1993年1月20日。スイスのトロシュナの自宅で息を引き取ったオードリー・ヘプバーン。没後25年、四半世紀がたった今でも、その人気は衰えていない。記念写真展が開かれ、多数のファンを集め、また衛星放送各局で主演作が連続放映される。「永遠の妖精」との名の通り、いつまでも輝きを失わないスターといえる。

 オードリーが亡くなった時に追悼TV番組を企画プロデュースし、オランダに飛びロケをした。それは「妖精ヘプバーンの謎」というタイトルで『驚きももの木20世紀』(テレビ朝日系)(1993年7月30日)にて放映された。

 実はそのタイトルにある「謎」こそが番組企画の発端となった。その謎(今日ではファンにもよく知られている)を含めて、オードリーの謎・秘密を解き明かしていくとしよう。

Q オードリーの気品溢れる個性はどこから?

 オードリーの代表作といえば誰もが『ローマの休日』を一番にあげるだろう。映画初主演作にしてアカデミー賞主演女優賞を得たという快挙もさることながら、オードリーの気品に誰もが息をのんだ。それくらい、オードリーから演技とは思えぬ品格がにじみ出ていた。この気品・品格はどこから?

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 実は、オードリーの母親エラは、オランダ王室に繋がる貴族の出身。オードリーの気品は、まさにその血筋からのものだった。

 オードリーが9歳の時、両親が離婚して、オードリーはこの母に引き取られることになる。そして、当時、父親の仕事の関係で住んでいたイギリスから母親の母国オランダに移り住むことになる。このオランダでの出来事が、オードリーにまつわる幾つもの謎を解くカギとなる。

 時、おりしも第二次世界大戦が勃発した最中。オランダはナチスドイツの占領下におかれ、この戦火のなかで少女時代をオードリーは過ごすことになる。

Q オードリーはスパイだった!?

 さて、ここからがTV番組「妖精オードリーの謎」の企画の肝となったものだ。エラはオランダの祖父の元、アーネム(アルンヘム)にオードリーを連れてきた。このアーネムという場所がオードリーに悪夢の日々を与えることになる。

 アーネムは、連合軍とドイツ軍が対峙してオランダ国内でも戦火の激しかった場所だ。マーケット・ガーデン作戦という、連合軍がオランダ国内の補給路を確保する目的で、落下傘兵士を送り込みドイツ軍との戦いが展開された。その最後の要衝がアーネムであった。このことは映画『遠すぎた橋』のなかで克明に描かれている。

 少女のオードリーは、このアーネムにおいて、なんと対ドイツ軍へのレジスタンス(抵抗運動)に協力していた。オードリーは幼少からバレエを習っていて、このアーネムでもバレエ学校に通っていた。そのバレエ学校は実はレジスタンスの隠れ家として、ユダヤ人への国外逃亡の手助け、またバレエの発表会で資金集めなどもしていた。そこで、オードリーは秘密文書の配達(レジスタンス同士や連合軍部隊との)もしていた。それが、オードリーがスパイであった(厳密にはレジスタンスの協力者だったが)と呼ばれる所以だ。

 その秘密文書を自転車で配達中に、ドイツ兵に捕まり、からくも逃げ出す事件があった。オードリーはドイツ兵の目を盗み逃げ出して、森の中の廃屋の小屋にたどり着いた。そしてそこの地下室に数日間、隠れ潜んだ。その間、自転車のバスケットに僅かに残っていたパンとジュースのみで乾きと飢えを凌いだという。

 飢えと渇きは、その後、家に帰っても続いた。悪化する戦況のなか、食べるものも底をつき、チューリップの球根を料理にして口にするまでになったという。悪夢はこれだけではない。目の前で少年が銃殺されたり、かよわい少女が殴られる光景も目にしたという。この子供たちへの虐待を目にしたことが、晩年、オードリーをユニセフ(国連児童基金)大使の活動にかりたてた要因のひとつと言われている。

Q アンネ・フランクとの奇縁とは?

