理香姉と俺は、中間地点で会うと言う事で互いに交通機関を
利用して、その土地へ訪れる事にしたので
駅で待ち合わせをした。
メールの会話や電話が長かったから、実際に会うのは、これが2回目となる。
1回目は、あのバーで・・・・
2回目は今日・・・
初めての出会いからは、時だけが経過してて・・・
どんな顔だったかも半分忘れていた。
約束の場所へ到着したのに・・・なかなか来ないので
電話をすると、近くで電話が鳴っていた。
辺りを見回すと、聞き慣れた声だけが聞こえてくる。
「希・・・怒らないでね・・」
「うん・・・何?来れなくなった?」
「違うの・・・・。顔が・・・・」
「ん?顔?」
「希ってどんな顔だっけ?」
2人は大笑いした。
おそらく、顔を忘れていたのは・・・俺だけじゃなく・・・
理香姉も同じだったみたいだ。
「携帯が近くで鳴ってるから・・・近くにはいるよね?
俺、手上げるわ・・・」
と大きく手を上げると・・・・
「わぁ~~~っ!!会えたぁ~~!!」
と後ろから抱きつかれた。
振り返ると・・・何となく見覚えのある女がいた。
「理香姉?」と電話越しに質問すると・・・
「そう!!そうだよ!!」と・・・
お互い目の前で携帯で話しながら確認した。
俺達を知らない人は、変な光景に見えたかもしれない・・・。
初めて出会った時も・・・確かに理香姉は綺麗だった。
長いサラサラの黒髪で・・・あたりにとってもいい香りがして・・・
とても大人っぽくて・・・ドキドキした。
(綺麗だな・・・・)
「もう、携帯切りなさいよ(笑)さっ、付き合ってもらうわよぉ~~」
と理香姉は俺の手を引っ張ってくれた。
俺は、とっても緊張してるのに・・・
彼女は全然って感じで・・・
リードしてくれる。
どこに連れて行かれるのか、わからなかったけど
「誰も行かないような、変わったとこに行こうね♪」
と悪戯っぽく微笑まれる。
駅前のバス停から、バスに乗り込み・・・またどこかへ行くみたいだ。
何の変哲も無いバスだったけど、
「特等席に座ろっ♪」
と理香姉が連れてってくれたのは、一番後ろの座席だった。
「学生の時ってさ、後ろに座りたかったのに
中々座れなくなかった?先輩達がでぇ~んと占領しちゃってさ。
今日は、うちらが占領しちゃうよ♪」
たったそれだけの事なのに・・・
理香姉は、とっても得意気に話すんだ。
大人っぽい中にも、こんな無邪気な一面があるんだぁ・・
と可愛く思えた。
「俺は、よく運転手の近くに座ってたよ。」
「どうして?」
「自分がバス運転してるみたいだったから。」
「あはははっ・・・希可愛い!!子供みたい。」
両手で顔を覆われた。
理香姉も充分子供っぽい一面を見せてたくせに・・・
俺を子ども扱いしてからかってた。
バスから見える、流れる景色を、
理香姉は、窓にしがみついて・・・
「あっ!!見て見て!!あれ!!」
「う・・ん・・」
と返事をすると・・・
「だめよぉ!!誰かと楽しんでる時は、一緒に興味
持たなくちゃ!!」
と抱き寄せられた。
理香姉の真横で・・・顔を並べて景色を眺める。
理香姉の息が窓にかかりうっすら曇り・・・
気分が高揚してるのが伝わった。
「久し振りのお出掛けなんだぁ・・・ワクワクしちゃう・・・」
俺は、違った意味で胸が高鳴っていた。
いつもは、耳元じゃなきゃ・・・理香姉を感じる事しか出来ないのに・・・
今日はこんなにそばにいるんだもん。
よく笑い・・・よく喋る理香姉とは違い・・・
俺は、聞かれた事以外に言葉を発しないでいると・・・
「緊張してるの?」
って言われた。
「大丈夫よ・・・絶対に楽しませてあげる♪」
理香姉は自信たっぷりにそう言った。
到着したのは・・・
何故か、恐竜の博物館だった・・・
どうしてこの場所なのか聞くと・・・
「普通、こういうとこに誰かと来る?」
と言われ、
「変わった場所に行こうって行ったでしょ?
