本試験一年めに向けての勉強を開始したころは、税理士事務所ではなくて一般の中小企業の経理を担当していた。それまでには企業全体の事務担当者が私一人で経理も給与計算も社会保険事務も電話受付もお茶くみもお掃除も全部担当みたいな仕事をしてきたことはあったのだが、そこでは経理以外の事務的な作業は別の担当者がいたので現金管理を含む経理業務に比較的専念できた。ただ、ブラックっぽかったこともある。
定時はいわゆる9時5時だったのだが、入社してからに言われたのが夕方5時から6時までの間、事務担当の女子が交代で電話当番をするという話。そんなことは全く聞かされていなかったのだけれど、私一人が拒否したら他の人の担当回数が増えるだけ。仕方なくなし崩しに受け入れざるを得ない。タイムカードがあって出退勤ごとに打刻しているのだが、毎月の締め日になるとB4の用紙にその月の日々の出退勤時刻を記入させられる。で、正直な退社時刻を記入したらすぐに総務担当から呼ばれる。退社時刻をすべて定時に書き直して。そういう決まりだから、とのこと。何のためのタイムカードなんだろう。ま、そいいう会社は珍しくはないのだけれど。
学校に行くようになって、毎月の月例試験の日に有給休暇をとろうとしたときは少しごたごたした。有給休暇取得の理由を聞かれ、所用で、で済ませようとしたら先輩女子が正当な理由がなければだめだと言いだす。有給休暇の利用に際して正当な理由を求めるのは労働法違反。決算期など繁忙期で業務の遂行に支障が出る場合には企業は有給休暇の取得期日を変更するように労働者に求めることはできるけれど、理由によって認めないことはできない。実際には法律通りにはいかなくて、理由によって却下されても文句が言えない人は多い。
その都度総務担当先輩女子から嫌味を言われながらもその後本試験までの一年間で法定有給休暇をきっちり100パーセント消化した。先輩女子と事務部門の部長が怒り心頭になっていることはわかっていた。事務部門のほかの人たちはろくに有給休暇を取っていない状態だったのだから。営業事務などのほかの事務担当女子からは文句や苦情を言われたことはなくて仲良く仕事をしていたのだけれど、お局様ににらまれたんじゃしょうがない。転職の潮時かもしれない。そんな頃に、以前の勤務先の関係で知り合っていた人から連絡が入る。知り合いで求人している税理士事務所がある。年齢などでだめかもしれないが、とりあえず行ってみよう。行かないことにはめぐり逢いはないのだから。
そうして面接に行った先ではなくてさらに紹介していただいた税理士事務所に就職することになったのは秋。すぐに元の勤務先に退職を申し出て、その後一か月間出勤し、残った有給休暇をすべて消化してから退職することになる。最後の数週間はまるまるお休みである。今だから言えるけれど実際には有給消化に入った時点で新しい勤務先に出勤することが決まっていた。本当は勤務先が重複することになるので正しいことではないのだろう。新しい勤務先での社会保険加入は採用後一か月経過してからということになっていたので(これもルール違反だが実施している中小企業は多い)社会保険にダブって加入するような事態は回避できた。新しい勤務先は小規模で穏やかな雰囲気で、お局女子がいない。それまでに税理士試験を受験している職員はいなかったようだった。
自分としては受験中に転職するつもりがなかったのでちょっと困ったのだけれど、とにかく受験のための(というより合格のための)環境が一番大事だったので仕方なかったともいえる。転職したのは秋。結果発表があるのは12月。その年は24日じゃなかったかな?合格できたとは全く思っていなかったのだけれど、結果発表が近づくにつれてナーバスになっていく自分がいた。
