海の辺に住みたいと言ったのは私の母だった。
何でも昔からの、夢だったらしい。
私はその頃、白い小さな一軒家に憧れていたから、その意見に反対する訳もなくて、跳びはねて喜んだ。
そうして移った海の家で、私の喜びは波に飲まれて流された。
確かに白いお家だったけど。
海の見えるきれいな丘にあったけど。
それよりも、ずっとずっと、ぼろかった。
白い塗料は剥げていて、テラスの柱は朽ちていて。
海風にさらされる家は、こうなるものだと父は得意そうに、言った。
私は人生で初めて、純粋な裏切りを覚えた。
ぼろの家が嫌で嫌で堪らなくて、限界を感じたのがその日の午後。
それでも、母は幸せそうだったし、父も満足気に母の肩を抱き寄せて、波の音を聴いていた。
私は何も言えなくて
その日から、地獄は始まった。