語学で身を立てる | One of 泡沫書評ブログ

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語学で身を立てる (集英社新書)/集英社
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Polyglot という言葉がある。日本語で言えば「多言語話者」というらしい。Poly- というくらいだから複数だというのはわかるが、ではいくつくらいの言語を操れれば Polyglot を名乗れるかといえば、じつは明確な定義があるわけではないらしい。ただ、 Multilingual という言葉があることを考えると、やはり四ヶ国語以上操れる人のことを呼ぶことが一般的だそうだ。

ということで例によって前フリは以上だが、著者は母国語である日本語はもちろん、イタリア語、フランス語、ドイツ語、英語他、都合7ヶ国語を操る、文字通りの Polyglot であるという。そんな語学研修のプロである著者が、実務家の観点から非常に丁寧に「身を立てる」方法について指南してくれている。

ところで本書のタイトルは『語学で身を立てる』であるから、当然ながら語学学習の話はまるで書いていない。英語の学習法などはほとんど書いていないので、そういうものを求めている向きは、うっかり間違って買わないように注意を促したい。ただ言語学の話や語学学習メソッドの話も多少入っているので個人的には結構ためになった。意外にこういうことは英語学習の本に書いていないものだ。参考までに提示しておこう。

<代表的な英語学習法>




メソッド特徴など
訳読法一字一句を母国語に訳していく)
ダイレクト・メソッド学習言語を用いて学ぶ
オーディオ・リンガル・メソッドヒアリング→スピーキング重視
コグニティブ・メソッド(認知法)文法を理解することによって言語運用能力を発達させる
コミュニティカブ・アプローチ


この他にも色々あるらしいので、興味のある向きはすこし調べられてはいかがだろうか。わたしだけかもしれないが、独学ばかりでやっていると体系的な学習法とか教授法とかを知らないので、どうも効率の悪いことをしている気がしてならない。もちろん語学学習は個人の努力と忍耐が一番重要であり、一義的には勉強にきちんと時間をかけることがすべてだと思うが、実際には短期間で一気に習ってしまうという方法論もある程度確立されているらしいので、調べてみるにしくはないだろう。(しかるべき先生を見つけ、きちんとお金をかければ、であるが)。

本書の面白いところは、タイトル通りきちんと目的を果たしているところだろう。語学屋にありがちな、無駄に薀蓄をひけらかしたり、やけに叙情的な感じになったりすることがないのも好感が持てる。市場の説明や細かい職種の紹介、先達のキャリアや語学留学の要否など、700円で得られる知識としては十分すぎる内容だと思う。多少ビジネスに寄りすぎているところもあり、非論理的な表現を許してもらえば、「文系的な」人は少し違和感を感じる内容かもしれないが、わたしは必要な目的に対して手段をきちんと提示しているところに好感を持った。著者自身もきっとこの本のとおり、プロフェッショナルに徹したビジネスマンなのだろう。ということで、ぜひ一読をお勧めしたい一冊だ。