「・・・ りかさんっ!!店長っ!?」

 

 

「えっ?あ、美玖ちゃん、ごめん・・ なに?」

 

 

「もうーーっ、何度呼んだと思ってるんです?

今日のりかさん、変ですよ?」

 

 

「・・・ ごめん、ごめん、で?」

 

「藤宮さん、いらっしゃってます、りかさんを呼んで、って・・

あの人、りかさんじゃないと絶対ダメなんですよね」

 

「えっ?藤宮さんがっ?」

 

 

急がなきゃ!

うちの店では大口顧客さま!!

 

 

「わかった、すぐ行く」

 

 

 

奥で、取引を断られたメーカーさんの商品の在庫チェックをしていた私は

美玖ちゃんに呼ばれて店内へと走る

 

・・・ ほんとは在庫チェックすらできなかったんだけどね

 

 

 

「いらっしゃいませ、藤宮さま!今日はどんなものをお探しでしょうか?」

 

 

にっこり営業スマイルで

藤宮さんの前に立つ

 

 

「もー、りかさんったら!今日はいないのかと思っちゃった!」

 

 

「申し訳ありませんでした、ちょっと奥の方に居たもので・・」

 

 

藤宮さんは、いつもとてもおしゃれで

着る物にはお金をかけていらっしゃる上品なお客様だ

 

年は、私とそう変わらないように思うけど

とても高価なものと、そうでないものを品よくうまくコーディネイトして

着こなしていらっしゃる

きっと、裕福な方ではないかと推測

 

 

「そうね、今日は~・・ ちょっと気分転換に寄ってみたの

何かおすすめとか、ある?」

 

「おすすめ、ですか・・?」

 

 

どうしよう

実は、藤宮さまのお気に入りの服は

そのほとんどが、今回取引を断られたメーカー3社の物が多い

 

 

「さっきチラッと見てたんだけど~・・

何だか今日は、心にときめくものがないのよね」

 

 

あ~・・ やはり・・!

 

 

「藤宮さま、申し訳ありません!実は・・ 藤宮さまお気に入りのメーカーの商品が

このたび、入荷できないことになりまして・・・」

 

 

「ええー?なに?それ、どういうことなのっ?」

 

 

「いつもとは雰囲気が違いますが、その中で藤宮さまにお似合いになるものをー」

 

「まぁっ!雰囲気が変わるっていうのはいいかもしれないわね?

私に似合いそうなのって、あるの?りかさんはどれが似合うと思って?

私、貴女に見立ててもらうのが好きで来てるのよ?」

 

「ありがとうございます、では、こちらに・・」

 

「でも、さっきの話、どういうことなのか気になるわ?」

 

 

 

どうしよう・・

そんなにつっこまれても

お客様だし・・・

 

変に誤魔化すのは嫌だから

ここはもう、あっけらかんとー

 

 

「お取引できないことになっちゃったんです

それで、どこか別の新しい心ときめく服を探しているところでー」

 

「そんなのひどいわっ?ママに言って、とっちめてさしあげる!!」

 

「・・・・・ はい?」

 

 

今、なんと?

ママに言って、とっちめて・・?

 

 

藤宮さんは、携帯を取り出すと

 

「もしもし?私だけどー・・」

 

 

何やらおもむろに話し出した

 

 

しかも、取引を断られたメーカー3社の名前をあげている

 

なになに?

どういうこと?

 

 

「事情はよくわからないけど、これできっと大丈夫」

 

「あの、藤宮さま?」

 

 

いったい、何が起きているのか・・?

電話を終えた藤宮さまが、にこっと微笑まれた

 

 

「私のママの店にも、あのメーカーの服がおいてあるから

何とかしてあげることができると思うの」

 

「あの・・ お母様のお店・・ですか?そちらにあるものを

どうしてうちでお買い上げに??」

 

 

ママの店にも置いてあるメーカーの服を

わざわざ別の店で買う意味がわからない

 

 

「もうやだ~ りかさん、聞いてなかったの?

私はここで、りかさんにコーディネイトしてもらいたくて来てるの

それに、ママの店でなんて、何を着ても似合うって言われるだけだし

売上なんてどうでもいいもの」

 

 

「・・・・・ そ、れは・・ ありがとうございます」

 

 

確かにオーナーのお嬢様になら、何を着ても似合うと言ってしまうのだろうけど・・

それにしてもおかしくない?

 

 

「じゃあ、雰囲気の違う私におすすめという服を、教えてちょうだい?」

 

 

まぁ、いいか

これでわかった

藤宮さまは、私の想像を超えるお金持ちだったということだ

お金持ちの服を買う感覚と言うのは私にはわからない

 

私にできることはただ

お客様に似合う服をおすすめすること

 

それだけだ

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、よかったですね、りかさん!

今日も藤宮様、高額お買い上げ~~」

 

 

藤宮様をお見送りすると、美玖ちゃんが駆け寄ってきた

 

 

「東店のトップ顧客様ですよね」

 

「うん、ほんとに・・ ありがたい話」

 

「それにしても、えらく気に入られてますよね~ りかさん」

 

「そう?」

 

「そうですよ~ 私が代わりに応対いたします、って言ったんですけど

かたくなにりかさんを呼んでくれ、って・・・

確か、いらっしゃるようになったのって、ここ1ヶ月・・のうちですよね?

