ふっと、深い層が拓く夜です。
炎と影が揺らぎ、
古代の層が静かに深まり始めます。
たまゆら祈りごと
~縄文から未来へ紡ぐ祈りの縦糸
第4章 炎と影の揺らぎ 送葬の儀
揺れる明りの中で、祈りが始まった。
俺の里の者が、静かに息を引き取った。その送葬の儀。
その中心に、アキツが両手を挙げて立っていた。
ぱちりと炎が跳ねる。そのたびに、アキツの祈りが深く潜っていくのを感じる。
今日は、いつもと何かが違う。
大気が湿り気を帯び、灯りの明滅に合わせて空気が揺れ重くなる。
俺の呼吸が浅くなる。まるで、アキツの祈りに合わせて空気が重く垂れていくようだ。
古くから祈りの焦点として置かれていた巨石が、今夜に限って脈打っているようにみえる。
送る炎の揺らぎがそう見せるのか。
巨石の表面に刻まれた”〇”の中央に”・”が炎に照らされて踊りだしているように見える。
ふと気がつくと、アキツの呼吸が松明の明滅と同じリズムになっている。
彼女の輪郭が滲んで杜の気配と同化するように見えた。
木々の間を風が吹き抜け、炎を揺らす。
松明の影が一層濃くなった。
俺の腹の底が一気に冷え、心臓が踊りだす。
ここで捕まえないと、アキツが戻ることが出来ない遠くに行ってしまう。
慌てて、アキツを抱き込むように捕らえ、壊れ物を扱うようにそっと肩に手を置いて、瞳を覗き込んだ。
アキツの瞳は、俺を通り越し、風の向こう側を覗いているようだった。
やがてゆっくりと瞳に光が戻り、俺を認めたと思ったら、急に、眉間をトントンと突きながら文句を言い始めた。
「……もう少しで何かが分かる所だったのに……。」
その声を聴いて、思わず安どのため息を漏らし、頬が緩んだ。
その存在を確かめるように、そっとアキツを抱きしめた。
炎の揺らぎが静かに二人を包み込み、杜の影がその静けさの輪郭を守っていた。
巨石の表面が、暗闇の中に沈んでいった。
~~~~~
アキツがアキトに文句を言っていたころ、
祈りの奥深くで触れかけた二人は、
折り重なる黒い影が層をずらすように揺れるなか、
静かにスマホの画面を見ていた。
電車の扉が音を立てて閉まっていく。
軽いモーター音が唸ると同時に、湊の体が私と同じ方向に引っ張られていく。
私は、カバンを足の間に置きなおし、湊を見ながら隣の座席を軽くたたいた。
素直に座った湊を見て頬が緩むのを止められず、誤魔化すようにスマホに目を戻した。
湊の素直なところが、可愛いんだよね。
私は、軽快なリズムに身をゆだねながら、さっきの画面に映った模様をAIで検索を掛ける。
だが、その結果にいまいち納得がいかない。何かを見落としているような。胸に何かが詰まっている感じがする。
ふと、隣を見ると、湊が呑気に音楽を聴いている。
眉間に思わずしわが寄る。「なんかむかつく…。」
思わず片方のイヤホンをひょいと取り上げた。
一瞬、茜色が濃くなり携帯の双子座チャームが青白くきらりと光った。
まるで鉄の冷たい光のように。
