キャーーーー!!


 

・・・・ 女性特有の黄色い(誰が色をつけたんだろう?)声援?悲鳴?が聞こえたかと思いきや



 

「社長よぉーー!!」


 

ドドドドッーー


 

誰かの掛け声とともに、女性の波が動き出す


 

とある大企業のビルの1階での毎朝恒例の出来事

 

社長出勤時には、いつもこうなる


 

私はその光景が見渡せる、同じビルの1階のカフェで働きながら

 

遠巻きに視線を馳せる





 

ちょっとちょっと!!皆さん!!お仕事はっ?


 

なんて無粋なことは言いません

 

だって・・・

 

皆さんの気持ちは、よぉ~~っくわかるんですもの


 

あの社長をひとめ見れば

 

その美しさたるや、もはやこの世のものとは思えない・・・

 

何度でも見たい

 

ぜひ、お近くでそのお姿を拝みたい!!

 

でも、皆さんのように駆け寄るなんてこと

 

出来ない自分の性、とかいて『サガ』と読む・・

 

を呪う・・・



 

キャアアアーーーーーーーー


 

ひときわ、声が大きく叫ばれると


 

「いま、こっち見て笑われた?」

「手を振ってくれたんじゃない?」

「あの、そばまで行ってた子、何か声かけられてなかった?」

「うそーーーー!!ずるいっ」

「明日はもっとそばまで行ってみるっ?」


 

・・・・ 笑った?

 

・・・・ 手を振った?

 

・・・・ 声をかけた?



 

うううううう~~~らやましいぜっ!!!

 

そ、それは・・・




 

「おはよう!今日も一日頑張ろうね!」


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いやいや、違うっ

 

これだと若干、恋人モード入ってるよね?


 

社長と、たんなるいち社員という関係性であれば、きっと・・・




 

「おはようございます、朝から元気がいいですね」


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くらいの社交辞令的なやつ・・・


 

そう!こんな感じだわっ

 

でもそれでもいいっ

 

声かけてもらえたら・・・・


 

・・・いやいや、待て待て

 

こんなふうに目なんか合ったりしたら私・・そのあと仕事にならない

 

いやだからっ

 

私じゃないって!!

 

社長に見つめられているのは、そう!

 

私の中では、あの、いつも一緒にいらっしゃる美人秘書の水戸真理亜様!!

 

彼女なら似合う!!


そうだわ、あの2人ならきっとこんな感じでー


 

私はポケットからメモノートを取り出し、カキカキカキ・・・
 

 

 

 


 

「はんっ! まったく、どいつもこいつも、社長、社長ってうるさいな~

・・・それに比べて、朝倉さんって真面目だよねー

今も何か仕事で気づいたことをメモしてたんだろ?

よくメモってるよね、ほんと感心するよ

皆にも見習ってほしいもんだよな~

ね?朝倉さん?」


 

厨房スタッフの松本くんが、中から声をかけてくれた



 

ドキッ


 

そう!

この私の容姿風貌・・・

 

黒髪ロングをうしろでひとつに束ね

黒縁メガネをかけた、いわゆる優等生キャラ!!

 

両親とも教師だったせいで

この容姿はいつも必須だった

 

おかげで、まわりからは真面目ちゃんと呼ばれてきた

 

そう、昔からずっと!!


 

でも、本当の私はこう見えてムッツリ・・・なのよ!!!

 

仕事のことをメモってたですって?

 

違ぁーーうぅーーーーっ

 

このメモ帳にはね!?

 

聞いて驚け!!

 

社長との願望妄想のアレコレを思いつくがままに綴っている

いつでもどこでも、思いついたらすぐメモれるように

こうして勤務中でも、カフェの制服のポケットに忍ばせているのだ!!!



 

・・・なんてこと、言えるわけもなく


 

「・・ そうです・・・よね」


 

優等生ゆりちゃん、そうにっこり微笑むしかないのだ
 




 

「社長室から、デリバリー、入ったけど・・・

困ったな~、今日から一週間、草本さん

お休みなんだよね・・・」


 

ぴくっ


 

そのつぶやきが聞こえた途端、店内にいるスタッフ、ざわつきだす

 

社長室にデリバリー?

いつもは、35才既婚、旦那様とラブラブの草本さんが社長室に届けることになっている

なぜか、って?

それは言わずもがな、あわよくば社長に、という女子社員を牽制するためである

 

そ、れ、が・・・

 

その、草本さんが一週間お休み?

 

となるとー



 

「店長!!」

「ハイッ!私、行きますっ!!」

「私がっ!!」


 

「・・・・・・」


 

もちろん私、ここで手をあげるわけもなく

 

じっと事の成り行きを静観している




 

「朝倉さんに行ってもらったらどうっすか~?

彼女、社長にうつつを抜かしてないみたいだし?」


 

さっきと同じく松本くんが厨房から顔を出して、店長に進言




 

ええーーーーーっ!!

 

 

いいえ、私が一番うつつを抜かしています・・・

 

 


 

「ま、松本くんったら・・ 何言ってるのっ///」




 

社長のおそばになんて寄ったりしたら私

それこそ、その場で失神してしまうかもしれないっ

ううんっ

しっ○ん・・いや、そんなことになったらもうー

恥ずかしくて二度とお目にはかかれないであろう!!


 

「む・・ムリであせる

 

「うん、そうだね、そうしよう。朝倉さん、頼むね」




 

「え?あの、店長・・・・・・・」


 

「じゃ、これ、温かいうちによろしく!」



 

ポンッと手渡された

 

 

 

 

 

 

つづく・・・

 

 

 

(画像、おかりしました。ありがとうございます)