 後年、オードリーの元に『アンネの日記』の主役アンネ・フランクを演じて欲しいとの要望がきた。その際、オードリーは「この役だけは演じることは出来ません」ときっぱりと断った。それで、代わりにミリー・パーキンスがアンネを演じることになった。

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 オードリーとアンネは同じ1929年生まれで誕生日も1カ月ほどしか離れていなく、同じ時期に戦渦のオランダにいた。なんとも奇縁だが、アンネがドイツ兵の姿におびえて住んでいた時期に、オードリーも似たような体験をしていたのだ。このあまりも似た境遇にオードリーは役を断ったという。同じようなドイツ兵から隠れ住む悪夢を体験したオードリーにとってとても演じることが出来る役ではなかった。

 そして時が経ち1990年。オードリー61歳の時に、悪夢の記憶も薄れたのか、ようやくチャリティーコンサートで『アンネの日記』を朗読して、収益金をユニセフを通じて恵まれない子供たちに寄付することになる。

Q オードリーがヘビースモーカーであった理由とは?

 オードリーはかなりのヘビースモーカーとして知られている。1日にタバコを3箱(好きな銘柄はKENT)は空けていたという。

  『ティファニーで朝食を(61)』でのシガレット・ホルダーを持つポーズはあまりに有名だが、ほかの作品でもタバコを吸うシーンが多々あり、タバコ好きのオードリーの要望もあったようだ。

 

 

 その要因も、戦時下のオランダの体験からとみる。

 戦争が終わり、連合軍の手によってオランダは解放される。その時に、オードリーは貰ったオートミールや砂糖、小麦粉は嬉しかったが、その味には辟易したという。それより、何気に兵隊が口にしていたタバコをふざけて貰い受け、吸った時に、えも言われぬ味わいを感じたという。これがヘビースモーカーになった要因だ。

 食料より、タバコの味をしめ、その後も、オードリーは拒食症とはいかないまでも、バレエのプリマを目指すこともありダイエットしながら、口寂しさをタバコで凌いでいたのかもしれない。

Q オードリーの美の秘密とは?

 オードリーが未だに衰えぬ人気を保つのはその「美」にもある。世の女性の多くがオードリー・ヘプバーンのように美しくなりたいと願う。

 オードリーの容姿が美しいのは、バレエのプリマ(主役)を目指していた時の体型の管理からと言われる。残念ながら、プリマになるには背が高すぎて断念せざる得なかったが、そこで磨かれた容姿が女優で生かされることになった。

 そして、もうひとつ大きなことが『麗しのサブリナ(54)』でのファッション・デザイナー、ユベール・ド・ジバンシーとの出会いがある。ここで、ジバンシーとオードリーは生涯の友人となる。今でも、ファッションとして定番の「サブリナパンツ」はこの作品から生まれた。

 

 その時に、ジバンシーがオードリーに「美とは引き算である」と伝えた、という。ファッションと化粧で飾り立てるのではなく、むしろ何か一つでも綺麗にしてそれを効果的に魅せる。それが清楚な美しさを生みだす、と。

 オードリーは自らを「コンプレックスの塊である」と称して、自分を美人とは認めようとしなかった。しかし、そのコンプレックスを逆手にとって「どうしたら美しく見せることが出来るのか」を研究した。

 それがさまざまなファッションとなって結実もした。サブリナパンツ、ヘップサンダル、アリアーヌ巻き(スカーフ)・・・ほほ笑み方から、写真の写り方まで今日、モデルたちが参考にしている原点をオードリーは編み出した。

Q なぜオードーリー作品には名作が多いのか?

 これも『麗しのサブリナ』での出会いからだった。監督のビリー・ワイルダーはオードリーの魅力にぞっこんとなり、以降、オードリーと家族付き合いまでするまでの友人となった。そのビリー・ワイルダーから「映画は先ず、シナリオが大事」との教えを受け、以降、オードリーは先ずシナリオを読み、それで映画に出演するか否かの判断をしたという。事によったら、ワイルダー監督にもシナリオを読んでもらい相談もしていたのかもしれない。

 また、結婚した後は、家族のことを一番に考え、映画の出演本数を減らし、より作品を吟味するようになった。オードリーの出演作品数が僅か20本(端役、TV出演作品を入れても27本)と少ないのもこのせいだ。そこで、厳選された巨匠・名匠との仕事が多くなり、それがオードリー主演作品には名作が多いとの評価にも繋がっていった。

Q オードリーが急に老けた要因は?

