのだ
だが・・・
ユノとの婚礼の儀を終え
ホラン国王との様子をみるに、間違いなくあれは本物の姫
どうなっているのか?
私が疑っていたのは・・・
稀有だったのか?
「ミリョン皇子、どうかなさったのですか・・?」
「ヨンア・・」
突然背後から声をかけられ、驚いた
「・・・ わたくしで申し訳ございません」
「何を言うー」
私にお辞儀をしたままのヨンア妃の頭を見つめながら
この者は現れるたびにそう言って謝るな、と
そう・・・
おそらくヨンアは、私の気持ちを知っているのだ
「ヨンー」
「最近のユリン姫・・・ あー、もう妃とお呼びせねばならないのですね?
何だか以前とは別人のようで使用人たちも戸惑っているように見えて仕方ありませんわ」
顔を上げ、私とは目を合わせず庭園の方をみつめたヨンア妃がそう言った
「戸惑っている・・?」
「だって以前は、使用人たちとも名前で呼び合い、まるで友達であるかのようにふるまっていましたのに
今ではまるで・・ そう、シンシア妃のようにお上品でー」
「そうだな、ヨンア妃・・ 以前は貴女ともよくケンカをしていたのでは?」
「ケンカっ?・・ 皇子っ?ケンカだなどと人聞きの悪いっ・・ 私はそんなー」
「ハハハッ・・ やっと私の方を見てくれた」
「////////っ!? 皇子っ?・・・皇子も私には意地が悪いですわっ!!」
「そうか・・ 以前とは別人のようか・・・」
私の他にもそう感じる者がいる、と・・・
「まぁ・・ ちょっとそう思うだけで、実際そんなこと、あるはずもないのですけど」
「そうだな・・。私がヨンア妃に意地が悪いということも、あるはずがないのだがな?」
「皇子っ!!?//////// 失礼しますっ!!」
「まぁ待て。そんな、行ってしまわずともよいではないか。せっかくだ。庭園を一緒に散歩しよう!」
「・・・・・・・・・・・」
ヨンア妃が足を止めた
「それとも・・・ 私と散歩するのは嫌か?」
「そんなことなどございませんわっ!!」
おずおずと私の方へと戻ってきて、隣に並んだヨンア妃の手をとると
ふたりで庭園を歩いた・・・
・
・
・
・
・
その頃、ユリン妃も、庭園の方へとひとり、歩いていた
ここにきて、初めて庭園を歩いたときは
たくさんの使用人たちから声をかけられ、驚いたものだった
あのとき・・・
私の名を呼ぶ使用人たちに
自分がものすごく歓迎されているのだと
嬉しくなってしまったけど
私のここでの対応が悪かったのか
今では誰も、あの時のような顔では声をかけてくれなくなった
いったい何がいけなかったのか・・・
「危ないですっ!ユリンさまっー」
突然、誰かが出てきて私の腕を掴んだ
「申し訳ありません、ここはまだ剪定が終わっていなくて、木の枝が通りの近くに伸びております
それ以上、道を外れ中の方へと歩かれるとー」
「・・・・ あなた・・は?」
そう、彼も以前はにこにこ笑って声をかけてくれていた
なのに今は、目を伏せー
「・・・・・ お声をおかけしましたこと、申し訳ございませんでした」
そうお辞儀をして、去って行った
彼が去って行った方を見やると
向こうから、ミリョン皇子がお妃さまを伴って、歩いていらっしゃるのが見えた
「なんて仲睦まじい・・・」
婚礼の儀をおえたというのに
ユノユノ皇子は、未だ、私と寝所を共にしてくださることもなければ
あんなふうに一緒に散歩をしてくださることもない
今日も今日とて
政務に忙しいと、テジュンと一緒にどこかへ行かれてしまった
素敵な皇子だと聞いていたのに・・・・
今まで妃を娶られなかったのもわかる気がするわ・・・
「これはこれはユリン妃ではありませんか」
「ミリョン皇子・・・」
婚礼の儀 以来だわ・・
私は、失礼のなきよう、お辞儀をすると
「ごきげんよう・・ 」
隣に並ぶお妃さまのお名前がわからない・・・
ミリョン皇子の数人いらっしゃるお妃さまの顔とお名前をまだ把握していないのだ
「おやおや、ヨンア妃のことを忘れてしまったのですか?」
「ヨンア妃っ!?・・・これは失礼いたしましたっ!私ったら、ミリョン皇子の正妃さまにー」
私は慌ててさらに深く頭を下げる
「私の・・ 正妃・・ だと・・?」
「ちょっとユリン姫っ!!・・じゃなかった、ユリン妃!あなた、何をおっしゃってるのっ!?
皇子の正妃などまだ決まってもいないし、だいいちそれが私などと、あるわけもないのにっ!!」
「え・・」
正妃が・・・
決まっていない・・・?
それならばどうしてそんな・・・ 私・・・
ヨンア妃と聞いて正妃さまだと思ったのかしら・・・・?