東慶寺(toukeiji):縁切り寺
東慶寺は、山号を松岡山、寺号を東慶総持禅寺、女性庇護の縁切り寺として、鎌倉時代から600年の歴史を持つ臨済宗円覚寺派の尼寺です。
開基は鎌倉幕府9代執権北条貞時(北条時宗の嫡男)、開山は北条時宗の正室、覚山尼(堀内殿)で北条得宗家(執権家)ゆかりの尼寺と伝えられています。
覚山尼は北条時宗臨終の間際、無学祖元を導師として二人揃って落髪して出家、時宗没後、東慶寺を建立して住持となりました。
南北朝時代には後醍醐天皇の皇女、用堂尼が五世住持となり、住持を御所様、寺を松岡御所と称される大変格式の高い寺院となります。
用堂尼は兄の護良親王の菩提を弔う為に東慶寺に入ったとされ、東慶寺は現鎌倉宮周辺、二階堂を含む広大な地域を領有することになります。
用堂尼以降、室町時代の東慶寺住持は、鎌倉公方、古河公方、小弓公方など由緒ある格式の高い家柄の娘が務めてきました。
戦国時代に入ると後北条氏の庇護を受け、舞岡、野庭(現横浜市港南区)を含む広大な寺領を保有していたようですが全容は不明です。
東慶寺の寺領がはっきりするのは家康の時代に入ってからで二階堂86貫60文、十二所内20貫80文、極楽寺内6貫240文、合計112貫とされています。
鎌倉では円覚寺144貫に次ぐもので、鎌倉五山一位の建長寺96貫よりも大きな寺領を保有し、江戸時代に入ってからも維持されていきます。
大阪城落城の翌年には秀頼の娘、天秀尼(出家後は天秀法泰)が千姫の養女として東慶寺に入寺し、その後20世住持を務めます。
天秀尼入寺以降の東慶寺は千姫を通して徳川幕府と強い絆を持ち、3代将軍家光の弟、忠長切腹後には屋敷が解体され東慶寺に寄進されています。
寄進を進めた人物は千姫と春日局、仏殿、客殿、方丈、大門などが寄進され、その後仏殿は三渓園(横浜)に移設され重要文化財として残されています。
会津四十万石大名、加藤明成と家老堀主水、双方の家臣同士の争いを発端として堀主水は会津を出奔し、妻子を東慶寺に預けて自らは高野山へ向かいます。
加藤明成は東慶寺に庇護されている妻子の引き渡しを迫りますが、天秀尼はそれを拒否します。
さらに天秀尼は鬼の形相で「古来よりこの寺に来る者いかなる罪人も出すことなし、無道至極なり、明成を破却させるか、この寺を退転させるか、二つに一つぞ」と迫ります。
大名行列も道を譲るといわれた天秀尼の気迫に押され、追手達も引き下がらずをえませんでした。
その後加藤明成は自ら願い出て家督を返上、会津四十万石は改易となり、堀主水の妻子は会津へ帰って天寿を全うすることになりました。
天秀尼の気迫もさることながら、当時の東慶寺には治外法権という特権が許された特別な寺社で、大名をも凌ぐ強大な力を持っていました。
家康にとって天秀尼は敵方の娘になりますが、背後に孫娘である千姫の存在があったことによるものと思われます。
家康は自分の正室を自害に追い込んだ自責の念があって、女性には甘かったということでしょうか。
絶大な力を持った天秀尼以降、東慶寺の格式ゆえに適任者が見つからず25年後に21世住持として永山尼、さらに21年後に22世住持として玉淵尼が務めています。
尼寺として栄華を極めた東慶寺ですが、その後明治に至る130年間は住持不在となり、住持代理として院代が務め、1902年(明治35年)最後の院代順荘法孝尼が亡くなり尼寺としての東慶寺の幕を閉じました。
ちなみに江戸時代の縁切り寺は東慶寺と満徳寺の2つの寺社だけが認可されていました。
お金儲けに没頭するママさん達にも、東慶寺にお参りして煩悩をお祓いしてほしいものです。
■境内
鐘楼・書院・本堂・水月堂・寒雲亭(茶室)・白蓮舎(立礼茶室)・松岡宝蔵
境内奥に位置する松岡宝蔵には聖観音菩薩立像、東慶寺伝来の寺宝、縁切り文書が展示されています。
歴代住持の墓
イワタバコ岩壁先の石段の上には歴代住持の墓があります。
皇女用堂尼・天秀尼・永山尼・蔭涼軒院代・順荘尼が埋葬されています。
覚山尼は供養塔のみ、墓は夫時宗と同じ円覚寺に埋葬されています。
文人の墓碑、句碑、歌碑が数多く残り、夏目漱石も訪れています。
■四季の花
尼寺であったことから花のお寺としても知られていて、季節を通じてたくさんの種類の花が咲き、訪れた人の目を楽しませてくれます。
春:2月~4月は梅・彼岸桜・枝垂桜・うこん桜・八重桜
夏:5月~6月は黒姫アジサイ・額アジサイ・柏葉アジサイ・花菖蒲・イワタバコ・イワガラミ
秋:10月~12月は秋桜・杜鵑・竜胆の花・紅葉
冬:紅葉を最後に花も年末から1月は冬眠の時期、ゆるりと境内を見て回りましょう。
■観光情報
交通:JR横須賀線北鎌倉駅徒歩約4分
徒歩:北鎌倉駅から線路を右にして300mほど南下すると右側にあります。
住所:鎌倉市山ノ内1367(☎0467-33-5100)
時間:8:30-16:00(4月-9月:8:30-16:30)
拝観料:200円(松岡宝蔵:常設展400円・特別展500円)