「ん~~~・・・」
うつぶせになったまま、手を伸ばす
「・・・ ?」
その手を縦に横にと激しく動かすも
絡まるのはシーツばかりで
「・・・ ユリン?」
声にしてその名を呼んでみる
「ユリン様でしたら、テジュン様と庭園の池の方へ行かれました」
・・・ っ!?
ガバッー
「ダリっ!?」
起き上がった私を見るや
ダリは身体を反転させた
「ただいまお着替えをお持ちいたします」
夜着を羽織り、下がろうとするダリを追いかける
「なぜ起こさぬ?テジュンは私に用があって来たのであろう?」
「・・・ ユリン様が起こさぬように、とおっしゃったので・・・」
「だからと言って、何故テジュンと出掛けるのだ!!」
ピタッとダリの足がとまり
くるりと振り返ると
「私に怒らないでくださいっ!」
そういってキッと睨みつけてきた
「・・・ ダリ?」
「この宮殿で皇子にお仕えするようになって10年ですが
あのように深くお眠りになっていらっしゃるのを見たのは
初めてでございました。」
・・・ 深く・・ 眠っていた?
この・・・ 私が・・?
・
・
・
・
・
「おはよー、ボンソナ~~!すっごい綺麗!!さすが、池の水を抜いてまで掃除しただけあるわねっ!」
「ユリンさまっ? おはようございます!」
水が澄んで、底まで見える
「でも・・・ 池がこんなに綺麗すぎると反対に風情がないようにも思えるかも・・。」
「そうか?俺にはよくわからないが・・・」
「年に一度って言ってたけど・・ そこまでするのは大変なんじゃないかしら?」
「それが仕事なのだから、よいのでは?」
「でも大変よ?ねぇ、テジュン?試しに来年はやめてみるっていうのはどうかな?」
「・・・・・・・」
「ねぇボンソン、みんな、お休みとかってあるの?」
池の脇を通る道の上から声をかける
「お休みなんてそんな・・ 特にありませんよ。みな、動けない時には交代で休む、って程度で・・・」
「なにそれ、過剰労働だわ。そうだ!勤務表を作って、皆、平等にお休みをとれるようにしましょう?」
「きん・・・?」
私の提案にボンソンは首を傾げる
声も聞こえづらかった?
「あ、わかりにくかった?あのね・・」
池の方まで近寄っていく
「おい、ユリン!そんなに身を乗り出すと危ないっー」
ギャッ、落ちるっー
「・・・・・・」
・・・ なかった・・・?
「ふぅ~・・・ 冷や汗をかいた・・」
耳元でテジュンの声が聞こえて・・
お腹がしっかりとホールドされて
「ぎゃっー」
ドンッー
「・・・ ってぇ~~・・ おまえ、せっかく助けてやったというのに・・」
テジュンを突き飛ばしてしまった
反射的に・・・
「ごめんっ、びっくりして・・ あ、ありがとう!」
私は転んだテジュンに手を伸ばすと
テジュンはその手をとって起き上がった
ヒョイッーて
さすが!
軽い身のこなし・・・
「ユリンさまっ!大丈夫ですかっ?」
下からボンソンが駆け上がってきた
「ごめんごめん、心配かけちゃって・・ 私なら全然大丈夫!
この、ユノ皇子の護衛、テジュンがすんっばらしい働きで守ってくれたから!」
「テジュン・・ さま。 それはよかったですっ!」
「ほんとごめんね?ありがとう!心配してくれて・・。あ、そうだ!せっかくだから、さっき言ってたことはまた皇子に相談してからお話するわね?」
私がそう言うと、ボンソンは笑って肯いた
「では、仕事に戻ります。」
「うん、頑張ってね!いつもありがとう!」
ばいば~い、とボンソンを見送る
「・・・ 初めてだ。」
「え?」
隣でボソッと呟いたテジュンの言葉を拾った
「使用人に名前を呼ばれたのは・・・。」
「えー?そうなの?呼ぶことはあっても?」
「いや、呼ぶこともない。使用人の名など・・。彼がボンソンと言うのも今、初めて知った。」
「じゃあこれから呼んだらいいんじゃない?せっかくある名前なんだもの^^」
そう・・・
私にも本当の名前がある
ここにきて、一度も呼ばれたこともなければ、その名を尋ねられたこともない
「ユリナっ!!」
ドキッー
その声を聞いて、私よりも先に振り返ったのは、もちろん・・
「皇子っ!」
「テジュン・・ おまえ、私に用があったのではないのか?」
「いやいや、だってそれは、皇子があまりにもふかぁ~く眠っていらっしゃったのでー」
「起こせばよいであろう!」
「・・・ 声はかけましたよ?」
「は?」
「皇子~、って・・ でもまぁ~ったく起きてくださらないから・・
ねぇ、ユリン殿!いったいどんな魔法をお使いになったんです?皇子に」
・・え?
魔法?
テジュンったら、何をニヤニヤ笑っているの?
「魔法?って・・・」
「ユリンっ!こんなやつに答えずともよいっ!さあっ、宮殿に戻るぞ」
「あ、私はもう少しお庭を歩いて見て回るから、気にしないでお二人で政務をなさってください」
皇子が呼びにきたのは、テジュンよね?
そう思って気を利かせて答えたのに
皇子は驚いたような顔をして
それから今度は少し不安そうな顔になって・・
「・・・・ ひとりで大丈夫か?」
!?
そんなことを私に聞いてくるもんだから、こっちがびっくりしちゃうじゃないっ!
「大丈夫よっ?何を言って・・ 今までだっていつもひとりで回ってたんだから^^」
応えに詰まっちゃうでしょう?
「そうか?・・・ では、戻るぞ」
「うん・・」
ひゃあ~~~/////
私ったら・・
何、調子に乗って、バイバイって手を振って見せてるのよっ/////
こっぱずかしぃーーーー!!!
慌ててその手を引っ込める
なんだろう?
なんか・・・
変??