4年間の苦行が終わって晴れて税理士試験に合格できたので、税理士会に登録することにした。登録するために提出しなければならない書類はたくさんある。
中でも苦労したのは詳細な職務履歴書。就職活動の時に提出する履歴書のほうがよほど簡単だった。私の場合は転職回数がかなり多い。所定の書式の職歴掲載欄では行数が足りないので、別紙に記入した方がいいのではないかと思ったのだが、念のために担当者に相談した結果別紙に書いて提出することは却下されたので、所定の用紙に印刷されている各行を横罫線で2-3行に分けて細かい文字で記入していくことになった。そのほかにも記入内容に間違いがあっては迷惑をかけてしまうので、下書き段階でこれでいいかどうかを税理士会事務局に何度も聞きに行った。もちろんその都度事前に電話で日時を決めてから訪問している。
最初に指摘されたのは一つの職場から次の職場に転職したときの空白期間。普通の転職なら空白期間はあって当たり前だと思うのだが、担当者は空白期間があるのはおかしいと言い出した。担当者によれば、自分は勤務期間中に何回も転勤があって勤務地が変わっているが、空白期間はなかったのだという。転職と転勤は全く性質が異なるものだから、転勤した場合には勤務期間に空白がないのは当たり前であり、転職で空白期間がないように準備できるのは理想的だが多くの場合無職の期間ができてしまうということを説明しても全然理解してもらえない。良く聞いてみたら彼は公務員を務めあげて税理士会に再就職したらしい。一般企業での転職経験がないのでわからなかったのかもしれない。しかし、税理士会に登録する人でも転職経験がある人は珍しくないと思うのだが、それだけ私の転職数が多くて珍しかったからなのだろうか、ちょっと不思議な気がした。
次には、職歴に空白期間があることは仕方がないとして、その無職無収入の期間も生活していかなければならないから、その間の生活資金をどう工面したのかを明確にせよという話になった。証明書などあるはずもないのだが、別途所定の用紙に離職の翌日何年何月何日から再就職の前日何年何月何日までの間は親元にいたので生活費は親が負担していた、配偶者や兄弟などの親族の収入で賄っていた、あるいは預貯金を切り崩していた、という説明を空白期間ごとに記載せよというのだ。私の場合それは一回きりではないので何度も出てくるのだが、その都度詳細に書くようにと言う。かなり面倒なので、空白期間が一日だったら書くべきかと聞くと一日なら不要だという返事になる。そこで、では二日ならでは三日なら一週間ならとだんだん伸ばしながら記入しなくてもいい最短の空白期間は何日間にするのかを明確にしてもらうことにした。たぶんこういうことに関して明文規定はないのではないかと思ったのだが、本当に規定がないのかどうかはよくわからない。
困ったのは修正箇所を小出しにしか指示してもらえなかったこと。一つの項目で修正点を指摘したらその日はそこで終わり。次にこの修正でいいのかどうかを確かめに行ったら改めて別の修正箇所を指摘される。一度で済ませてもらえないかとやんわりとお願いしたことはあるのだが、それでも次回にはまた別の個所を指摘される。私の種類作成能力がかなり低かったのか、他の人も同じように何度も訂正に出向いていたのかどうかは知らない。何度も何度も税理士会事務局に通うのはあまり楽しい時間ではなかった。担当者にとっても大変なご苦労だったことだろう。そのたびにおいしいお茶を淹れてくださった女性職員にもとてもお世話になってしまった。
税理士会に登録すると言っても、実際には税理士会にだけ登録するのではない。税理士協同組合や税理士政治連盟などの関連団体にも同時に登録することになる。それぞれの団体について入会金(一度きりの支払いで返金されることはない)と年会費が生じる。税理士会に登録しなければ税理士と名乗って税理士業務を行うことは法律上禁止されているのだが、関連団体のうちには加入を義務付けられていないものもある。最初の登録手続きの際にはそういうこと(加入義務がない団体もあること)は全く知らされることなくすべてに加入するものとして入会金や年会費の請求があって、最初は請求通りに支払ってその後も年会費を払い続けた。登録後何年か経ってある先輩から教えられたので、加入義務がない団体については途中から退会手続きをした(入会金やすでに支払った会費は返還されることはない)。
地域によって対応が異なるが、税理士会館を保有している税理士会では税理士会館の維持のために会館自体を法人化してその株式を強制的に税理士一人に一株ずつ所有させる場合がある。この株式は後に税理士会を退会したときに最初に購入した金額と同額が返還されるが、保有期間中に配当が行われることはなく、他の人に譲渡することも許されない。税理士会館がない税理士会では会館建設のための協力金という形で税理士会費に上乗せして徴収している地域もあると聞いている。
合格発表が平成7年12月。それからすぐに登録手続きを始めたが、書類提出から実際に登録されるまでには一か月以上かかると説明された。平成8年2月初旬に登録完了の通知書が届き、税理士会館で入会式が行われた。このときに入会金など最初に必要な一時金を支払って税理士バッジを受け取った。バッジには通し番号が刻印されていて、他人のものは使用できないし、退会時には返還しなければならない。と言っても襟につけた税理士バッジの裏の刻印を見せてくれなんて言い出す人はいないと思う。
