健人side
キャンパスの中庭に、佐藤の言う
松島が背の高い子とベンチに座って雑談している。
そこへ、嫌がる佐藤を連れてさりげなく話しかけてみた
松島はまるで野獣を見るかのように、オドオドした目で俺たちを見て震えている
「聡ちゃんに何の用ですか?」
立ち上がると俺より背の高いそいつが、壁のように立ち塞がった
「マリ…ちょっと待って」
青白い顔で、フラッと立ち上がると
「あの、もしかして中島先輩ですか?実は僕もオメガなんです。
まだ番はいなくて、ベータのマリが匂いで僕を襲おうとしてる奴らからこうして守ってくれてるんです。
失礼な態度とってしまいすみません。」
マリというやつに支えられ、立ち去ろうとする。
何かきっかけがあれば…
俺はとっさに
「なぁ、もし良ければだけど、
この後俺ん家に来いよ。
話したい事あるから。」と誘ってみた。
夕方、
俺のマンションに佐藤らを連れて帰る
留守の間、蒼空を見ていてくれた母と交代し、リビングに入ってもらった
すると松島が、ベビーベッドで眠る蒼空を見て、それまで儚げな感じだったのに途端に優しい顔つきになり
「先輩が産んだんですか?」って聞いてきた
俺は男でも、オメガなら自分の子供が産める事や、番が出来ればオドオドして匂いで人に迷惑をかけることも無くなるって教えた
だって、全部俺が身をもって体験した事実だから説得力はある
「あの…名前なんていうんですか?抱いてみても良いですか?」と松島
「あ~蒼い空って書いて、"そら"だよ」俺はベビーベッドの蒼空をそっと抱くと、松島に渡した
「ちっちゃい…僕も将来、自分の子供欲しくなりました。その前に番を見つけないとですが…」
松島は愛おしそうに蒼空を覗きこみながら、指の先で頬を撫でている
「あのさ、もし良かったらなんだけどさ、後輩の佐藤を紹介したいんだよね。頭も良くて優秀で…松島がうちのキャンパスに来てからずっと気になってるみたいだから。こいつアルファだけど、他の奴らとは違うから。安心して」
テーブルに出したレモネードをストローでかき混ぜながら、俺の話を静かに聞いていた佐藤が立ち上がると
「俺さ、ずっとお前の事気になってた。お前にとって俺は"運命の番"じゃなくても構わない。1から俺を知ってくれればいいから!
頼むっ、俺と付き合ってくれ!」と交際を申し込んだ
松島はびっくりしながらも
「 付き合うだけなら…まずは」
と、佐藤の言葉を受け入れた