恐竜を含む古代の生物は研究が進むにつれ、新しい事実が発見、証明されています。その度に復元図や生活していた環境がそれまでと変わっていき、当初とはまるで違うことになっていることもあります。

 ゾイドは1983年からシリーズとしてスタートしましたが、当時登場した恐竜型ゾイドの姿、運用する地形、特徴は今の恐竜の研究では誤りだとされるものが複数存在します。それは当時では正しい学説だったため、恐竜の研究の変化がゾイドにも色濃く表れているのがとても面白く思いました。

 今回から調べていくつか記事を書いていこうと思います。

 

 

 第1回目は、こういった記事を書こうと思ったきっかけ、スピノサウルスです。

 

 現在は結構名の知れた恐竜ですが、スピノサウルスが有名になったのは割と最近です。

 スピノサウルスはティラノサウルス以上に巨大な肉食恐竜で、ワニのような形をした細長い頭部、背中に張り出した巨大な突起を持ちます。生息域や生活については議論が続いており、魚を食べていたとされる説は有力視されています。しかし最近では深い川で長い時間を過ごしていたとされる説もあれば、従来の通り水中にそれほど長い間はいなかったとする説も根強かったそうです。

 そんな中、先日スピノサウルスの尾の化石が発見され、イモリのように巨大な尾ひれになっていたという可能性が浮上したそうです。尾の特徴から、泳ぐのが得意で水中で生活していた可能性が非常に高くなったそうです。

 

 全長がおおよそ15~17m。ティラノサウルスが11~13mとされているのを思えばかなり大きいです。しかし、スピノサウルスの方が首なども含め細身だったようです。

 そのため体重に関しても、ティラノサウルスより軽い4~6tとする説。対照的に水中生活に適応するため骨密度が高かったため、ティラノサウルスより重く21t程まであったとする説もあります。

 背びれの形も当初は半円形だったのが、逆W字型に定説が変わっています。

 

 知名度が大きく上がったきっかけが、2001年公開の「ジュラシックパーク3」でした。ティラノサウルス以上の戦闘力を持った肉食恐竜として登場し、ティラノサウルスとの格闘が描写されています。しかしこの描写は映画公開当時から賛否が分かれ、公式のパンフレットにも「劇中のような生態は疑問視されている」と注意書きがされていたようです。

 

 スピノサウルスをモチーフに商品化されたゾイドは、

 

・スピノサパー

・ダークスパイナー

・ジェノスピノ

 

の3種です。

 ゾイドジェネレイションズの「バイオスピノ」は商品化されていないので、例外とさせて頂きます。

 3体を並べてみます。

 随分形状が違うというか、三者三様という印象です。

 

 スピノサパーは共和国の戦闘工兵ゾイドとして開発されました。直立2足歩行に近いスタイル、もっというなら斜めを向いているのでゴッドカイザー、もしくはアロザウラーに近いですかね。(入手時から片方チェーンソー欠品してました

 僕は、当初スピノサウルス型と認識できず、名前とバトルストーリーの機体紹介で理解しました。

 理由を考えたのですが、1つ目が頭部の形状だったように思えます。

 スピノサウルスはワニに似た形の頭部を持っていて、魚食性の肉食恐竜という変わり者だとされています。

 スピノサパーの頭部はワニっぽさ、というか細長さはあまり感じられません。

 2つ目に、既に当時は前傾2足歩行がトレンドであった恐竜の姿勢で、旧来のような直立に近い2足歩行スタイルも違和感があったのだと思います。

 3つ目が、ノーマルでは背中の突起があまり目立たないような気もするので、現在こうして眺めて見ても、あまりスピノサウルスには見えないです。

 

 ダークスパイナーはガイロス帝国、正確にはその内の旧ゼネバス派によって開発されました。そのためガイロス帝国には配備されていません。戦闘で初めて姿を見せたのは鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)の中央大陸進軍時、ZAC2101年12月です。当初はディメトロドンと同じような運用を目的とした電子戦用ゾイドとして開発されていました。しかし高いコア出力からバーサークフューラーの開発データも取り入れ、電子線ゾイドでかつ戦闘ゾイドとしても運用できるよう仕様変更されました。

 

 このゾイドはワニのような形の細長い頭部、ティラノサウルス型のバーサークフューラー並みの大きさのボディ、背中に大きく張り出した突起は帆として再現されています。後肢は長く、水中での活動は基本的には出来ません。恐らくこの頃の研究では普段は陸上、川沿いで生活し、食事の際に川に入っていたのでしょうか。

 

 この背中の帆であるジャミングブレードは登場当時、あまりにも強すぎて衝撃でした。対抗手段を持たない共和国は為す術なく、3年間ダークスパイナーの無敵時代を作り上げたというのは、メカ生体ゾイド期のデスザウラーに匹敵するほどの影響力だったと思います。時期の影響か性能がチート過ぎて面白くなくなると判断されたのか、PSゲームの「ZOIDS2 ヘリック共和国VSガイロス帝国」にはジャミングブレードを使用することはできなかったのを思い出します。

