「皇子、どちらへ?」
街へ出ようとしたところで、ドンハに掴まった
「・・ 少し所用で出掛けてくる」
「なりませぬ!もうじき、ホラン国王が到着なさるのですよ?しかも、おひとりでなどー」
もう・・?
そんなに早く参られるのか・・・!
しかし・・・
それでもー
行かねばならぬ
誰かに任せてひとり待つなどー
「すぐに戻るっー」
「皇子っ!」
「テジュンッー ついてまいれっー」
「ハッ!」
「お、おいっ、テジュナ!!」
ドンハを遮り、テジュンを供に、私は街へと急いだ
「皇子・・ 街のどちらへ・・」
「リュウのところだ。」
「あ~、なるほ・・!いや、あのっ・・ リュウのところとはいったい?」
「いまさら、とぼけるなっ いつもついてきておったのであろう?」
「・・・ 申し訳ございません。」
「あの者たちは、アイツの顔も見ている。きっと捜し出してくれるはずだ」
「確かに・・」
いったいどこへ行ったというのだ?
今まで私のそばにいたおまえは、どこの国の者なのだ・・?
・
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「これはユノ皇っ・・!? 先日は失礼いたしました。せっかく来てくださったのに、あいにく留守をしておりまして・・・」
「堅苦しい挨拶は抜きだ。時間がない。急ぎ、戻らねばならぬ。」
リュウとふたりで話をさせてほしい、と頼み、奥の部屋へ
テジュンは仲間たちと過ごさせておく
「先日はなんでも?異国の娘とご一緒にいらしたのだとか?貴方が珍しい、と皆が騒いでおりました」
「そうだ。その娘を捜してほしい。皆も見ているはずだ。」
「・・・ して、皇子がそれほどまでにおっしゃる娘とはいったい?」
「何者であるのか、私にもわからぬ。」
「ほう・・? それはどういう?名前は?」
「・・・・・・・・・」
そうだ
私は・・・
あやつの名前すら、知らぬ・・
「わかりました。何か訳ありのようで・・・。皆には捜すよう、伝えます。」
「そうか!そうしてもらえるか!?助かる。」
「ええ。その娘の話はまた今度、ゆっくり・・ お話願えれば、と思います。さ、行ってください。お時間がないのでしょう?」
「すまぬ、リュウ!見つかった折りには、ゆっくり話をしよう」
リュウに頭を下げると、奥の部屋を出て
テジュンをー
「・・・ 何をやっているのだ?」
「あ、皇・・じゃなかった!もう、いいんですか?」
テジュンは、仲間たちと力比べをして待っていたようで
ハハハ
なんとも微笑ましいというか・・・
「おいユノ、今日はもう帰るのかい?」
「美味しい酒があるが?」
「悪いな、急いでいるんだ。また今度ゆっくりー」
仲間たちの申し出を断っていると
後ろから出てきた頭が、皆に声をかけた
「おい、おまえたち!この間、ユノと一緒に来た娘の顔を覚えているか?」
「ん?あ~あの異国の娘さんか?」
「そうだ、その異国の娘を捜してほしいそうだ。」
「ユノのいいひとなんだろう?」
・・・ なっ///
「なんだよ~、ユノ、逃げられたのか?」
「おいおい、いいのかよ、俺たちが見つけちまって・・・」
「ほっほ~、ユノから逃げるなんて、やるな~」
・・・・//////
なんとでも言ってくれ・・・
「とにかく・・ 捜しているんだ。見つけたら教えてほしい。礼はする!」
「おうっ!まかせとけっー」
「ならみんなっ、行くぞっー」
皆が出ていくのを見送ると、テジュンを連れてリュウの家を出た
「ほんとにあの者たちに頼んで大丈夫なんでしょうか?」
宮殿へと戻る道すがら、テジュンが後ろから言ってくる
「・・・ それで?何勝何敗だったんだ?」
「はい?」
「さっきの力比べだ。少しは勝てたのか?」
「・・・・・・・・・・・」
・・・ 惨敗か?
ハハッ
「あの者たちなら、頼りになると私は思っている。まかせておこう」
「・・・ですねwww」
「なぁテジュン・・」
「はい?」
「おまえはどう思う?」
「何をですか?」
「ユリンは・・ いや、アイツは、どこへ行ったのか?なぜ私の前から消えたのか・・・」
「私には何もわかりませんが、ただひとつ言えることと言えばー」
「なんだ?」
何か気がついたことがあるのか??
テジュンの方へと振り向くと
そんな私の顔を見て
目を大きく見開き、フッと笑ってつづけた
「皇子がこんなに誰かに執着なさっているのを見るのは、初めてだなぁ~・・と」
「・・・ っ!?」
執着だとっ?
この私が!?
「何を申す!執着などしてはおらんっ!ただ、アイツが黙って私の前からいなくなったりしたからー」
「では、きちんと皇子にことわってからであれば、気にも留めなかった、と?」
「・・・ 当たり前だ」
執着などするわけがない
この私を、誰だと思っている・・・!
「それはよかったです。私もあのユリン様と過ごした時間は楽しかったとは思いますが、
所詮は偽物。本物のユリン姫が現れた以上、皇子の相手は決まっているのですから。
そこは、父と同じ意見でございます。」
「・・・ テジュン・・」
「あの者たちが見つけることが出来なかった折には、この件は諦めくださいますよう」
「・・・ そのようなこと!お前に言われずとも、わかっておる!!」
ふんっー
そんなこと・・・
わかっておるわっ・・
・
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・
その頃、宮殿ではー
婚礼の儀の準備が着々と進む中
ダリはユリン姫のお相手をしていた
「ねぇあなた・・ なんといったかしら?」
「ダリと申します」
「あー、そう!ねぇ?あなた、ユノユノ皇子って噂どおり、いいえ、噂以上・・・ 本当に素敵な方ねっ?
あんなに素敵なお方の妃になれるだなんて・・ 私はなんて幸せ者なんでしょう!!」
・・・ そうですわね
それは皆が思ってます
「でもどうしてかしら?わたくし、ユノユノ皇子に初めて会った気がしないの。」
「・・・ 以前にお会いになられたことがあるのでしたら、お忘れになることなどないかと思いますが・・・」
「そうよね!だって、あんなに素敵なんですものっ・・ だとすれば、もしや前世からご縁のあったお方なのかしら!」
「・・・・・・・・・・」
誰か・・・
この姫の相手を変わってくださいませぬか
私にはとてもー
あの方と比べるなという方が無理というもの・・・
などと思っていると
バタバタと、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえ
「ホラン国王様が到着なさいましたっ!」
ドアの外でそう叫ぶ声がした
「お父様がっ?」
途端にユリン姫の顔がパッと輝く
あ~・・ やはりおひとりで心細かったのだろう
先ほどまで、誰かに代わってほしいなどと思ったことを恥じなければ・・・
私が今日から仕えるのはこの、ユリン姫さまなのだわ
そう・・・
この方が本来のー
「ユリン姫、さぁ、いきましょう!」
私は、姫の出された手を取ると
ホラン国王が待っていらっしゃるであろう広間へと
姫を案内した