税理士試験は全国主要都市で実施されている。私の場合には地方だが政令指定都市でもある県庁所在地に住んでいて、試験会場も受験申し込みを受け付ける国税局もさほど長時間かからずに行くことができる場所になる。今住んでいる都市は自分自身が生まれ育った街ではなく、親元(当時は社宅住まい)から離れたときにできるだけ生活などに便利な場所ということで考えて選んだ街である。

 

私が受験していた当時、この地域での税理士試験は某私立大学の複数あるキャンパスの一つで実施されていた。その建物に全く冷暖房設備がなかったのかどうかは知らないが、真夏に実施される試験なのに、当日冷房が入らないことは受験生によく知られていた。暖房完備、という人もいた。だから多くの受験生はとてもラフなスタイルで試験に臨む。Tシャツ、短パン、サンダル履き。きっちりメイクしていっても汗で流れてしまうのでノーメイク。首にかけるタオルは必須。鉢巻をしている人も見かけた。大教室の中は人でいっぱいでムンムンしていて、一応窓は開放してあるので、窓際の席になったらラッキー。ただし、雨が降ったらもう駄目。雨が振り込まないように窓を閉めると室内は蒸し風呂になる。受験会場として決して良好な環境ではない。

 

国税庁で配布される税理士試験の解説書には会場となる都市名しか記載されていない。会場となるのがどこなのかが一般の受験生にわかるのは受験の申し込みをしたとき。郵送でなく手渡しで受付に申し込みに行くと、受験票がその場で交付される。受験票の用紙には自分の氏名や受験科目を自分で記載して持っていくのだが、申し込んだその場で受験番号と受験会場名をゴム印で押印して返される。大体受験会場は一定しているので、受験校では各地の試験会場についての情報も収集している。

 

新幹線で一時間以上離れた地域で実施される受験会場は冷房が入っているという情報があって、それだけのためにわざわざ前泊してまで冷房がある会場を選ぶ人もいた。中には思い切って東京や大阪など遠く離れた会場を選ぶ人もいた。

 

その頃の受験校の講師をしている人の多くは、税理士試験にすべて合格している人ではない。多くの場合、受験勉強中に成績が良かった生徒を、講師として採用する。例えば簿記論に合格した人が、簿記論を教えながら他の科目の受験を続け、最終的に官報合格できたら受験校を退職して税理士事務所に移る。そこで最低年間の実務経験を経て初めて税理士に登録できることになる。だから講師の多くは若い人で税理士試験の受験生だということになる。試験会場で自分が教えている科目でないとはいえ顔見知りの受験生に会うことを避けるために遠方の会場で受験する講師は少なくない。

 

長く続いていたその地域の受験会場が変更になったのは平成7年の夏から。それまでの会場と異なり市街地から離れている別な私立大学。バスで行くルートとJRで行くルートがあって、JRで来た人は駅から会場の建物までがとても遠かったと嘆いていた。大学のキャンパスは広くて複数の建物が立ち並んでいることが多い。どの建物で試験が行われるのか、前日に下見に行くことができるなら行った方がいい。

 

その会場に変わって一番よくなったのは冷房が入ったこと。正直言って寒いくらい強く入っていた。会場が変更になったときに、今度の会場では冷房が入るかもしれないといううわさはあった。それまで暑さ対策だけを考えていたのだが、大きな建物の冷房は効きすぎて寒いことが多い。会場につくまでの屋外はとても暑いのだが、室内の冷房対策が必要になる。長袖の夏用パーカーを用意していったのだがそれでも寒い。受験生は口々に寒いと訴えていた。

 

試験会場で確認しておいた方がいいのは自分が入るべき建物と教室の位置、そこから近いトイレを複数個所。短い休憩時間中にトイレで長く待つことになると大変だ。試験中にトイレに行くことを許可している国家試験もあるようだが、税理士試験では2時間の試験時間中に会場から外に出ることができるのは最初の一時間が経過してからで、いったん出たら二度と戻ることは許されない。

 

昼食時間にかかるときには食事そのものの確保、あるいは食べる場所の確保が必要になる。自動販売機や売店、コンビニなど飲料水を確保した方がいいこともある。飲食店で食事をするしかない場合には、休憩時間は短く受験生の多くが利用することを考えておかないと待ち時間でロスしかねないので注意した方がいい。弁当を購入したいなら朝のうちに購入しないと昼どきにはレジで込み合う。

 

受験当日に絶対に絶対に絶対に忘れてはいけないものは受験票。ないと受験できない。忘れると一年後に改めて受験するしかない。絶対に絶対に絶対に忘れてはいけない。

 

必需品は電卓。壊れてしまう事故があるといけないので私は2台持って行っていた。筆記具。税理士試験の場合には鉛筆ではなくボールペンや万年筆など消えない筆記具。私の受験のころには考えたことがないが、消えるボールペンは多分まずいと思う。試験問題にラインを引いたり考えたりするためにマーカーを持っていくという人もいた。定規。いろいろ文字や計算式などを書いた大きなものは多分許可されないと思うのでシンプルなもの。残り時間を確認するためのタイマー。腕時計。ケータイやスマホを時間中に使用することは許可されていないと思う。