児童ポルノ禁止法 | One of 泡沫書評ブログ

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解散間際の国会で、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下、児ポ法)をめぐって与野党の対立がにわかにクローズアップされている。ずっと棚上げになっていた同法の改正再審議が始まったからのようだが、サブカルチャーの間では非常に重要度の高い問題として注目されている。


児童ポルノ規制で修正協議 自公と民主

非常に単純化すると、


・世界的に見て児童ポルノに甘い日本の法律は世界各国から批判されている。(規制推進派および海外勢からは、G8ではロシアと日本だけ甘いのだと主張されている)


・それにより、我が国においても、児童のポルノ画像を提供するだけでなく、単に所持しているだけでも処罰の対象にできるように法改正が行われようとしており、与党自民党の葉梨議員はこれを「単純所持」すなわち「単に持っている」だけで処罰の対象にできるようにしようとしている。


・一方で野党民主党は、単純所持はあまりにも恣意的な運用が可能であり冤罪が広がる可能性があるとして、枝野議員などは反復的に売買を繰り返す際にのみ適用すべきという「取得罪」にすべきであるとして、対立している。


と、まあこういうかたちで、報道されている。

(で、結局、民主党もめんどくさくなってしまったのか、「所持は禁ずるが罰則規定はない」というよくわからない法案になってしまっていた。参考:<児童ポルノ禁止法>「単純所持」も禁止 改正案、与党と民主が合意



児童ポルノという、報道に容易にバイアスがかかることが予想される領域では、マスメディアの報道はまったく役に立たないことを我々はよく知っている。よって、ここに書いてあるような事実が仮に正しいとしても、そもそも児童ポルノ法って何だろう? というのは、残念ながら新聞を読んでいても今一つわかりにくいので、自分で調べていくしかない。「児童の定義は?」「ポルノの定義は?」というような基本的なことすら自分で調べないといけないのだから、インターネット時代は便利なような不便なような・・・。


児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

【主張】児童ポルノ 根絶へ所持規制は不可欠 -産経新聞


さて、いわゆるホンモノの児童ポルノについてはぜひ禁止してもらいたいし、こうした取り組みが、被害者の利益を第一に考えられたものであるならぜひとも優先して取り組むべきものであろう。しかし、どうも法案に賛意を表している議員の名前を見たり、法案の内容をナナメ読みしている限り、児童ポルノを防ごうという意識よりは、PTA的な自己満足のためにやっているとしか思えず、非常に不安を覚える。今回の審議再開も、もしかしたら児童ポルノそのものの再考というよりも、例の「レイプレイ」騒動に端を発する我が国の二次元カルチャーに対するけん制(あるいは自主規制の強要)が直接的なトリガーになっているような気もする。要するに、児童ポルノはぜんぜん関係なく、単に二次元カルチャーを狙い撃ちするために法案を通そうとしているのではないか? という疑念が捨てきれない。


というよりも、もう一歩妄想を進めると、もしかしたら日本の場合の児童ポルノ禁止の本来の目的はここにあり、日本のサブカルチャーのうち、いわゆる美少女系のエロ本や、ロリータ、凌辱系のエロゲーなどを抹殺するために便宜上児ポ法を利用しようとしているのではないか、とすら思える。法案の中にも「政府は、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等をいう。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとすること。」という記載があるが、実際、どの程度日本において児童ポルノによる被害があるのか、被害者に対する救済をどうするのか、あるいは新たな被害者を生まないようにするための方策などの議論はあまりなされていないようだ。本当に児童ポルノでの被害者救済を考えるなら、被害者の有無が重要なポイントになると思うのだが、そこがあまり議論されていない。二次元のキャラクタなど、完全に被害者不在の場合でも、ただ「キモイから」という理由だけで検挙できる余地をここまで大幅に残していいものか。


児童買春・児童ポルノ処罰法 -同人用語の基礎知識


どうも魔女狩りの疑念を捨てきれない。こうした魔女狩り法のもっともやっかいなのは、取り締まる法は社会正義の名の下にオールマイティな権力を行使でき、かつ正義感を充足しつつ悪者を懲らしめるという正義感を得ることができるという点だ。二次元のロリ絵に興奮するようなひとは、別にそれほど変な性癖だとは思わないが、大きな声で主張できるようなことでもあるまい。こうすると反論不能になって、ますます魔女狩りを推進させることになってしまう。私の大好きな格言に「地獄への道は善意で舗装されている」というのがある。まさに、地獄への道であろう。


コラム : 「『サンタフェ』を廃棄しろ」?~誤解を排し正確な児童ポルノ規制の議論を -自民党 葉梨康弘氏のHP

宮沢りえヘアヌードで混乱 児童ポルノ法、消化不良で改正 -J-CASTニュース

【マイリス1万で】児童ポルノ単純所持違法化 阻止【アニメも】 -ニコニコ動画




ところで、リンクをたどっていると、面白いサイトを見つけた。上記の児童ポルノ法案とは直接関係ないが、同じようなことが他の団体でも起きているようなので紹介したい。


子ども買春・子どもポルノ・人身売買をなくそう -日本ユニセフ


日本ユニセフの「子どもポルノ・日本の現状」というスライドをみてみるとよいだろう。

ポルノ根絶派がどういうスタイルで考えているのかがよくわかる。とにかく、あらゆるものが気に入らないらしい。いつのまにか子どもポルノの根絶が、アニメやゲームの規制にすり替わっているのにお気づきだろうか。「動機が正しければ、結果は問わない」。まさに原理主義者の考え方である。


こういう人たちの論理は、何も考えていない人に対していきなりマイクを突きつけ、「子どもポルノに反対ですか? 賛成ですか?」と問いかけるようなものだ。そんなこと言われて「賛成ですよ。大好きです」なんて言う人はそうそういないし、「それは現在法案が議論されている児童ポルノ法案のことですか? それとも日本ユニセフが発明した『子どもポルノ』のことについてですか? そもそも『子ども』の定義とは何歳から何歳まで・・・」などと語り始めるような人も例外だろう。とすると、多くの人は普段の生活でそういうことは考えていないのだから、なんとなく「そういうのには反対ですね」と答えるにきまっている。そうでなければおかしい。だいたい、規制すると欲望がなくなるという考えが気持ち悪い。欲望がなくならないのだから、被害者が居ないところで発散させたほうがよほど合理的だと思うんだが・・・。


海外でひどい人身売買を目撃したからと言って、日本人相手に意趣返しはないだろう。こういうことをするから、無駄な議論をしなくてはいけなくなり、本当に困っている被害者たちも困惑するはめになる。人権利権は本当に迷惑だ。