スプリンターズS 上村ナイトでG1初制覇 | 競馬

スプリンターズS 上村ナイトでG1初制覇

 「スプリンターズS・G1」(5日、中山11R)


 新ヒロインの誕生だ。1番人気スリープレスナイトが好位から直線で抜け出し、5連勝で秋のスプリント王に輝いた。デビュー17年目、40回目の挑戦で上村洋行騎手(34)=栗東・フリー=は涙のG1初制覇。バースデーVを飾った橋口弘次郎調教師(63)は海外遠征の可能性も明らかにした。2着は2番人気キンシャサノキセキ、3着にはビービーガルダンが入り、G1最速騎乗の三浦皇成騎手(18)=美浦・河野=のプレミアムボックスは14着に敗れた。


 17年間の思いが一気にこみ上げた。スピードとパワーでスリープレスナイトが押し切った電撃6F。最速馬の背中で初めて味わうG1制覇に、上村は涙をこらえ切れなかった。40回目の挑戦で、ようやくG1の勲章を手にした苦労人は「最高です。今まで頑張って良かった」と声を震わせた。


 1番人気でG1を迎えたのは初めて。自信と信頼感が、押し寄せるプレッシャーをはねのけた。「ゲートをうまく出させてあげることだけを考えていた」。全神経を集中し、抜群のスタートを切った。外からキンシャサノセキが来ても冷静だった。「予測していた。直線に向いてからひと呼吸待って追い出そうと思っていた」。はじけるような反応に、勝利を確信した。


 「これだけ自信を持って臨めるのは初めて」とレース前から話していたほど。悲運の快速馬・サイレンススズカに乗っていても、ここまでは意識できなかったという。「1番人気だったけど、当然と思っていた」と重圧を楽しんだ。橋口師も「思い描いていた通り。安心して見ていられた」と最高の騎乗をたたえた。


 馬から降りた瞬間、泣き崩れるように橋口師の胸へ飛び込んだ。03年に目の病気(黄斑上ぶとう膜炎)を患い、4度に渡る手術を経験した。復帰した05年、橋口師が“チャンスを与えられるときは与えるから”と声をかけてくれた。「先生がいたからジョッキーを続けられた。ずっと起用してくれたのが今につながっている。頑張ろうという気持ちになれた」。苦しいときに背中を押してくれた。


 「先生の誕生日にいい恩返しができた。幸せです」。恩師の63回目のバースデーに花を添え、ホッとした表情を見せた。師も「上村で勝った。それが一番うれしい」とほおを緩ませる。


 検量室前で抱き合った同期の後藤も「競馬学校ではずばぬけて成績が良かった。彼を目標に追いかけてきた」と話す。新人最多勝にも輝いた腕達者が、苦境を乗り越えて頂点を極めた。


 サイレンススズカ、アドマイヤグルーヴ、シックスセンス…多くの名馬の背中にまたがってきた。「いろんな馬に巡り会ったけど、一番しんどいときにコンビを組んだ馬。最高のパートナーです」。多くの挫折と苦しみを知った分、喜びも大きい。G1ジョッキーとしてスリープレスナイトと歩むこの先にも、数知れないくらいの栄光が待っている。


出典:デイリースポーツ