健人side
ありがたい事に仕事に恵まれ、映画の海外ロケで帰国してすぐに、ドラマの撮影が入ってきた。
今回は事務所の大先輩である東山さんの主演ドラマ。
俺は後輩の刑事役で出演させて頂く事になり、朝から撮影スタジオにいた。
控え室で衣装に着替えていたら、スマホに着信が
相手は松島
電話に出ると
「あっ、健人くん
勝利がね、お腹が痛いって連絡くれて今、風磨くんが自宅に向かってくれてるの。
私、まだ赤ちゃんいるから動けないんだけど、健人くん撮影だから無理よね?」
俺はとうとうこの日が来た!と思って、本当は今すぐに向かいたいけど…
大先輩のドラマの撮影を放り投げては行けないので、松島にはよろしくとだけ告げて電話を切った。
スタッフから呼ばれ、スタジオ入りしワンカット撮影を済ませ、モニターをチェックしていたら背後に東山さんが…‼️
突然
「えっと、監督、スタッフの皆様お忙しい中大変恐縮ですが、本日ある男に大変おめでたい出来事がありまして、スケジュールの調整等ありますが本日の撮影は明日に延期とさせて頂き、代わりに僕の撮影を先にやって頂く事は可能でしょうか?」
と、東山さんが提案してきたのだから、俺も監督もスタッフも一瞬静まり返った
東山さんが俺に近くと
「菊池から連絡もらった。今すぐ行けっ!」と
俺は
「皆さんすみません!さっき連絡があり、今日俺に子供が産まれます。この穴埋めはきちんとしますので!」
そう叫ぶとマネージャーが
「衣装は買い取ります!俺の車で向かいましょう」と、鍵を手に2人で駆け出した。
後ろから
「転ぶなよ~」と笑い声と拍手が聴こえる
ココロの中で感謝しつつ、俺の気持ちはもう佐藤の待つ病院に向いていた
病院に着くと処置室のベッドで時折やってくる陣痛に顔を顰める佐藤がいた。
傍らには俺の相棒である菊池が
「アレ?お前来れたの?」って
平然を装って真顔で言ってきたから、肩を思いっきり叩いてニヤッと笑って見せた。
肩を抑えながら
「佐藤が待ってる」と俺を促す
ベッドの脇に座って、佐藤の細く真っ白な手を握る
苦痛に歪み、閉じたままの目をうっすら開け
「健人…くん、来てくれたの?
私、ずっと不安だったの1人で…寂しかったんだからね…」とワッと泣き出した
ほんと、うちのプリンセス…いや、クィーンは泣き虫だ
初産ということもあり、苦しむ事12時間以上
あと少しで12時の鐘が鳴る数分前に、この世で見た事のない美しいプリンセスが可愛い産声をあげ生まれてきた。
「中島ベビー」と書かれたベッドに真っ白な産着を着た俺たちのプリンセスをガラス越しに見ながら、疲れて眠りについた
クィーンに「ありがとう」と優しくKissをした
グループのセンターを努め、いつも笑顔でファンに向かって手を振って輝いているクィーンもいいけど
初めて見る寝顔はNaturallyでとてもいい。