「ん~ いい匂いがしてきた!」

 

 

フライパンを片手にしている僕の目の前

キッチンカウンターに手を置き

あの人は嬉々とした顔でそういった

 

 

「・・・ あまり期待しないでくださいよ。適当ですから」

 

 

ボクのお腹が鳴ったことで

なぜかこうしてキッチンに立っている

 

冷蔵庫にあった食材を適当に調理しているだけなのだが

 

料理、できるんだ?と

驚いた彼の鼻を少しだけあかしたくなったのも事実

 

出来上がった名もない料理を

それこそ適当な食器に盛り付けると

カウンターにトンっと置く

 

するとそれを、あの人がテーブルへと運んでいく

 

 

「飲み物は・・・ どうしますか?」

 

 

彼の背中に問う

 

冷蔵庫に冷えたビールがあったのは確認済みだ

 

 

「俺は水でいいけど、チャンミンはビール、飲んでいいよ?」

 

「え・・」

 

 

向こうから飛んできた声に驚いた

 

 

どうして・・・

 

 

 

「さっき、見てたでしょ?」

 

 

冷蔵庫の方を指さしてる

 

 

「/////////」

 

 

 

うわっ

 

恥ずかしいぃーー

見られてたんだ??

 

ってか、そんなに物欲しそうに見てたの?ボク・・

 

 

「じゃあ・・ いただきます」

 

 

 

ミネラルウォーターとコップ

そして一本の缶ビールを手にし

ボクもテーブルについた

 

 

 

あらためて考えてみると

家族以外の人と、こんなふうに食卓を囲むのは

いつぶりだろうか?

 

彼女いない歴・・・・

 

 

・・・ やめておこう

そんなことを考えるのは

 

 

 

「んっ・・ おいしい・・ おいしいよっ、これ!!チャンミンっ!」

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

そんなにあからさまに喜ばれると

めちゃくちゃ照れます

 

 

「・・ それはよかったです」

 

 

とだけ言うのがやっとだ

 

 

「ありがとう。まさか、君の手料理が食べれるなんて、思ってもみなかったよ。

仕事を頑張ったご褒美かな~?もらった気分だ」

 

 

はぁっ?

 

 

「そっ、そんなっ、こんなんでご褒美だとかっ・・ やめてくださいっ!!」

 

 

大袈裟すぎますよっ

 

 

「そんなこと言ったって、もうこれ以上は作れませんよ」

 

冷蔵庫の中にはほとんど食材が入ってなかったし・・・

 

 

「え~?そうなの?・・・ 残念。また作って欲しかったのに。」

 

 

「だったら食材を選ぶところからやらないとー」

 

 

「じゃあ、今度、一緒に買いに行こう!」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

あれ?

 

なんか、話の流れが変な方向へ・・・

 

 

「って、どうしてボクが食事を作らないといけないんですかっ!

お手伝いさんとかいないんですか?」

 

 

お金持ちなんでしょう?

 

こんな、別荘とかあるくらいなんだし

普通はこういうところにお手伝いさんのひとりやふたり・・・

 

 

 

「・・・・・ 来てもらったほうがいい?」

 

 

 

「え・・?」

 

 

 

 

綺麗な瞳でじっと見つめられた

 

・・・・ 来てもらったほうがいい?って

 

どういう・・?

 

 

 

「ごちそうさま。片づけは俺がやっておくから

チャンミンはシャワーでも浴びてきたら?」

 

 

ガタガタッと、彼が立ち上がった拍子に椅子が鳴った

 

 

「バスルーム、わかるよね?トイレの横。あ、着替えー」

 

「大丈夫です。これ、また着るんで。」

 

「・・・ そう?わかった。じゃあ、あるものは適当に使っていいから」

 

「・・・ お借りします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

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(またまた登場。たっきぃさまのイラストをお借りしました)

 

 

ボクはいったい、何をしているんだろうか?

 

ヌナのお見合い相手の別荘で

夜中まで時間を忘れ、本を読みふけり

自分でご飯を作ってその相手と食べ

泊まることになり、シャワーなんて借りてしまっている

 

 

男同士だからって

友達の家に泊まるというのとは

なんか違うような・・・

 

 

僕は数人の親友の顔を思い浮かべてみる

 

 

「・・・ やっぱり、何か違う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにが違うの?」

 

 

 

ビクッ

 

 

 

いつの間にか、彼がそこに立っていた

 

 

「あっ、いやあの・・ 独り言です」

 

 

うわぁ~~

気づかなかった・・・

 

 

「あのっ、シャワー、ありがとうございました。気持ちよかったです。」

 

 

「・・・ そう。よかった。」

 

 

そういえばボク、何も考えずにシャワー使わせてもらったけど

普通は、目上の人からじゃないか???

 

 

「あっ!お先にすみませんでしたっ・・ あの、次、どうぞ」

 

 

「ん。・・・・ ところで寝室なんだけど・・

2つあるから、どっちでも好きな方使ってくれていいから。」

 

「えっ?・・でも、その・・ あなたは・・?」

 

 

2つってことは、どっちかは、この人が使うはずで

使い慣れてる方があるんじゃ・・?

 

 

「ねぇ?」

 

 

・・・ ねぇ?、って?

 

 

「その・・ 俺は君のこと、チャンミンって呼ばせてもらってるけど・・・

そろそろ君も、俺のことを名前で呼んでくれてもいいんじゃないかな?」

 

 

「・・・・ はい?」

 

 

 

名前・・・で?

 

 

 

「えと・・ 名前で、って言われても・・」

 

 

 

僕が戸惑っているのをわかってるのか

彼はにこっと笑うと

 

 

「ユノ、・・・ 呼んで?」

 

 

優しい響きの中にちょっとだけ厳しい口調が混ざってたような・・・

 

 

 

「・・・ ユノ・・・さん?」

 

 

僕がそういうと、ぶぅ~っと口をとがらせ

 

 

「なんで、さん、なんてつけるの?」

 

 

なんてまるで拗ねた子供のように言い放った

 

なに?なに?この人・・・

 

 

「えええっ、だってそんなっ、目上の人に当たり前じゃないですかっ!!」

 

「だめ。今度、さん、なんてつけたら罰ゲームだから」

 

「罰ゲーム~?」

 

 

なんっだよ、それっ???

 

 

「いいね?じゃあ、シャワーしてくる」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

行ってしまった・・・・

 

 

 

 

 

あ・・・

 

 

寝室、どっち使ってるんです?って聞きそびれた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく・・・

 

 

 

 

なかなか夜が明けない・・・(笑)