「またくるよ」

「ありがとうございましたぁ~~」

 

カランカランカラ~ン

 

カラカラ~ン・・

 

「いらっしゃいませ~」

 

 

送りだした常連のお客様と入れ違いに入ってきたのは

馴染みのない男のお客様だった

 

その人は、ゆっくり店内を見渡すと

一番奥の窓際のテーブル席に座った

背・・・ 高いな~

 

 

「どうぞ~」

 

 

お水とおしぼり、メニューを持っていくと

 

 

「マスター、いる?」

 

 

そのお客様は、サングラス越しに私にそう聞いてきた

 

 

「今・・ ちょっと買い出しに出てます」

 

「ふぅ~ん・・・」

 

 

マスター・・ 父は本当に今、出かけていた

ただし、行き先は買い出しだとは言ってなく

私もどこに行くんだろう?とは思ったものの

まぁ・・ 父はたまにこうして出かけることがあったから

いつものことだと安易に考えていた

 

 

「・・・・ ってことは、今、この店には、君ひとりなの?」

 

 

ドキッ

 

 

 

言われて初めて気づいた

 

母亡きあと、このカフェ『ボン・ジュルネ』は

父がたったひとりでやっていて、アルバイトなど雇うお金もなく、

仕事帰りや休みの日に私がこうして手伝うくらいだ

正直、自分の仕事が終わってからというのは疲れもピークなんだけど

小さい頃から慣れ親しんだこの店の雰囲気とコーヒーの香り、

この空間が大好きだから

実際はここを手伝うことによって癒され、仕事の疲れもふっとぶというもので・・

 

あまり意識したことがなかった

 

今みたいに父が出かけているときには、私がひとりで店番することになる

ということを。

 

見知らぬ男の人に口に出してそう言われると、何だか途端に物騒な気持ちになった

 

 

「・・・ そういうときは、嘘でも奥に人がいる、って言った方がいい」

 

 

黙りこんだ私に、その男の人は言った

 

 

「・・・・・・・」

 

 

何も言い返せない

 

 

「コーヒーを。」

 

 

この人は・・・ 敵?味方?

危険?安全?

そんな考えが頭の中をぐるぐるぐるぐる・・・

 

 

「聞こえなかった?コーヒー。注文したんだけど?」

 

「えっ?あっ、はい!すみませんっ!」

 

 

私は慌ててメニューを持って、下がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ 美味しい」

 

 

 

さっきのお客様にコーヒーをお出しして、カウンターからじっと見ていると

 

ひとくち飲んだ口元が、そう動くのが見えた

 

 

ふふふ

 

何だか嬉しくなる

 

 

カランカランカラン~

 

 

「いらっ・・」

 

お客様かと顔を向けると

 

「・・・・・・・・」

 

恐ろしく悲壮な面持ちの父だった

 

足取り重く、そのままカウンターへと入ってくる

 

 

「お父さんっ!お客様っ!!」

 

 

私は声を潜めながらも語気を荒げてそう言ったが

お父さんの耳にはまるで届いていないかのごとく

ぼ~っとつっ立っている

 

 

・・・・・ 何かあったの・・・?

 

 

 

ぼぉ~っと立っている父をよそに

ガタッと椅子の音がしたと思ったら

さっきのお客さんが、立ち上がって歩いてきた

 

 

会計かと思い、レジへと移動する私

 

 

でも、そのお客さんはまっすぐカウンターまで歩いてくると

父の正面に立ち、サングラスを外して胸ポケットに

 

 

うわっ!かっこいい!!

 

 

「原田・・英二さんですね?わたくし、TOHOホールディングスの執事、

真崎恭弥と申します。」

 

 

えっ?

なんだそのっ、ザ・イケメンな名前はっ・・・

っていうか、とーほー?なんとか?

でも執事って言ってたけど

ほんとにそんな人がいるのっ!?

 

やばい・・・

執事・・・

イケメン・・・

 

何とも大好物なかほりが・・・・/////

 

 

お父さんは、差し出された名刺をじっと見て

 

「あの・・・ まさか、ほんとに・・?」

 

なんか、キツネにつままれたかのような顔をして

声をあげている

 

 

「ええ。会長の命によりお嬢さん・・・ あちらですよね?

りかさんをお迎えに上がりました」

 

 

・・・・ はい?