2011.5.27
開頭手術当日。朝7時に大学病院に着くように自宅を出発。普段なら自分で車を運転していくのだが、長時間になること、帰りには(病院の要求通りなら一晩泊まっているので)疲れていることが予想されるので、この日は車は運転しない。朝は逆方向とはいえ通勤ラッシュが始まる時間帯。バスではなくタクシーで行く。
タクシーの運転手さんに行き先と経路を指示する。運転手さんは経路の指示を無視して大通りからそれていく。「こちらが近道なんですよ」「でもこの道、バスの経路ですよね。この先、一車線だけの道になって、かなり遠回りしますよね」「あ、知っていましたか」「元の大通りに戻ってください」「しかし」こちらの要求を無視して運転手さんが行きたい道を行く。これだからタクシーは好きじゃない。裏道脇道と言って、結局は遠回りで余計な時間と値段がかかることが多い。女だからなめているのかな。帰りにはこの会社のタクシーには乗るまい、それしかできない抵抗。目的地を言わないで経路の指示だけすればよかったのかも。
入院病棟の病室へ。入院の担当医が来てくださっていた。昨夜から下剤をかけているのだが、念のため、手術前の最後のお手洗いに行く。8.:25車椅子で手術室に入る。連れ合い(患者)、担当医(手術にも入る)、看護師さんたちは手術室ゾーンの入口から先に入っていくが、私は入れない。手術は正味20時間の予定。実際に面会できるのは24時間以上先。
連れ合いの入院していた病室に戻り、病室移動に備えて荷物をまとめる。最終的には大部屋に戻るのだが、手術直後はSICU(外科手術後のICU)に数日、同じ病棟の個室(ナースステーション近く)、と順次「観察」度合いが低くなる方向で移動すると聞いていた。
10時ころ、病棟の師長さんに揺り起こされる。いつの間にか、連れ合いの病室のベッドで転寝していたのだった。「ここは男性の病室なので、女性が寝ていては困るんです」確信犯ではなかったのだが、迷惑をかけてしまった。反省。少し病室を離れて歩き回って、再び病室に戻るとシーツなどがきちんと交換されていて、次の入院患者さんのための準備ができていた。
連れ合いのための荷物をロッカーに預け、手術室の前に行ってみる。中の様子がわかるはずもない。病院内の案内図には、手術室ゾーンの表示はあるが、医師や患者でないとは入れない大きなドアから先の詳細は記されていない。後で連れ合いに聞いたのだが、中は大小いくつもの手術室に分かれていて、そのうち一番大きい手術室を使ったという。手術室まで車椅子で進み、手術用のベッドに横たわる。手術室に入る前に下着と手術衣だけの状態になっているので、冷たいのかなと思ったら、案外暖かかったそうだ。今から麻酔をしますからね、と医師に声をかけられて、その後目が覚めたときには手術が完了したと聞かされたのだと。
15時、飼い猫のピースケ君のお世話のため、いったん帰宅する。病院にその旨を申し出たらひどく嫌がられた。何かあったときには困るので。承諾したふりをして、そっと病院から脱出。姉から電話が入り、我が家にやってくる。ピースケ君の食事とトイレ掃除。しばし姉妹の会話。その後姉に病院まで送ってもらう。弟からも電話が入る。今のところ何もトラブルはないみたい。手術中ずっと待機するように病院からは要求されていたのだが、ピースケ君のために数回帰宅して様子を見、世話をすることは連れ合いからの強い希望なのだった。
その後20時まで、連れ合いが手術前にいた入院病室で待機。その日はそのベッドに新しく入院する方はいなかった。もちろん、迷惑はかけられないのでベッドには寝ない。同じ病室の入院患者さんたちと会話。
面会時間は20時までと決まっているので、20時には病室から退出して、再び自宅に帰る。地下鉄利用。この方が快適で、早い。安い。ピースケ君の食事、トイレ掃除、ピースケ君と会話。この日は一切仕事をしない予定だったが、とりあえずメールなど確認。着替えて、三度病院へ。これからは手術終了まで帰宅できない。救急出入り口以外の出入り口は閉鎖され、出入りは警備員さんに断らなければならない。安全のための対策らしい。不特定多数が出入りする場所ならではなのだろう。しかし、病院は完全に寝てしまうことがない。
ナースステーションからの要請で、病棟入り口に近いロビーで待機する。ソファはいくつか配置されているのだが、158センチしかない私でも、足を延ばして横たわることができない。今はどうなのだか知らないが、そのときには、こうした長時間の手術を待つ家族のための専用の待機室は存在しなかった。自費での特別個室を取っていれば、そこで待機できたようだ。
とリあえず横になっているうちに少し寝ていたらしく、揺り起こされた。23時。入院の主治医が、手術室から出てきていた。「がん化した嗅神経は、この通り、除去しました」医師が手に持っていたのは、容器に入った嗅神経。なんだか、小さい。これが、諸悪の根源というか、連れ合いを苦しめたもの。「視神経は、大丈夫です。この手術で、視力を失うことはありません。がん細胞も全部取り除けましたよ」良かった、本当に良かった。後から考えたら、嗅神経の写真を撮っておけばよかった。その後は病理標本になると聞いた。
