登場する人物・団体など名称は全て架空の物です

特定の地名なども一切関係ありません。

 

 私は聖子、入社して3年目の序列順位最下位だ。

 

週末家族で晩御飯を食べていたら玄関のチャイムが鳴った

インターホンが一番近い私がモニターを覗くとあのオヤジだ

廃棄物処理会社の社長が訪ねて来た

父にその事を伝え出てもらうと社長は私にも用事があると

一緒に話を聞いて欲しいと手土産まで持参して来た

社長は町内会役員も務めているから色々と大変らしい

前回と同様でまたも『良い所のプリン』を手土産で釣ろうとした

そして、私は単純だからそのプリンでまた釣られた、チョロイ女だぜ

結論から言うと、地域のPTA関係・町内会各団体が集まって実施する

『避難所開設訓練』で町内会の身内同士だと採点が甘くなるらしい

私を選んだ理由を聞くと「週末はやる事も無く暇だろ?」と言われた

大学が夏休みに入っていた小癪で可愛い妹に「地域の事だから」と

誘ってみたら「論文が忙しい」と暑い日中の屋外活動を拒否して来た

いつかどこかでこの軟弱な性格を叩き直したいと思う。

 避難所開設訓練実施日は8月第一日曜日だ、まだまだ暑いぜ

当日は30分前に現地へ向かった、当然服装は夏用で便利な

カーゴパンツにスニーカーに帽子を着用し最低限は確保した

 

ネシブちゃんねる

 

集合場所に到着すると社長からの指示を受けた

「おい聖子、お前の感性の採点で良いぞ、忖度無しだ」

そんなこと言ってあとで後悔するなよと言いたかったが

町内会が用意した採点表に目を通した、理解は出来たぜ

続々と関係者が集まって来た、暑いから日陰にたむろしていた

訓練前からいきなり減点対象が数名存在した

いい大人が暑いからと半ズボンで参加はダメだろう、減点だ。

板張りの大広間で訓練開催の趣旨説明が始まった、市役所の防災課の

職員も参加した、町内会が紹介しているのに奴らは隅っこだ

前に出て来て整列ぐらいしていろよ、減点だ。

防災課の説明を聞いていると「避難所の収容人数には限界があり・・・」

私が聞いた解釈では「停電や断水ぐらいで避難所に来るな」と聞こえる

2024.01.01の能登震災支援の事を説明した、だったらヘルメットか

帽子ぐらい着用して参加しろよ、減点だ。

いよいよ訓練が始まった各担当者が動き出した

各担当者が活動していた所を回ったけれど減点が多いのは仕方ない

町内会長の任期が1年のため素人の集団だ、浅く広く活動すれば

経験者が増える仕組みだ、それにしてもお粗末過ぎだぜ

会社の避難訓練はただ並ぶだけの人材だったのか?

序列最下位の私でもそれぐらいなら普通にテキパキと出来るぜ

『避難所開設訓練』の終了が案内された、また大広間に集まった

「今回の訓練を生かして・・・・」最後は帰りに日赤の関係者が

炊き出しと称して作ったカレーライスを頂いて解散の流れになった

社長に採点表を渡すと、渋い顔をしながら「ご苦労さん」だった

社長とカレーライスの炊き出しの列に並んだがなかなか進まない

カレーをよそっている姿が見えた、今日初めてお玉を持つのか?

日赤関係者は一応頭巾は被っていたが、誰一人防災頭巾はいなかった

「毎年こんな感じなのか?スキルは上がらないのか?」と

社長は核心を突かれたようでまたも渋い顔をしていた。

2024.01.01能登半島の震災で協力会社へ支援に行った際に

被災地避難所の炊き出しを協力した時と同じだ何も変わっていない

動く人が疲弊して、動かない奴はノー天気、そんなパターンだ。

 

《誰も何も言わないから現状が100点と思い込んでいる》

 

                    終わり