「私を妃に、なんて本気で言ったんですか?」
「本気ではない・・・と?」
皇子と私
寝所のベッドの上で戯れる
「だって・・・ 私なんて、どこの誰ともわからないのに?」
「あぁ~・・ そういえば・・・ おまえは、不法侵入者だったな・・・ ハァ・・ンッ・・」
「・・ アッ・・」
「それが・・ 今や、こんな・・・ 私を掴んで離さない・・・ ハァ・・ アッ・・・ンッー」
ーー 早く帰りなさい
「・・・・?」
突然、街で会ったあのおばあさんの言葉が過った
ーー でないと、大変なことになる
ーー 帰れるの?
ーー 帰れるに決まってる
「・・・・ 帰れる・・・」
「・・ん?」
「ねぇ、ユノッー!」
「うわっー 待てっー 今はっーーアッ・・」
ごろんっ
「聞いて!あのね?・・ 今日、街で会ったおばあさんが、私は帰れるってー」
「・・・ 帰れる? どこへ?」
「だから・・ 私、最初に言ったでしょ?この国の者ではないって
でも正直どうやってここに来たのかもわからなくて
だったら帰ることも出来ないのかと思ってたんだけど
今日会ったおばあさんは、私は帰れるって・・」
「帰りたいのか?」
「え?」
そりゃあ・・・
「どこだ?私もついて行ってやる」
「え?・・・ いやいや、それは多分無理だと思うの。だってそこはこことは世界が違うっていうか・・・」
「ではお前は、私の前から消えるとでも言うのか?」
「え?」
「私が妃にしてやると言っているのに、そんなことを言い出すのか?しかも、今!!この状況で、だ!!」
「ちょ、ちょっと何?そんな・・ それにだいたい、そんなこと私が頼んだわけじゃないでしょう?」
「はぁ?なんだとっ?私の妃が不満だとでも言うのかっ!?」
「そういう意味じゃなくってー」
にゅるんっー
あっ・・///
抜けちゃった・・・・
「もういいっ!今夜はひとりで寝るっー」
皇子が起こってベッドから降りていく
「えっ、ひとりで寝るって、だったら皇子がここで寝てー」
「おまえがそこで寝ろ」
そう言い放って、夜着を羽織ると、寝所の扉をあけて、向こうへと出て行った
「・・・ 喧嘩したいわけじゃなかったのに・・・・」
・
・
・
・
・
コンコン・・・
「ユリン・・ いつまで寝ている気だ?もうとっくに夜は明けているぞ?」
扉の向こう、なんの返事もない
私はこの宮殿の皇子だ、開けるぞ?
ガチャ
「まだ怒っているのか?いい加減にー・・・ ユリン?」
そこに・・・
寝所に、ユリンの姿はなかった
「ダリッ!ダリッ!!」
私は急いでダリを呼ぶ
「皇子、どうかなさいましたか?」
ダリがすぐに入ってきた
「ユリンは?ユリンを見なかったか?」
「・・・ ユリンさまですか?今朝はまだ一度もお見掛けしておりませんが・・・」
ダリも知らぬ、と?
どこへ行った?
そもそも、寝所から直接外へは出られぬはずだ
私の部屋を通って行かねば・・・
私の気づかぬうちに出て行ったというのか?
そんなこと・・・・
あるはずがない・・!!
「テジュンッ!!」
「ハッー、ここに!」
部屋の外には、テジュンだって居たはずだ
「ユリンがいない・・」
「は?いない、って・・ 昨夜もふたりでー ゴニョゴニョ・・/////」
「ユリンがいなくなったんだ!」
「いなくなった、て・・・どうせ庭にでもいるんじゃないんですか?」
「それならそれでいい。とにかく、今すぐにユリンを見つけて私の前に連れてくるのだ!!」
「ハッー」
どうせ庭にいる?
