古代と現代。
二つの層が同じ時を刻み始め、
そっと重なり始めます。
たまゆら祈りごと ~ 縄文から未来へ紡ぐ祈りの縦糸
第三章 風の揺らぎ 彼方の記憶
プラットホームに流れているメロディーが止んだ。
茜は眉間にしわを寄せながら、画面を忙しなくスワイプさせては小首をかしげている。
湊は、そんな茜の眉間にトントンと指でつついた。
すると、茜は唇をキュッと噛み締めながら湊にスマホの画面を向ける。
湊が覗き込むと、砂嵐のような画面の向こうにチラチラと「◯とその中央に・」の画像が映り込んでいた。
「こりゃー壊れたな。」と呟き、早速自分のスマホを取り出して最寄りの携帯ショップを検索し始める。
茜は、そんな湊を苦笑いで見やりながら、もう一度画面を覗き込み、目を凝らした。
相変わらず砂嵐の画面。その向こうに、炎が揺らめき、伸ばされた腕が一瞬、でも確かに映った。
「電波の異常かな?」
そう言いながらも、胸の奥に小さな骨が引っかかった感じがした。
もう一度スワイプすると、ショート動画が正常に流れ出す。
茜は、思わず湊の靴を蹴っ飛ばす。
「多分、電波が乱れただけだから…。」
呆れたように呟くと、湊がシュンと小さくなったように見えた。
まるで、飼い主に「待て」と命じられて項垂れている大型犬のようだ。
茜が微笑んだ瞬間、車内の空気が軽くなった気がした。
茜の視界の外に青白い水面が揺らめき、
湊の頬を少し湿り気を帯びた空気がかすめていった気がした。
~~~~~~~~
木々の影がゆっくりと闇に沈み、
祭祀の火が静かに明滅を繰り返した。
その明滅の中で、巫女であるアキツがゆっくりと手を掲げ、神々に祈りを捧げ始めた。
アキトが、その背後でアキツの祈りを支えていた。
アキツは祈りながら、自分の輪郭が解けて、大気と一体になっていくのを感じていた。
輪郭が曖昧になると、祈りは水の底のように静かに揺らぎ、風に運ばれる。
ふと気がつくと、多くのボンヤリした黒が、水底にいるかのようにユラユラと遊んでいる。
その向こうに、2つの青白い光が揺らめいている。
水のような風のような、そんな揺らめきがアキツの祈りを静かに引き寄せていく。
「あそこに触れれば何かが分かる。」
思わず手を伸ばした瞬間、
引き波のような強い力を抑え込むような優しい手に包まれながら、
元の器に戻された気がした。
気がつくと、両肩にアキトの手が優しく置かれていた。
その背中には、租霊を送る火が静かに揺らめき、
焔がアキトの表情に深い陰影を落としていた。
アキトが、眉間にしわを寄せて私の瞳を覗き込んでいた。
思わず、そのシワをトントンとつついた。
「もう少しで何かが分かるところだったのに…。」
そう呟いて、頬をふくらませた。
乾いた風が、まるで慰めるかのように二人をかすめていった。
~~~~~~~~~~~
電車のドアが閉まる瞬間、
同じ風がふっと吹き込んで、茜と湊の頬を撫でた。
まるで、遠い記憶を呼び覚ますかのように。