 オードリーの美しさは、その若々しさにもある。『ローマの休日』で主演デビューしたのが24歳。30歳で演じた『緑の館(59)』では、まるで10代の少女のような姿をみせている。初期の作品でのオードリーの容姿は実年齢より5~10歳は若く見える。

 そのオードリーが35歳で演じた『マイ・フェア・レディ(64)』では、まさに美の絶頂ともいえる姿をみせた。しかし、この2年後の『おしゃれ泥棒(66)』では、一気に老けて年相応の?中年女性の片りんをのぞかせる。この間に何があったのか? 

 

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 そこには、オードリー・ヘプバーンとジュリー・アンドリュースの明暗を分けるドラマがあった。

 『マイ・フェア・レディ』は、もともとブロードウエイのミュージカルで、舞台ではジュリー・アンドリュースが主役イライザを演じた。映画化が発表された時、誰もがジュリー・アンドリュースが同じく主役を演じると思っていた。が、イライザ役を射止めたのはオードリーだった。以前にもミュージカル映画『パリの恋人(57)』で歌を披露していて、オードリーは歌うことも厭わなかった。しかし、プロデューサーの意向で、オードリーが吹き込んだ歌は、吹替え専門歌手(『ウエスト・サイド物語(61)』のナタリー・ウッドや『王様と私(56)』のデボラ・カーのなどの歌も吹き替えた)マーニ・ニクソンの歌声に差し替えられてしまった。

 全身全霊でこの役に打ち込んだオードリーは落胆した。さらに追い打ちをかけたのがアカデミー賞での出来事だった。『マイ・フェア・レディ』はアカデミー賞作品賞をはじめ8部門の栄誉に輝いた。しかしながら、オードリーは女優賞にノミネートすらされなかった。代わって、この年のアカデミー賞女優賞を受賞したのは『メリー・ポピンズ(64)』のジュリー・アンドリュースだった。そう、舞台でイライザを演じて、映画ではオードリーにその座を奪われたアンドリュースが、復讐するかの如く、アカデミー賞を受賞したのだ。このことのショックはかなり大きかったのではないだろうか。

 一時は引退を考えたほどの落ち込みようだったという。そのオードリーを『おしゃれ泥棒』で再び銀幕に復帰させたのが『ローマの休日』でオードリーを見出した巨匠ウィリアム・ワイラーだった。しかしながら、ワイラーの手腕をもってしても「妖精」は復活できなかった。

 こうして、オードリーは女優業から次第に遠のいていき、ユニセフ活動に力を入れる晩年を過ごした。

 「何よりも大切なのは人生を楽しむこと。幸せを感じること」とオードリー・ヘプバーンは言い残している。

 25年前に、オードリーのゆかりの地をロケ訪問しながら、その瞬間に感じていたのも幸せだった。

 

                 (C)2018/Cinema Tantei/Misaki Naoya

 

 

 

 

 

 

 

  スター・ウォーズ・サーガの最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が公開され賛否両論が起きている。「今までにないスター・ウォーズ。展開が斬新」といった賛から「こんなスター・ウォーズは見たくなかった」という否まで、要は旧来(特にエピソード4~6の原点3部作)と比べてかなり違ったテイストになってきたのは歪められないことで、これが賛否の一番の要因とみる。

 では、そもそもスター・ウォーズとは何なのか?ここから辿っていくとしよう。

Q スター・ウォーズはなぜサーガなのか?

 生みの親であるジョージ・ルーカス監督は、自分が子供時代にTVで夢中になっていた古い映画の放映、そのなかでも一番のお気に入りのSF活劇シリーズ『フラッシュ・ゴードン(36)』をリメイクしたかった。しかし、権利が取れなくて、オリジナルの作品として『スター・ウォーズ(77)』の映画化に結び付けた。それに、好きな映画のエッセンス=西部劇や、敬愛する黒澤明監督の『隠し砦の三悪人(58)』の要素をちりばめた。ここまでは、ファンには良く知られている有名な話だ。

 そこで、意外と知られていない、もう一つの生まれたきっかけがあることを披露しよう。

 ルーカスの映画界入りは、フランシス・フォード・コッポラ監督との出会いだった。コッポラ監督の撮影現場(『フィニアンの虹(68)』)で意気投合した二人は、一緒に会社(アメリカン・ゾエトロープ社)を興す。そして作ったのがルーカス監督の映画デビュー作『THX1138(71)』だった。ところが興業は惨敗。そこで、コッポラはその赤字の穴埋めのために『ゴッドファーザー(72)』を作ることになる。それが思わぬ世界的な大ヒットとなり、作品の評価も高く、コッポラは超一流の監督とみなされる。一方、ルーカスも負けじとならじと『アメリカン・グラフィティ(73)』を作り、これも大ヒットを飛ばしデビュー作の穴埋めどころかかなりの大金を手にすることなる。

