(…続き)
繁美 「そうボヤきなさんな。大岡山は多美ちゃんを見捨てやしないわよ」
山本 「(前菜を運んで来て)失礼します。こちら前菜のプレートになります」
多美 「(ハッとして)あっ…どうも…」
亜美 「新人さん?」
山本 「はい。アルバイトです。クリスマスシーズン限定の」
主人 「(奥から顔を出して)山本クンも多美ちゃんと同じ大学だよ。しかも陸上部だ」
多美 「ええ~先輩?(緊張して立ち上がり)あ…来年から入ります、渡辺多美です。どうぞよろしくお願いします」
山本 「あ…あぁ。こちらこそヨロシク…」
豊美姉・亜美姉・繁美姉が目配(めくば)せして笑ったのを気にする余裕なんかなかった。コレ…大
岡山の伝説が高校生活残り3か月にしてやって来たってこと…なの?
その日はウキウキで何を食べたのか忘れるほどだったけど、最後に磐井さんが恐縮しながらニコラ
イさんからの伝言があると伝えて呉れた。それによると財産相続の問題でホワイトリー家はエリーゼ
=シンプソンの行方を三年間追跡していたが、アルプスの北壁で滑落(かつらく)事故に遭(あ)い、2
年前に死亡していたことを確認したということだった。
イアン=ホワイトリー…その名の響きほど大岡山を象徴するものはない。恋人達の絶景スポットと
して全国紙に名前が知られるほどになる一方で、その影には魍魎(もうりょう)に身を落としてまで執拗
(しつよう)に妻を追った大岡山の主の姿があった…。
‘ご馳走さまでした’‘美味しかったです’‘来年もまたお待ち申し上げております’…
四姉妹と神戸亭の人達の挨拶が交わされる中…観覧車に照明が点く
多美 「(観覧車を見上げて)あれっ?亜美姉、今日は施設点検の日じゃなかった?」
亜美 「そうの筈(はず)だけど…おかしいわね」
多美 「まさか…」
豊美 「止めなさい。あたし達のお役目は終わったの。何がどうあろうとここは平和な公園に戻った…そう納得することが大事よ。イアンさんの為にもね…」
繁美 「(酔って)さすが、豊美姉、良いこと言う」
多美 「う…うん…そうだね…」
ゲートに背を向けて皆が坂を下り始めたけど…あたしは…どうしても…気になって…最後に観覧車
を見上げたんだ…。
ああ…ここからじゃ見える筈ないのに…天辺(てっぺん)のゴンドラに白いワイシャツが浮かんでい
る…それだけじゃない…赤いダウンジャケットを着た女性の姿も…?
あたしは痺(しび)れるような幸せが湧(わ)いてきたところで皆の後を追った。この話…いつか山
本先輩に話してみよう、そしたら信じて貰(もら)えるかな?…なぁんてあらぬ乙女の夢を見ながら
ね…。 エンディングテーマ曲 Minnie Riperton - Loving You (END) © Koto Yoshiharu2013
”愛と魔の在処にて”は今回を持ちまして終了です。お楽しみ頂けましたか?
さて明日、最終記事を載せます。是非、お立ち寄り下さいネ…お待ちしてます。
Torakin (^_^)/~
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