そうだな
テジュンの言う通りだ・・
お前はきっと庭にいる
いつも庭にいたんだから
なのに、なぜだ
嫌な胸騒ぎがしてならない・・・・
「おーい、ボンソン!」
・・だったな?確か・・
「あ、これはテジュン様!おはようございます」
「おぅ、おはよう。今朝はユリン様を見ていないか?」
「はい、今朝はまだ、ユリン様は見ておりません。こちらにはいらっしゃってないかと思いますが・・・」
「・・・・ 来てない?」
「はい、ユリン様は、こちらにいらっしゃる時には、お決まりの道順というものがございまして・・・
今朝はその、通られた印がございませんので」
「っそう・・なのか?」
「ユリン様に何かございましたかっ!?」
「うあっ、ボンソンっ!!近いっ!」
「あ、申し訳ございませんっー」
そうか・・・
来てないのか・・・・
こりゃ、本格的にいなくなった・・?
まさか誰かに?
いや、そんな侵入者がいれば俺が気づかぬはずがないって!
ってことは、なんだ?
まだ宮殿にいたんじゃないか・・・ ハハハ
がしかし、皇子のあの慌てようは今までになかったな
帰ったらあいつに話して聞かせてやろう
・
・
・
・
「皇子っ!ユノ皇子っー 大変でございますっ!」
宮殿を勢いよく駆けてくるこの声は・・
「ミヌか?ちょうどよかった!ミヌ、お前にもー」
「たった今、ユリン姫が見つかったとの報告を受けました!」
「・・・ 今、なんと?」
ユリンが?
いや、姫、と言ったか?
頭の中が混乱している
「はい、たった今、部下の者から、行方知れずだったユリン姫が見つかった、という報告を受けました!
ご無事でございます!!」
「そ・・ うか、それはよかった・・」
行方知れずだった姫が見つかった、と・・?
「今から私も、お迎えに上がりたいとー」
「待て、ミヌ」
「はい?」
・・ 私は何を言いかけた?
「いや、いい。すぐに姫をお迎えに上がってくれ」
「ハッ!」
大丈夫、大丈夫だ
きっとすぐにテジュンがユリンを連れて帰ってくるはずだ
ふたり仲良さそうにー
まったく、人の気も知らないでー
・・・ ん?
人の気も知らないで、とは?
いやいや、それより
本物の姫が見つかったんだ
これでホラン国王を怒らせなくて済む
しかし、妃はどうする?
今更、妃には要らないと言えるか?
はぁ~
本物の姫が見つかるというのは想定外だった・・・
「皇子!ユリン姫が見つかったとのこと! いやいや、よかったでございますな」
「ドンハ!・・ そうだ、それでー」
さすが地獄耳
でもいい、ドンハに相談すれば・・
「これで、本物のユリン姫と婚礼の儀を執り行えばまさに、なんの問題もなかったことに。
いや~、万々歳ですなぁ~ すべてが丸く収まりました。ハハハハハ」
「・・・・・・」
本物のユリン姫と婚礼の儀を・・
そうか・・・・
そうだな・・・
そっちが本来の道理ではないか
私はいったい何をー
「・・・ 皇子?」
何を考えていたというのだ・・・?
「ユノ皇子!戻りました・・」
この声はっー
私は勢いよく振り向いた
「テジュン!やっぱり庭にー」
・・・・・・・・ ??
なぜ、おまえひとりなのだ?
「え・・?もしかして・・・ まだ?」
あいつ、宮殿にいなかったのですか・・・?
皇子が俺を見て固まっていらっしゃる・・・
ダリを見ると、首を横に振っている・・・
「おう、テジュン!喜べ!先ほど、ミヌが申しておった。行方知れずだったユリン姫が見つかった、と」
「は?」
俺の姿を発見してやってきた父が嬉しそうに笑っている
行方知れずだったユリン姫が見つかった??
「ささ、これで安心して、皇子の婚礼の儀の準備をすすめさせていただくことができるな。
さあダリ、準備を手伝っておくれ」
「・・・・・・・・・」
「ダリや?何をしておる!」
「・・ はい」
ダリは、ひとつお辞儀をすると、皇子の部屋を出て行った
おいおい、ユリンさま?
かくれんぼはもうおしまいにしてやってくれ
俺はこんな皇子を
いまだかつて見たことがない