キオミは入学後、
仲良くなったクラスメイトの飯山桃子と一緒に
サッカー部のマネージャーを担当することになった。
放課後は選手の練習をサポートし、
休日は練習試合の遠征に付き添う毎日。
家に帰れば、家事や食事の準備が待っていた。
「いっぱい青春を謳歌しなさい。」
父親も母親も、そんなキオミを温かく見守ってくれた。
片想いだったが好きな人もできた。
サッカー部の副キャプテン、
横尾崇だ。
キャプテンの高田洋平が
熱血漢なのとは対照的に、
横尾はいつも優しく部員やキオミたちマネージャーに接する、器の大きな人だった。
マネージャーはキオミの他にも二名いて、
飯山桃子と、横尾や高田と同じ三年生の宮川郁子がいた。
総勢二十名を超える部員たちのサポートは、
三名のマネージャーでも手に余るものがあり、
洗濯やスコアの整理、部室の掃除、遠征の準備など、
学校のある日は毎日八時近くまで
残っていることが多かった。
「キオミちゃんと桃ちゃんがマネージャーになってくれて、本当に助かる!」
郁子は口癖のように二人に感謝してくれた。
「郁子先輩、今まで良く一人で回してましたねぇ。」
キオミが感心する。
「回ってなんかないよー。もう、毎日ボロボロだったんだから。」
郁子の言うとおり、キオミと桃子がサッカー部を訪ねた初日、
部室は驚くほど散らかっていて、
二人を大いに驚かせた。
その惨状を目の当たりにして、
キオミと桃子は即座にサッカー部のマネージャーになる決心をした。
「類は友を呼ぶ」ということわざ通り、
キオミと桃子は、困った人を放って置けない姉御体質な性格が良く似ていた。
キオミの通うS高校では、
サッカー部は創部四年目とまだ年月が浅く、
東京都の地区大会でも、四年間でまだ一勝しか
実績を残すことができていなかった。
「私たちが縁の下から支えて、強いチーム作りに協力しよう!」
マネージャー三人の結束は固かった。
キオミの提案で、部の標語を考えることになった。
「燃え尽きよう」
その標語は、副部長の横尾が考えたものに決まった。
書道の得意な郁子が大きなパネルにこの言葉を書き、
部室に掲げた。
練習後のディスカッションも、
マネージャーたちが、
対戦校ごと、選手ごとに
まとめたスコア表と分析表が
大いに役立ち、
より綿密な戦略が立てられるようになった。
「マネージャー三人のお陰だよ。」
横尾が労ってくれる。
「悪いが、来月までにY高校の過去の試合、分析表にまとめといて。」
高田からも更なる要求が課せられた。
「頼りにされてる。いい風が吹いてるなぁ。」
キオミは嬉しかった。
