仕事帰り


いつもより多めの食材とビールを買って両手はパンパンになりながら


やっと辿り着いたアパートの下で



突然、横から現れた人影に驚いて一歩退くと


その人物は私のよく知る男だった





「ごめんっ!ほんっとうにごめんっ!!もう二度としないから許してください!!」





両手を合わせて私の目の前で頭を下げる男


ついこの間まで彼氏で


会社の後輩と浮気した男





「・・・ 彼女とやっていくんじゃなかったの?」




「・・・・・・・・・」




あ~、そう


そんなふうに思っていたのは貴方だけで


彼女の方はそこまで思ってなかったわけね




ーー なんとなく?流れで?やっちゃいました~ てへ♪




だったもんね





「悪かった、魔が差したんだ・・・許してほしい」



「・・・ 魔が差した・・」




魔が差す



悪魔が心に入り込んだかのように誤った行動や判断をしてしまう



通常は善人だが、そのときだけ、悪魔にささやかれ悪人の行動に出てしまう





「なんだよ・・ 一度だけだろっ?」





一度だけ・・・



そうよね、貴方のは一度だけで、しかも、魔が差した、って言ってる



つまりそれは、悪魔に囁かれての、誤った行動や判断だった、と?




私のはー





「・・・ ごめんなさい」




やっぱりこの人ともダメだった・・・




「はぁ? 何がごめんなさい、だよ!一度だけ他の女と寝たのがそんなに悪いことかよっ!」




「そうじゃなー」




「だっておまえのせいだろっ?おまえがっ、なかなかさせてくれねーしっ!!

たまにさせてくれたとしても全然、感じてねーだろっ、おまえっ!

そんなんじゃオレも満足できるわけがー」




ボコッ!!



「・・あうっ!!」




「・・・ なつみ・・っ!?」




彼の背後から、その開いた股を蹴り上げたのは、他ならぬ私の妹、中学生のなつみだった





「・・・・ なんだ?おまえの・・妹か?ずいぶん年の離れたー」



「とっとと消えろっ!!!このタコっ!!」




そう言ってなつみが構える様子に、只者ではないと感じたのか


はたまた、単純にもう一度さっきの激痛を味わいたくないと思ったのか




「いいよ、別れてやるよ!・・・ じゃあなっ」




まるで子供の頃テレビで見た時代劇に出てくる悪者のように、捨て台詞を吐いて踵を返すと立ち去って行った






「・・ ありがと、なつみ」




どこまで聞こえてたんだろう?


そう思いながらも、苦笑いを妹に向けると



すっと私の手荷物を片方ひきとり、私の前を歩き出した




「重かったでしょ?チャンミンの分も買うと4人分どころか、下手すると5人分になっちゃうもんねー。あ、ご丁寧にビールまで買ってある。当然よね?迷惑かけてるんだからー」




「・・・・・・・」





なつみ?


私は時々、貴女がわからなくなるよ


ほんとは・・・


全部全部わかってるんじゃないかって



いやいや、それはないよね?


だって貴女はまだ中学生なんだもん・・・




















「ねぇチャンミン、今皆で話してたんだけど、帰りにどこか、食べに行かない?」





「あ~、ごめん。今日はこのまま帰る・・・」


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ーー 今夜、楽しみにしてます



そう言ったのは僕だ






「えー、つきあい悪い~ チャンミン行かないとつまんない!」




いきなり腕を絡め取られた




「は?」




ゆっくりともう片方の手で、腕をふりほどこうとすると、余計しっかり絡められた



ぐいっー



「・・えっー」



突然腕を引っ張られ、体勢を崩した僕の耳元に




「じゃあー・・ みんなでじゃなく、ふたりっきりで」




息をふきかけ彼女が囁いた




「・・・ どう?」




首を傾げ、綺麗な瞳で見上げてくる




「・・・ こんな美人にそんなこと言われて、断れる男がいるかな?」




「やったー!!」




パッと彼女が手を放し、そのまま、顔の前で可愛らしく手をたたく


パチパチパチ・・・




「僕のほかに」




「え?」




「お先に失礼しま~~~す」




僕は足早に走り去る



背中に彼女の、僕を罵るセリフがいくら聞こえようとも



すれ違う同僚に挨拶を交わしながら












今夜・・・





僕はヌナに提案してみようかと思っている






ねぇ、ヌナ・・・




ヌナは何て言うかな









つづく・・・・



(画像、お借りしました。ありがとうございます)