「・・ どうしたの? みんなして、黙っちゃって・・」

 

 

電話を終えて席に戻ると

さっき自分が席を立った時とは雰囲気がかわっているのを感じた

 

堤と成瀬は黙っていて

森崎はもくもくと料理を口に運んでは食べている

 

 

「このひとたち、私に同情してくれてるの」

 

「・・・ 同情?・・・ 森崎に?」

 

 

どういうことだ?

さっきまで、成瀬の話をしていたんじゃなかったか?

同情するなら、アパートを引っ越すことになった成瀬に、ではなく?

 

 

「私、ちょっとトイレ~」

 

 

森崎が席を立った

 

 

自分が席を外したのはほんの少しの間だけかと思っていたが

口にしたビールは既に生ぬるく

オレは一気に流し込むと、おかわりを頼んだ

 

 

「で? 同情してるって、なんで?」

 

 

いまだ、何も語らない斜め前の堤を最初に見て

次に隣の成瀬を覗き込んだ

 

 

「森崎がさ、・・・ 別れたんだと。」

 

 

森崎が席を離れたのを確認すると、堤が口を開いた

 

 

「・・・ あー・・」

 

 

そういうことか

 

でも、そういう話はつきあっていれば、普通にあることだと思うけど?

何もそんな押し黙るほどのことでは・・

 

 

「それがちょっと、壮絶・・でさ?」

 

 

「・・ そーぜつ?」

 

 

オレが首を傾げると

ガタガタッと音がして、隣で成瀬が椅子を動かし立ち上がった

 

 

「私もちょっと、トイレ、行ってくる」

 

 

・・・ は?

 

 

成瀬の後ろ姿を見送って

前を向くと、堤と目が合った

 

 

「森崎の男って、結婚してたんだと。」

 

 

「はぁ?結婚してたって、それじゃあ森崎はー」

 

 

不倫?という言葉をかろうじて飲みこんだ

 

 

「でー、そこに突然、奥さんが帰ってきた、と。」

 

 

「帰ってきた?・・え?森崎と暮らしてる部屋に奥さんが来たのっ?」

 

乗り込まれたのかっ?

それって俗に言う、修羅場ってやつ・・

 

 

「それがなんと、奥さんと別居中の家に、森崎を連れ込んでいた、ってことだったらしい」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一瞬言葉を失うって、このことか・・!?

 

 

「それって森崎はそのこと・・・」

 

 

堤は首を横に振ると

 

「・・・ 知らなかったらしい」

 

 

「最低だな、そいつ・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ 久しぶりの実家暮らしってのも、なかなかいいものだよ?」

 

 

トイレの洗面台で、真っ赤になった目で、メイク直しをしながら

鏡越しに私を見つめて陽菜が言った

 

とりあえず、来てみたものの、何て声をかけていいのかわからない

 

 

「でも今夜はー・・ 美貴の部屋、泊めてくれる?」

 

 

「え?うちっ?いいけど、何もないよ?」

 

 

突然の申し出に、断ることはないけど、それこそ引っ越したばかりの

簡素な部屋を思い浮かべて戸惑いが隠せない

 

 

「じゃあ、チャンミンに頼もうかな?」

 

「え・・?」

 

 

ドクンッ

 

 

 

「美貴のことも泊めてくれたんだからー・・ 私も泊めてくれるよね?」

 

「いやいや、別にダメって言ってないから、私!」

 

 

あれ?

あれれれれ?

 

 

「布団ならあるし!そうだ、寝袋もあるから私、それで寝てもいいしっ!」

 

「えー?なんでぇ?美貴の部屋なのに、そんなの悪いよ~」

 

「大丈夫っ!ぜんっぜん悪くないから!」

 

 

なになに?

私、なんか焦ってる?

 

 

「じゃあ、お世話になっちゃおっかな?」

 

 

陽菜が可愛く笑顔を向けてくる

 

 

「うんうんうん、なっちゃって?」

 

 

なんだろう?

お酒、飲みすぎたのかな・・?

 

 

陽菜とふたり、トイレから自分たちのテーブルへと並んで歩きながら

私は考えを巡らせていた

 

 

さっき・・・

 

陽菜がチャンミンのところに泊めてもらおうかな

って言ったとき

なんかわかんないけど、嫌な感じがして・・・

 

ん?そういうのってまるでチャンミンのこと好きみたいじゃない?

 

やだやだやだ、ないないない

私、そういうのはないって思ってたわけでー

 

 

そうそう

じゃないと、泊めてもらうとか言えないからね?

 

好きな男の部屋に泊まるなんて

めちゃくちゃハードル高い話だからね?

 

むりむりむりむり~~~

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

テーブル席まで戻ってくると

こっちを見上げたチャンミンと目が合った

 

 

その瞬間

チャンミンがー

 

まるで、今までとは違った人に見えちゃって

 

 

 

ボッ!!

 

 

 

顔に火がついた

 

 

 

 

「・・・ どうした? もう酔った?顔・・・ 赤いけど?」

 

 

 

そんなチャンミンの質問に

う、うん、と曖昧に返事をして

私は隣の席に座った