 

 キットとしてはジャミングブレード展開時に形状が変化し、電動でアクションし続けるのは後の「ゾイドワイルド」のワイルドブラストのようです。

 カラーリングは今見ても中々のインパクトのある蛍光っぽいグリーン。当初は好きではない色でしたが、今ではダークスパイナーを運用するにあたってはいい存在感を発揮していたように思えます。ダークスパイナーのジャミングウェーブは有効範囲に入ったが最後なので、自らの存在をアピールするのにあのやたら目立つカラーリングは有効だったはず。逆に遠距離からも存在がわかりやすく狙撃されやすいのはあるでしょう。しかし当時共和国にそれができたのは、主にケーニッヒウルフのオプション兵装であるデュアルスナイパーライフル程度だったので、特に問題なかったとも思います。

 

 ゾイドワイルドZEROで登場したのがジェノスピノ。帝国軍所属のスピノサウルス種のゾイドで、同じモチーフの前2種とは随分違う雰囲気のゾイドとなっています。

 硫酸の海で多大な労力を持って引き上げられ、それでも溶解していない強靭なボディ。そしてジェノスピノの武装である火炎放射器の温度は 5000℃。この温度は太陽の表面温度並み、さらに初代アニメのデススティンガーヒルツ仕様のコアに近い温度(こっちは6000℃)です。硫酸に耐えられる強度はこれくらいは必要ということかもしれません。

 姿勢は深い前傾2足歩行となっていて、これは短足に伴う説の一つである「スピノサウルスは4足歩行、ナックルウォークしていた」という説に近いかと思います、更に前肢も地面につくすれすれまで低くデザインされており、4足歩行にも見えます。この姿勢は兵器解放(マシンブラスト)時のバランスの関係もあるかもしれません。

 マシンブラスト時は背中の帆が展開されチェーンソーになります。このためか、帆は半円形になっていて、逆Wの形状にはなっていません。

 また、前の2機種とは違い水中でも活動できるようになっており、販売された2019年時の学説を反映させているように思います。

 

 ティラノサウルス種のオメガレックスと大きさもほぼ同じ。しかし、ダークスパイナー当時とは変わっている個所があります。

 

 まず後肢が短いです。デスレックス・オメガレックスといったティラノサウルス種と比べると

 左がオメガレックス、右がジェノピノ

 この通り。

 

 同じ時期に販売されたティラノサウルス型のバーサークフューラーとダークスパイナーの後肢の長さが、

 ダークスパイナーの方が長いですね。2000~2003年くらいの研究では、ティラノより長いかは別として後肢は長いのがトレンドだったようです。

 

 また、ダークスパイナーの姿勢と比べると一目瞭然。

 最近の研究でスピノサウルスは、乱暴な言い方をすると胴長短足だったとされています。後肢が短く貧弱で、陸上で活動できてもかなりノロマだったとされています。

 

 スピノサウルス型ゾイドについて記事を書いていると、先代のスピノ型二種は何かしらジェノスピノと似たような点があると思いました。

 スピノサパーとジェノスピノは背中の帆がチェーンソーとして再現されていること、そして実際のサイズはジェノスピノのが13.5m、スピノサパーは11.5mと大差ない大きさです。

 余談ですが、この2種はゾイドの方が小さい(化石標本の大きさは推定15~17m)、ある意味珍しいと言えます


 

 ダークスパイナーとジェノスピノに共通点は?となりますが、ジャミングウェーブ展開時とマシンブラストを比べると

 

 結構似てると思います。しかもジャミングウェーブ使用時は4足歩行に近くなり、さらに前傾姿勢になるためこの点でも似通ってる気がします。これを知ったときは、既出があったとしても滅茶滅茶興奮しました。

 開発していた2000年ごろから4足歩行の可能性を示唆していたのかと思うくらいです。

 

 スピノサウルスについて、もうちょっと話をします。

 最初にスピノサウルスの化石が見つかったのは、1912~15年頃のドイツの古生物学者、エルンスト・シュトローマー達によって、エジプトで発見されたそうです。その最初の化石はドイツ・ミュンヘンの博物館で保管されていました。

 しかしその化石は第2次世界大戦の空爆で博物館ごと焼失。その後長きに渡って新しい化石がほとんど見つからなかったそうです。

 2013年、新しいスピノサウルスの化石が多く見つかり、大幅に研究が進みました。この後から、スピノサウルス水棲説、それに伴い後肢が短いなどの説が進んでいきます。

 新しい化石が見つかるまでの間、スピノサウルスの姿は近縁種とされるスコミムスなどを参考に考えられていたそうです。

 有名な恐竜のはずなのに、ここにきて一気に新しい発見が次々出てくるのは、最初に見つかった化石が焼失してから約70年間、スピノサウルスの研究は標本が無いため中々進まず、「謎の恐竜」だったからのようです。

 

 ここまで書きましたが、中々自分でも楽しく書けました。まだいくつか書いていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

 それでは。