※この内容は犯罪の定義と犯罪の成立要件を題材としたIRACの組み立てを理解していることを前提とした内容になっています。
(特に犯罪の成立要件に関しては必ず理解しておいてください)
【犯罪の分類】
[基準A]結果発生の有無
①挙動犯:一定の行為のみを必要とし、外部的な結果発生は必要としない犯罪
e.g.)住居侵入罪や偽証罪、解散しない罪ほか
②結果犯:行為のほかに一定の結果発生を必要とする犯罪
e.g.)殺人罪や傷害罪、窃盗罪ほか
→店の商品を盗もうと棚から取り出すが、元の場所に戻すと窃盗にはあたらない
〇結果犯の場合には行為の客体(目的物)に現象的な変化(結果)が生じるのに対し、挙動犯の場合は不要
③結果的加重犯:行為者が一定の犯罪(基本犯)を行ったが、行為者の想定を超えて重大な結果が生じた場合、基本犯よりも重く処罰する犯罪(✕✕致死罪などが典型な罪名)
e.g.)暴行から被害者の死亡 (基本犯:暴行、加重結果:傷害致死)、強盗から被害者の死亡(基本犯:強盗、加重結果:強盗致死)ほか多数
[基準B]法益侵害の有無
④実質犯:法を定める以前に人として決して許されない行為を犯罪化したもの
↓さらに細分化すると…
⑤侵害犯:法益侵害の発生そのものが犯罪の要件
e.g.)殺人罪→個人の生命、窃盗罪→占有権(通説)、恐喝罪→被害者の財産(とその意思決定や行動の自由)ほか
⑥危険犯:法益侵害の危険(おそれ)の発生が犯罪の要件
e.g.)放火罪や通過偽造罪ほか
↓さらに危険犯を細分化すると…
⑦具体的危険犯:法益侵害の具体的危険の発生が構成要件要素であるもの
e.g.)非現住建造物等放火罪、現造物等以外放火罪、ガス漏出等及び同致死傷罪ほか
⑧抽象的危険犯:危険が生じなくとも、その種の行為を立法者が危険だとみなして構成要件要素とする犯罪
e.g.)現住建造物等放火罪、私印偽造及び不正使用等罪、遺棄罪ほか
〇保護法益を侵害することや法益を侵害する危険を発生させることが必要かどうかで区別する
⑨形式犯:行政上の取り締まり目的を達成するため、本来は無色透明な行為が犯罪化されたもの
e.g.)旅券(パスポート)不携帯罪、道路交通法上の罰則(速度超過、駐車違反ほか)
[基準C]犯罪の終了時期
⑩即成犯:構成要件的結果が発生すれば実行行為も犯罪も即座に終了し、法益が消滅し既遂となる犯罪
e.g.)殺人罪ほか
→人を殺すという結果発生と同時に犯罪が成立し、殺人行為は終了する
⑪状態犯:構成要件的結果が発生すれば実行行為と法益侵害も発生し既遂となり、犯罪も終了するが、法益侵害状態が存続したままの犯罪
e.g.)窃盗罪、詐欺罪、死体遺棄罪ほか
→窃盗行為によって窃盗罪は成立するが、物を盗まれて手元に無い(侵害行為の)状態は続く
〇状態犯は犯罪の既遂時点よりその後も違法状態が継続するが、それが構成要件範囲内である限り、新たな犯罪を構成しない犯罪を指す。
→窃盗犯が盗品を損壊しても器物破損には該当しない。
⑫継続犯:実行行為が継続する限り法益侵害も継続し、犯罪が終了していない犯罪
e.g.)監禁罪ほか
→犯人の家に連れ込まれて監禁された時点で監禁罪は成立するが、解放されるまでは監禁(加害行為)は継続する。
〇区別の実益は共犯(共同正犯)や幇助犯の成否と公訴時効の起算点に関わる
→特に“いつ犯罪が終了したか”は重要
a)実行行為が終了した後に共犯や正当防衛は成立しない
b)犯罪行為の終了時点から公訴時効は起算される