何年前だろう。
子どもはまだ小学生だったと記憶している。
もう何もかも捨てよう、
どこか知らない土地で死ぬんだ。
そう思って家を出た。
引き出せるだけの現金を用意し、
夜の京都駅へと向かった。
着く前から、
一番待ち時間の少ない
寝台特急と決めていた。
改札口の上に表示される
行き先と時刻を見た。
記憶が定かではないが
「博多行き」だったと思う。
少しもためらうことなく切符を買い、
列車に乗り込んだ。
-------------
やがて、列車は動き始めた。
煙草を吸いながら、
今までの人生と
もうお別れなんだな…
そんな感傷に浸っていた。
ワタシは、酒が飲みたくなった。
列車に乗るまでの余裕がなく
予め用意する時間がなかった。
走り始めた車内をウロついて、
どこかに酒はないか捜した。
しかし、
どこにもアルコールなんてない。
何だよ❗️
旅立ちに酒がなくてどうする❗️
仕方なく、大阪駅で途中下車する。
駅のそばの居酒屋に入り、
ツマミもそこそこに飲み始めた。
あ〜あ、
何で大阪で酒飲んでるんやろ❓
頭によぎる考えを振り払うように
ひたすら飲み続けた。
-------------
季節は冬。
上着はダウンジャケットだったが、
公園で野宿するには寒すぎる。
酔っ払ってまともに歩けない。
とりあえず、
どこか寝られる場所はないか。
途中、コンビニで
ウイスキーのフルボトルを買い、
ラッパ飲みしながら
寒風吹き荒ぶ真夜中の街を
ユラユラと歩いた。
ぼーっと光る看板を見つけ
そこへ入った。
そこが
ビジネスホテルだったか
ラブホテルだったか、
もうどうでもよかった。
ウイスキーを飲みながら
ベッドに落ちた。
次の日、
もう博多じゃなくてもいいか。
大阪でもいいやん。
パチンコと酒だけの生活が始まった。
公園を見つけてはベンチに座って
ウイスキーを流し込む。
目に入るのは
ブルーシートで覆われた
ホームレスの住処ばかり。
自分もああなれるんやろか?
みんなに迷惑かけたな。
どうやって死のうか。
同じところばかり堂々巡り。
-------------
生きてるのか死んでるのか
分からない時間が何日か経った頃、
酔っ払って家に電話を掛けてしまった。
そんな訳で
今も死なずに生きている。
