俺は鼻くそ。
仄暗い穴の中で生まれた。
まだ体が丈夫ではないので優しい毛に守られて育った。
鼻息に吹き飛ばされそうになった時は必死にまわりの毛につかまって難を逃れた。
そんな俺にも旅立ちの時がついにやってきた。
穴の中にあの悪魔がやってきたのだ。
穴よりも巨大な悪魔だ。
まわりの世界ではそれを指と呼ぶそうだ。
ある時その指が穴の中にやってきて俺をこさぎ出そうとするのだ。
俺は必死に抵抗した。
捕まるまいと必死に毛にしがみついた。
俺の体が潰れようが丸まろうが必死に抵抗した。
しかし指は強かった‥
俺は指の先に捕まると穴の外に引きずり出された。
外はすごく眩しく寒かった‥。
指は俺を弾き飛ばそうとしやがった‥だが俺もそうやすやすと負けてなるもんかと別の指にしがみついた。
何度も何度も弾き飛ばされそうになるたび俺は別の指にしがみついた。
負けてなるもんか!!
しかし指は強かった。
俺を巨大な柱と呼ばれる物に押し付けやがった。
俺の体は潰れ、柱に擦り付けられた‥‥
俺の体はしだいに水分を失っていき意識が遠退いていった‥。
意識が朦朧とする中俺の側に別の指がやってきた。
他人の指だ。
前の指よりも小さく細い指。
その指は俺に気がついていないらしい。
俺は死に物狂いでその指にしがみついた。
それから半日ぐらいたっただろう‥‥‥俺に好機がやってきた。
その指が新しい穴に向かって行ったのだ。
それから俺はその新しい穴の中で生きている‥‥‥‥‥
そう‥‥‥
あなたの鼻の中で‥‥‥‥