受験勉強一年目は財務諸表論については講座を受講し、財務諸表論と計算問題の範囲がほとんど重なる簿記論については学校で販売している問題集を自学自習することにした。会計科目は計算については範囲がほぼ重なるのでこの二科目を同時に勉強して受験する人は多いらしい。事前に学校での説明を受けたときにそう教えられた。ただ、二科目を受講するとなるとそれぞれ週に二回(二日)なので合わせると週4回(4日)になり、しばしば残業になる業務体系を考えるときつい。それで、授業を受けるのは一科目だけということにしたのだった。
簿記の勉強は、昭和53年に日商(日本商工会議所主催)簿記検定の3級と2級を受験して合格したときに一応したことはある。しかし、そのときは一通り市販の入門書を読んで興味を持ち、市販されている日商簿記検定の過去問題集を(入手できるものは)全部解いていっただけで、いわゆる学校で勉強したことはない。税理士試験の簿記論は、日商簿記の3級や2級のようなわけにはいかないだろうと思う。受験校で販売している(受験校によっては一般書店でも販売しているものもあるらしい)練習問題集をひたすら解いていく。
試験勉強で有効な勉強法はいろいろあるだろうが、私はひたすら繰り返していた。同じ問題集を何度も繰り返し解きなおす。問題も解答も解き方の道筋も覚えてしまう。かるた(百人一首)の達人は上の句の出だしの数文字で下の句がすぐに浮かばなければならないと聞いたが、問題の書き出しを少し読んだら、この問題は何を問うていてどういう風に解いたらいいのかが浮かぶようになるまで繰り返し問題を解いていく。地道で面倒そうに見える方法かもしれないが、よほどの天才でもない限り、反復練習しなければそう簡単にレベルアップはできないと思う。
簿記論の場合は計算問題主体になるので、計算の速さも要求される。税理士試験では、一定の条件はあるが電卓やそろばんの使用が認められている。電卓の大きさとかプリント機能とか演算機能が問題になるようだ。私は使いやすい電卓を常時二台使っていた。一台が壊れてしまったときの予備でもあり、計算結果を一台の電卓にキープしたままで別の計算に移ることもできる。電卓のメモリー機能を使えば複数の計算結果を紙に書き写すことなく(写し間違いが生じていない状態で)キープできる。電卓メーカーや電卓の機種によってファンクションキーの位置が異なっていたり、テンキーの数字の配列は共通していてもほんのわずかにキー同士の間隔がずれると打ち間違いが生じたりする。手元を見ることなくスラスラ打ちやすい状態になった電卓が複数あるとバックアップになって心強い。
解答用紙には右手で書き込む人が多く、右手で電卓を使う人も多い。右利きが多いのでそうなるのだろう。ペンで記入し、電卓で計算する。同じ右手だとその都度ペンを握りなおすことが多い。そこで、ペンを持ち変えるロスタイムをなくすために左手で電卓を打つことを推奨する人もいた。私は基本的には左利きなのだが、文字を書くのも電卓を打つのも右手でしかできない。少しの期間だけ左手で電卓を打ってみたが、どうしても合わなくて打ち間違いが多くなってしまったので電卓の左手打ちはやめた。電卓を左打ちに変えて計算スピードが上がったという人もいたので、どちらがいいかではなくてどちらが自分に合うかどうかなのだろう。
私の受験当時は本試験の出題は大体3問で、第一問と第二問は25点ずつの配点の個別問題。第三問が50点の総合問題。それぞれの問題を解いていく中で解答用紙に要求されている解答個所は単純に25か所とか50か所ではない。どの解答欄が配点対象なのか、各個別の配点が何点なのか、正解は何なのか、については国税庁は発表しない。近頃は結果発表時期に出題趣旨や大まかな考え方などがHPなどに掲載されるようになっているようだが、模範解答や採点箇所・配点は示されていないと聞く。
制限時間120分の中で効率的に解いていかなければならなくて、問題を読んだ後にどうやって解いていこうかなと考える時間はほとんどない。問題文を読みながら、それが過去問のどれかに類似していないか、あるいは問題集の中のどれかに類似していないかを見分けて、勉強して覚えている解答手順で解いていく。ためらう時間はない。ほとんど瞬発力の勝負みたいなものだ。
日商簿記の1級に合格した人から聞いたのだが、日商簿記の指導講師によると日商簿記の1級のレベルは税理士の簿記論より上もしくはほぼ同じだということだった。私自身は日商簿記1級をきちんと勉強していないのでそのレベルは実感できないが、試験としてかなりの難関であることは間違いない。一方で、日商簿記1級に合格してすぐに税理士試験の簿記論講座に挑戦した知人によれば、両者の大きな違いは一つにはスピード感にあるのだという。日商簿記1級に大変優秀な成績で合格した彼は簿記論講座で模試を受けて、簿記なのに生まれて初めて時間終了までに解き終わらないという屈辱を味わったのだと言っていた。もちろん、1級合格後すぐに簿記論にチャレンジして相当優秀な成績を収めている人も知っている。出題感覚との相性なのか採点項目との相性なのか、その辺はよくわからない。
税理士試験本試験は真夏に三日間実施される。簿記論は初日の一時間目。昼食時間としての休憩時間をはさんで二時間目が財務諸表論。これらの会計科目は必修科目であり会、会計目から受験を始める人が多いためだろう、他の受験科目に比べて圧倒的に受験人数が多い。二日目は法人税法、所得税法、相続税法の国税三法と言われる税法の王道科目が並ぶ。三日目に実施される税法科目(固定資産税法など)は受験人口が少なく地方での受験会場はまばらになるらしい(三日目に会場に行ったことがない)。
どんなに勉強しても繰り返しても合格できる自信はない。試験が近くなると決まって試験会場に間に合わないとか受験票を忘れたとかの嫌な夢ばかり見る。悪夢が正夢にならないように、なお一層繰り返して勉強するしかない。