 その勢いに乗って、ルーカスは親友ジョン・ミリアスから持ち込まれた大作「地獄の黙示録」の企画を立てた。しかしその前に、長年の夢だったススペースオペラ(宇宙SF活劇)の構想を実現したくなり「地獄の黙示録」の企画をコッポラに譲り渡してしまう。ルーカスがスター・ウォーズの企画に対して、コッポラから口出しをさせない(権利を自分だけのものにしたい)ためと言われてるが、ここからがシネマ探偵の推理だ。

 ルーカスはコッポラの『ゴッドファーザーPARTⅡ(74)』を観て「自分もこんな家族の年代記(サーガ)を作りたい」と想ったのではないだろうか? そこで、その時に構想していたスター・ウォーズを『フラッシュ・ゴードン』のような単なる宇宙活劇としてでなく、家族年代記(サーガ)として描くことにした。だから、コッポラにその構想案をゴッドファーザーからパクったと言わせないために(権利主張されるのを防ぐ意味で)バーターで『地獄の黙示録』の企画を渡したのではないだろうか?

 ルーカスは全9部作としてスカイウオーカーの一族年代記(親子3代まで)を、あたかも、コッポラのゴッドファーザーにおけるコルレオーネ・ファミリーのように描こうとしていた・・・

 スター・ウォーズ・サーガはSF版ゴッドファーザーを目指して構想されていた!?

  『スター・ウォーズ(77)』は全世界興業収入のトップに踊りでる記録的な大ヒットを飛ばし、商品化権でも莫大な富をルーカスにもたらす。片や『地獄の黙示録(79)』は製作に難航、興業も赤字こそまぬかれたが大儲けには至らず、その後の『ワン・フロム・ザ・ハート(82)』の興業の大失敗にも追い打ちをかけられ、コッポラが後に破産に追い込まれる素因となった。

 ハリウッドの巨匠の明暗を分けた分岐点としても興味深い。

Q なぜ、スター・ウォーズは違った作品になっていったのか?

 スター・ウォーズ・サーガ9部作を構想していたルーカスだったが、1~3作を作った時点で「もう充分」だと全9作を全6作で完結させることを宣言した。

 しかしながら、一番のうま味である商品権利収益(実際、映画の収益を遙かに上回っていた)だけは継続・拡大させていきたかった。そこで、世界最大のキャラクター・ビジネスを展開するディズニーと手を組むことにした。版権管理を共同で行うという条件のもと、残りの映画製作をディズニーに渡しても構わないと考えた。ディズニーとしても、マーベル・コミックの一連の映画化で収益を伸ばしていた矢先にスター・ウォーズという絶好のコンテンツを手に入れたかったので、両者の思惑は合致した。

 そして新3部作、およびスピンオフ作品が作り始められた。だから、冒頭に述べた旧来のスター・ウォーズとは違ったものになっているのは、ルーカスの手を離れている(ディズニー側は7作目を作る際にルーカスが出したシナリオ構想を拒絶した)のでファンが「いままでの作品とは違う!(熱狂的なファン達からは、オリジナルへ戻せとの要望運動も起きている)」と言っても後戻りはされないだろう。

 新スター・ウォーズ・サーガは、その世界観を引き継いだ「ディズニー印」の別の作品となったからだ。

Q ライアン・ジョンソン監督をなぜ起用したのか?

注:ここらは新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に関するネタばれがありますので、未見の方は留意ください。

 当初、7作を監督したJ・J・エイブラムス監督が8作でも引き続き脚本および監督を務めると予想されたが、一般には名の知られていないライアン・ジョンソンが脚本と監督に起用された。

 このライアン・ジョンソン監督の起用が新作の謎のいくつかを解くカギとなる。

 ジョンソンの代表作『Looper/ルーパー(2012)』は、タイムマシンが実現した近未来、殺害したい人物を殺し屋と共に過去に送り、そこで殺し屋に殺させ、殺害の証拠隠滅を図るというのがメインの話。その未来では、TK(テレキネシス)と呼ばれる超能力が、普通の庶民にもたらされている。ものを浮かせたり、操ったりする能力だ。スター・ウォーズのフォースに似ている。

 プロデューサー(ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ)がジョンソンを起用したのは「その才能を買って」からだと言うが、このことが頭にあったかもしれない。

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Q レイは誰の子?

