あの子が亡くなる前、私の実家へ行っていた。

あの子は私の実家が好きだったが、思春期に入りあまり行きたがらなくなっていたから久々の帰省だった。


そして、その後、あの子は突然自らの命を絶った。


突然のことに私たちはもちろん、両家の親族も受け入れられなかった。


思い出の多い場所は辛い。

今、住んでいる場所も辛いけれど、それでも生きていかなければいけないと必死に心との折り合いをつけてきた。

だから、実家へはもう行かないと思っていた。

思い出がフラッシュバックするし、それを処理するキャパが私の心にないと思ったから。


でも、実家の父が重病になったと連絡がきた。

気づいたら、実家に向かっていた。

迷うこともなく。


実家に着くと、辛い気持ちにもなったが、それでも父の残された時間が少ないことを思うと、少しでも生きている姿を心に残しておきたいと思った。

後悔したくない。

その一心だったと思う。


父は以前も書いたが、とても愛情深い人で孫の死を誰よりも悲しんでいた。

そして、娘の私をとても心配し、残された孫のことも心配していた。

私が辛い時、ずっとそばにいてくれて私たち家族を支えてくれた。


結婚して子供を産んで、父には色々な経験をさせてあげて親孝行しているつもりでいたが、逆縁というとんでもない親不孝を私はしてしまった。

そのことが父の病気を発症させてしまったのではないかと考えている。


お見舞いに行ったら、「なんとか頑張って生きろよ」と言われた。

「寿命が尽きるまでは頑張って生きるからね」と返事していた。


生きてさえいれば、言いたいことも直接伝えられる。

生きている時間を大切にしないといけない。