刑務所なう | One of 泡沫書評ブログ

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それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。


刑務所なう。/堀江 貴文
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ふざけたタイトルと表紙だが、版元はなんと文芸春秋社。内容は結構盛りだくさんであり、テキストの量はかなりのものだ。紙質を犠牲にしてのこの価格に抑えているのであろう。わたしは信者なので安いと感じたが、さて、一般にはどう思われるものだろうか。

ホリエモンはご存知のように一連の「ライブドア事件」により証券取引法違反の罪に問われ、約2年6ヶ月の実刑(!)を言い渡され昨年の6月に東京拘置所に収監された。現在は「飯が旨い」と評判の長野刑務所にいるらしいが、本書は東京から長野への移送を含めた、かれが収監されてからの約6ヶ月間の間につづった日記が収録されている。

おそらく本書を読んだホリエモン信者は皆、一様に同じことを考えるであろう。

「この人、刑務所にいても俺より時事に詳しい・・・」

このネット時代に、検閲のタイムラグのある塀の中で情報収集しているだけのホリエモンのほうが一歩先を行っているのだ。もちろんわたしが鈍すぎるというのもあるだろうが、それを差し引いてもやはりかれはスゴイと思う。塀の中でもワーカホリックなのである。まったくもって信じられない。

そしてこれが一番びっくりなのだが、とてもポジティブなのである。もちろん実際は凹んでいるのだろうし、読まれることを想定した日記なのだから多少はお化粧しているだろうが、それにしても愚痴っぽさがほとんどない。とにかく与えられた制約条件の中で楽しみを見つけ、直球勝負で何でもこなすホリエモンの姿には、あまりこういう言い方は好きではないが「勇気をもらった」気がする。人間、どこにいても心の持ちようで地獄にも天国にもなるといういい見本だろう。

2年後、禊を終えたホリエモンは一皮も二皮も向けて帰ってくるだろう。オリンパスの事件があったおかげで、よりいっそうホリエモンの正義は一部の人に強く印象付けられているのではないだろうか。また、ホリエモン自身も「刑に服した」という大義名分が立ち、完全に過去を清算した状態で新たなスタートを切ることができる。世間的にはまさにニュートラルな状態で再スタートを切ることができるだろう。といっても、かれ自身はおそらくもう表立って事業をするようなことはなく、例のロケット事業に注力するのだと思われるが、2006年以来、閉塞感の漂うこの国の産業界はオピニオンリーダーを求めている。それだけで終わるとはとても思えない。リクルートの江副さんよろしく、もう一度その類稀な才能を発揮して日本を引っ掻き回して欲しいとおもう。