有名な遊園地とかもそう・・・
2人で映画やショッピング・・・街をぶらつくなんて・・・
そんなありきたりの行動は、嫌なの。
第一、そんなとこ人がたっくさん集まるでしょ?
2人でじっくり騒げないじゃないの。」
と説明されて、納得した。
「誰かに印象付けるのって、凄く楽しいんだもん。
理香といると、何が起こるかってワクワクされたいんだなぁ。」
博物館の中に入ると・・・理香姉の予想通り・・・
あんまり人はいなくって・・・・
俺達だけの専用の場所みたいだった。
「うわぁおっ!でかい口ぃ、頑丈そうな歯だね」
と理香姉がケラケラ笑い、無邪気に恐竜の頭に
顔を突っ込む。
そうやって、見る物全てに楽しそうに
騒ぐのを見てると、とても新鮮な気持ちになった。
恐竜に興味があるのか聞いたら、そうでもなくて・・・
「どこでも、楽しめちゃうんだ。」
って話してた。
一通り、博物館の中を観察して・・・
外に出る。
外には恐竜のオブジェがあって、
「あれに乗ろう!!」
って引っ張られていった。
2人で恐竜のオブジェにまたがると・・・
「それぃ!出発進行!!」
と騒いだり・・・
電動で動く恐竜にまたがると
「キャッキャッ♪」とはしゃいだり・・・
「いやん・・・」
と恐竜の顔に股間を近づけてふざけたり・・・
理香姉のペースにどんどん引き込まれていった。
明るい太陽の下で・・・
こんなに笑って楽しんだのは初めてかもしれない・・・
騒ぎすぎて、すっかりお腹が空いた事も忘れていたら
「次は、ごはんだね♪」
って・・・理香姉の行動力には驚かされる。
周りをすっかりリサーチ済みなのか・・・
博物館に続いた散策路を進み、次の場所へ向かった。
林の中を、2人で笑いながら歩いて・・・・
小さな池を見つけると・・・
ちょっと雰囲気のいいお店があった。
ここも、お客がたくさんいるって感じじゃなくて・・・
まるで、俺達だけがキープしてあるみたいに
2人しかいなかった。
地元の野菜がふんだんに使われた松華堂弁当を
注文してくれて・・・
ビールを2つ頼む。
「うまそぉ~~♪」
と俺が言うのに対し・・・
「わぁ、がっつり食べよう!」
「が・・・がっつりって・・・」
綺麗な顔に似合わない言葉を聞いて
また・・笑い・・・
昼間っから、豪華な食事にありついた。
「久し振りにうまかったな・・・」
と店を後にすると・・・
「昼間、たくさん動いたもんね・・・」
「だって、理香姉はしゃぎすぎ(笑)」
「だって、めちゃくちゃおもしろかったんだもん!」
と今日の一日を振り返った。
帰りのバスに乗り込み、駅へ到着した時には
もう、夕方・・・・
このまま帰るには、もったいなくて名残惜しすぎるし・・・
それもまた寂しいな・・・って思った。
「さぁて・・・そろそろ帰らなくちゃね♪」
「あっ・・・う・・ん・・・」
「ミホちゃんが待ってるよ・・・・」
「いいよ・・・今日は別に・・・」
今度は、いつ会えるかどうかなんてわからない・・・
次の約束もあるわけじゃない・・・・
絶対もったいないと思った。
「いい・・・?希・・・・たまには、こうやって2人で遊ぼう・・・
私も楽しかったし・・・・とっても素敵な1日だった。
また・・・時間作ろう・・・」
と理香姉に言われた。
帰りは、理香姉が電車に乗るそばまで見送り・・・
握手をした。
出発の合図が鳴った後で・・・
強く手を引かれ耳元で囁かれる。
(今度は泊まりでね・・・)
と・・・・
吐息混じりの理香姉の言葉に・・・・
俺は、ドキドキしながら・・・・固まる・・・・。
「じゃぁねっ!!また今度!!」
理香姉は、明るく手を振って帰っていった・・・・