物まね名人は、さぞや大喝采を受けるだろうと期待に胸をふくらませました。ところが意外なことが起きたんです。貴族は怒りに顔を真っ赤にして仁王立ちとなったんです。「おのれ!お前は蛙の鳴き声の名人と言ったが、ちっとも似ていないぞ。うそつきめが!」ギラリと刀を抜いたんです。名人は驚いて腰をぬかしてしまいました。だって彼にしてみれば本当に上手に、本物の蛙を鳴かしたんですから「似てない」なんて言われたら困ってしまいます。といって、そんなことを告白してしまえば、さらに怒り狂って殺されてしまいます。「おい、インチキ芸人め、これから二度とフランスの中で蛙の鳴き声の名人なぞと言ったら、その場で殺してやるぞ!」物まね名人は命からがら、お城から逃げ出しましたとさ。