エリア・スレイマン監督

2021年 フランス・カタール・ドイツ・カナダ・トルコ・パレスチナ合作

 

 

うん。天国ではなかったな。

いや、感想の話ね。

コメディ映画でも見て気分転換しようとレンタル屋で物色。ロイアンダーソンの”ホモサピエンスの涙”とスレイ

マンの”天国にちがいない”、で少し迷うが個人的にロイアンダーソン苦手なんだよね。散歩する惑星、愛おしき

隣人、どれもハマらなかった。だから本作を借りて観たんだけれど、、、ロイアンダーソンと一緒やんけ!チーン

絵画的構図の一枚絵のカット、ヨーロッパ的なウィットやペーソスに富み風刺も多分に含んだショート

エピソードの積み重ね。若干の構図の違いはあるものの映画の作りとしてはロイアンダーソンとよく似てる。

とにかくこの手のコメディがダメなのよ。一回思考回路を通過しないといけないようなユーモアは構えて

しまい鼻白んでしまう。特に本作は背後に政治的、社会的(当然パレスチナ問題も含まれているでしょう)な

風刺が潜んでいると思われ、ようするにそれら事情を踏まえた上のユーモアだったりブラック表現だったり

するのでそういった政情に明るくない人にとっては上っ面の笑いしか得られないんだよね。あるいは笑いに

至らなかったり。勉強不足は恥ずべきことなのだろうが、脳みそ空っぽでガハハと笑ってスカッとしたい身と

しては、これほど酷なコメディ映画もないわけよ。メディアではジャックタチやチャップリンを引き合いに出し

ていて、とぼけた味わいやシュールな雰囲気は分からなくもないが本作に判り易さはない。暗喩、比喩、風刺は

その意図を理解して初めて本質を得るわけだけど、さり気なくに見えてこれ見よがしな暗喩、比喩、風刺は

”ここには何か意図が含まれている”という作為が透けて見えしまい、意味を理解しようがしまいが先に反感を

抱いてしまう。インテリの高踏趣味は好かん、という気持ちが先に立っちゃうんですな。意図が判らないから

ストーリーもぶつ切りで追えないし着地点も拍子抜けに終わった。残念ながら意味ありげなエピソードと意味の

分からないエピソードの羅列で結局なにが言いたかった判らなかったよ。本作はカンヌで、ロイアンダーソン

監督の”ホモサピエンスの涙”はヴェネチアでそれぞれ受賞しているがヨーロッパの人はこの手の哲学的なユーモア

がお好きなのかな?こういったところで改めて文化の違いを実感してしまう。最後にフォローしておくとコメディ

の棚に置くべきじゃなかったかもね。コメディ脳じゃなく鑑賞したならもっと違う感想を得られたかも。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに後日、ロイアンダーソンの”ホモサピエンスの涙”も鑑賞したが概ね上と一緒の感想でした。真顔