平成3年の8月に受験勉強を始めてから本試験は4回受験した(その前にも職場で義務的に受験したことはあるけれどこれは受験回数に入れていない)。この期間中、幸いにも大きな事件や事故や天変地異に巻き込まれることなく過ごすことができた。世間を騒がすような大きな事故でなくとも、本試験目前に怪我でもしようものなら大変なことになる。

 

最初の受験を前に知り合った青年は、3科目同時合格を目指していた。3科目とも非常に優秀な成績で、ランキングの常連だった。彼の話では、実はその前年に受験するはずだったのだという。一生懸命勉強して、自分の学習レベルをかなり上げることができて、受験校でも有望視されていたのだが、受験が近くなったある日、帰宅途中で交通事故にあう。意識が戻ったときはすでに本試験の日程は終了しており、彼がベッドから起き上がることができるまでにはその後何か月もかかった。だから2度目の勉強なんです、と明るく話してくれた青年は事故の翌年のチャレンジで見事に3科目同時合格を果たした。

 

本試験前日に右腕を骨折した人がいた。ものすごく頑張っていて、成績も優秀で、誰もが彼女なら大丈夫だと言っていたような人。試験前日に学校の自習室にいたときにそのニュースが飛び込んできた。受験していた科目が異なることもあり、親しい知り合いではなかったのだが、月例試験や模試などのランキングの常連だったので名前は知っていた。その人が右腕を骨折した状況は詳しくはわからなかったが、自宅で転んだとか階段で転んだとかいう情報が飛び交う。本試験では、試験時間2時間の大部分を計算や記述などに使わなければならないため、利き腕を自由に動かせなければ問題を解き終えることはとても難しい。それはつまり、さらに一年間受験勉強を続けることを余儀なくされるということを意味する。受験生にとっては他人事ではない。

 

右腕を骨折した彼女は痛みをこらえて受験会場には行ったのだという。しかし、その年は残念ながら合格できなかった。私だったらあきらめきれないと思うほどの悔しさを乗り越えて、翌年見事に合格されたと聞いた。

 

私も試験が近くなってきたときに自分のミスで指に怪我をしたことがある。自宅で調理をしていて右手の指を少し切ってしまった。私は文字は右手で書くし電卓も右手で操作する。しかし生来は左利きであり、ハサミ包丁カッターなどの刃物は左手で使う。左手で持った包丁で、右手の指を少しだけ切ってしまった。右手の人差し指に巻いた小さなリバテープを、そのときの担当講師は見逃さなかった。どうしたの。痛くない?字は書ける?もう本試験まで刃物は使わない方がいいよ。試験直前のアクシデントが合否に大きく影響することを実体験でご存じだったからなのだろう、こちらが驚くほどに心配してくださったのを覚えている。