サラ金トップセールスマン物語 | One of 泡沫書評ブログ
- サラ金トップセールスマン物語―新入社員実録日誌/笠虎 崇

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「つぶやきかさこ」とかいうタイトルでぐぐると著者が運営しているサイトが出てくる。著者はトラベルライタ(兼カメラマン)の方で、かつて新卒で入社した某消費者金融で不動産担保融資をやっていたらしい。本書はそのときの体験をベースにした体験記というか、まあ小説になるのだろう。
お話形式で手軽にすんなり金融知識が入ってくるのでオススメだ。と言っても、扱っている商品が「不動産担保融資」なので、少々マニアックな気がしなくもないが、いわゆる無担保ローンと違い、担保の確認方法などがわかって勉強になる。この手の読み物だと『ナニワ金融道』『ミナミの帝王』『闇金ウシジマくん』などがメジャーだろうが、わたしはこれらのいずれも読んだことがない(長いんだもん)。それに、そこまでグロテスクではないので、さらっと金融の世界を覗いてみるにはちょうど良いサイズと内容だと思う。
こうした金融に関する読み物の底流に流れるのは、「無知な者は永遠に搾取される」というテーゼだろう。複利を知らない者はアホだし、連帯保証人の判子を押すのも馬鹿だ。クレジットカードのリボ払いをするのも情弱だし、無担保で10万円貸してくれるのはなぜか考えたこともないのもダメだ。結局、借金というリアルな世界をいかにリアルに感じられるかが、この世界を生き抜くための秘訣なのだろう。もちろんわたし自身、実際の金銭消費貸借契約書や抵当権設定、委任状などは見たことがない金融弱者である。人のことは言えない。
ところで作中の「岡田先輩」が、「こうした死に金の融資ではなく、生きる投資をしてみたい」というようなことを語っているところは非常に興味深かった。確かに、連帯保証人を取ったり、担保を取ったり、本人確認をしたりする「借金を返さないことを前提とした融資」より、たとえばエンジェル投資家やシリコンバレーのように、「将来性にかけて金を融通する投資」のほうが、同じ「融資」といえども、やる立場を考えるとモチベーションに天と地の差があると思う。もちろん「金に色はついていない」のだが、結局、金を活かすも殺すもその人次第、ということだろう。
本書はもともと著者のホームページで『サラ金!』というタイトルで連載(?)されていた読み物を、出版用に再構成したものだそうだ。ちなみにホームページもとっくにリニューアルしていて、昔のよすがをみることはできない。ということでこれを読むには本を買うしかない。マーケットプレイスで安く手に入るので、興味をもたれた向きは探してみてください。