何がそんなに気に入られたんでしょうね~

やっぱり最初の応対は肝心だってことですよね」

 

「そうね」

 

 

ほんとに、いったい何をそんなに気に入っていただけたのか

私自身、わからない・・・

 

 

 

「キャー!りかさん、りかさんっ!!」

 

「今度はなに?」

 

 

 

美玖ちゃんの声に驚いて振り返ると

 

そこには、イケメン執事が立っていた

 

 

「・・・ 真崎?」

 

 

 

ドキッ

 

 

なんとなく・・・ うしろめたい気がしてしまう

 

と同時に、昨夜のことが思い出されて顔がぶわっと熱くなった

 

 

 

「ご主人様に言われて来たんだが・・・」

 

 

 

ビクッ

 

 

「えっ?/// ユノが・・?な・・んて?」

 

なになになに???

 

 

「ほら、なんか言ってただろ?取引先がどうのこうのって・・

一応、あたってみるように、って言われたから

教えてもらおうと思って」

 

 

真崎のいかにも気に喰わなそうな顔が

嫌々やってきてるのを窺わせる

 

でもそっか・・・

 

ユノ、気にかけてくれたんだ・・・

 

 

「おい、何をやってるんだ?早く教えろ!」

 

「あ、ごめん。でもいいの。解決しそうな感じだし

たとえダメでも、別のものを探して新しい風を取り入れようかな?って」

 

「なんだ?昨日は死にそうな顔してたくせに・・・」

 

「え?そんな顔・・ してた?私・・」

 

「顔だけじゃない、実際倒れただろう?

何だよ、人が心配してきてみれば、その変わり身の早さ

もうこれから心配なんかしないからな?」

 

「もしかして真崎・・ 心配してくれたの?」

 

 

ご主人様じゃなくて?

真崎が心配してきてくれたんじゃ・・?

 

 

「は?何をいったい・・」

 

「もう~~ 真崎ったら~」

 

うりうりうりっ

 

「ご主人様を放ってきて、大丈夫だったの~?」

 

「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだった」

 

 

あ、話、かえられた・・

 

 

「何?」

 

「昨夜は・・・ ご主人様は大丈夫だったか?」

 

「え・・」

 

 

昨夜って・・・/////

 

 

「チャンミン様にお会いになったあとは、いつも・・・

その・・ 荒れられるが・・

昨夜はもう遅かったし、オレも帰ったから

どこにもお出かけになれなかっただろう?」

 

「・・・・・・」

 

 

いつも荒れるの・・?

もしかして・・

真崎がいたら、出かけてた・・?

外に・・?

 

 

「今日は朝から眠たそうで・・・

きっと、昨夜は寝不足だったんだろうと思われるのだが・・

おまえ、何か知らないか?」

 

 

「ええっ!?」

 

 

 

知らないか?って・・・

 

朝から眠たそう?

寝不足・・・

 

 

 

「ゆ・・ ユノはなんて?」

 

「そんなこと、聞けるわけないだろっ!!空気だよ、空気!!

オレは空気を読んで、だな~

あ~・・ おまえにまだ、ご主人様の空気なんて

読めるわけないか、聞いたオレがバカだった」

 

「はぁ~?」

 

「もういい、そろそろご主人様をお迎えに行く時間だからな。

じゃあ、・・・ お前のことは、心配ご無用とお伝えしておこう」

 

 

言うだけ言って・・・

ちくしょー

真崎め

 

ご主人様の空気が読めない?

はん?

 

言っとくけど、私はねーーーー!!!

 

 

・・・・ あれは・・・ 荒れてたの?

 

 

よね・・・

 

 

私も、慰めだって・・・

 

わかってるよ

 

 

でも・・・

 

 

 

 

 

「りかさぁ~~ん!!」

 

 

今日は美玖ちゃんによく呼ばれる日だわ

 

 

「どうしたの?あんまり大きな声で店内を歩かない!」

 

 

美玖ちゃんは、私のところまでやってくると

小声で囁いた

 

「今、電話があって、例のメーカー3社

これからも取引をしてくれるそうですっー」

 

 

「えっ?それほんとにっ?」

 

 

「よかったですよね~~」

 

小さく手に手をとって小躍り

ぴょんぴょんぴょんっ

 

 

すごい・・

これってやっぱり、藤宮さまのお力なの?

 

藤宮さまっていったい・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? あいつは、心配しなくてもいいと言ってたのか?」

 

 

「ええ、そうなんですよ。なんでももう、解決しそうだとか」

 

 

「そうか・・ じゃあ、特に心配するまでもなかったな」

 

 

「でもご主人様、さきほど、意外な人物を見かけまして

ちょっと気になったというか・・・」

 

 

「ん?それは、あの店でか? 誰だ?」

 

 

「はい、帰り際に出て行かれるのをチラッとだったので

確信は持てませんが、藤宮グループのお嬢様だったような・・・」

 

 

「・・・ 藤宮グループの?」

 

 

67704817.jpeg

 

確かに・・・・

 

それが本当だとしたら

 

あのようなところで見かける顔じゃあないな

 

 

・・・ なんて言ったら、怒られるかな

 

 

「・・・ ふっー 」

 

 

 

「・・・ ご主人様?」

 

 

 

「あ、あ~、悪い。恭弥、今夜は何時に帰れそうだ?

ちょっと寄ってほしいところがあるんだが」

 

 

「予定通りであれば午後7時には。

どこでしょう?もちろん、どこへでも参りますが?」

 

 

 

 

 

 

 

つづく・・・

 

(素敵な画像、お借りしました。もう、このユノさん、なんなの?

ってくらい素敵ですよね

どこからどこまでも、指先まですべてのパーツが完璧な男

惚れるな、ってのは罪というものですよ)