 最新作で、ファンの誰もが思っていた「レイはきっとルークの娘である」という期待ははぐらかされた。これだけのレイの強大なフォースは、スカイウォーカーの血筋でなければもたらすことが出来ない。そう思うのも当然だ。しかしながらカイロ・レンは無情にもレイに「おまえの両親は飲んだくれで、飲み代欲しさにお前を売った。今頃は惑星ジャクーで埋葬されていて、お前は孤児なんだ」と言い放つ

 つまり、フォースは何も特殊な血筋による能力でなく、ミデイ=クロリアン(知性を持つ微生物)が体内に寄生されれば誰もが持つことが出来るから、レイも庶民の中から誕生した?との暗示がある。

 そう、まさに『Looper/ルーパー』のTKと一緒ではないだろうか?

*追記 レイはパルパティーンの孫であることが『スカイウォカーの夜明け』で明かされた。無理くりとの指摘もあるが、そもそもアナキン(ダースベイダー)すらも、実はパルパティーンの息子であるとコミック版(ダースベイダー)でされている。さすれば、レイとカイロ・レンも血を分けた親類であり、妙に納得できてしまう。

Q スノークの正体は?

 そうして考察してくると、ファースト・オーダーの最高指導者スノークも、シスの暗黒卿の子孫であるというより、単に強いフォース(ミディ=クロリアンに寄生された)を身に付けたエイリアンであった。というオチになりそうだ。だから、カイロ・レンにあまりにも、あっさりと殺されてしまう。

*追記 『スカイウォカーの夜明け』では、パルパティーンの隠れ家には、スノークの生体(クローン?)があり、パルパティーンは「スノークは私の操り人形」であると明かしている。これも無理くりな設定であるが、納得させられてしまう。

Q ルークはなぜ消えた?

 『Looper/ルーパー』では、強大なTKで未来を恐怖で支配するレインメーカーという人物が存在する。そのレインメーカーの過去の子供の頃に、主人公はタイムトラベルで知り合う。そして、自分の行動がこの子供の運命を変えて、恐怖のレインメーカーを誕生させた事に気づく。だとしたら、自分が消えれば(死ねば)その誕生を阻止することが出来る。そして自らの命を絶つ。

 この流れも、今回のルークが起こす行動に繋がってみえる。かつて、カイロ・レンをダーク・サイドに落としたのは自分の責任である。そしてまた強力なフォースを持つレイが出現した。自分が再びレンのようなダーク・サイドにレイを落とすかもしれない。レンとレイが組んだら悪夢の帝国が復活してしまう・・・だとしたら、入滅(僧侶のように)して消えよう。そしてルークはヨーダの元(霊体)に旅立った?

Q ラストの子供の意味は?

 ルーカスフィルムからデイズニー映画に映画製作が移り、スター・ウォーズはファミリー・サーガ(年代記)の枷(かせ)がはずされた。ゆえに、今後は誰もが(スカイウォーカーの一族でなくとも)主人公になれる。最新作の公開前に、9部作のあとにさらに新3部作が作られることが発表された。

 その主人公になるのでは? と思わされたのが最後に登場する少年だ。カジノ都市「カント・バイト」でローズから貰った(であろう)レジスタンスの指輪をはめて掃除を始める前、箒を魔法のように手元に引き寄せる。強力なフォースの持ち主であることが暗示される。

 そして、夜空を横切る流れ星。「新たな希望」を示すと共に、ここに「ディズニー印」=『ファンタジア』で、魔法使いの月と星の帽子をかぶり、宇宙を夢見る「魔法使いの弟子」であるミッキーマウスを想い起こさせるがはっきりと見て取れる。

 魔法使いの弟子(パダワン)」が誕生したことが暗示される‼

 

 スター・ウォーズは、ゴッドファーザー・サーガ(一族の年代記)の世界から、魔法の国の世界(誰もが魔法使いになれる夢の国)に移り変わったのだ。

  こうして、むかし、むかしの遠いどこかの銀河系で・・・の「お伽話」が再び始まる・・・

 

 

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  (C)2017/Cinema tantei/misaki naoya

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シネマ探偵を標榜していることで、ここは先ず「探偵」とは何かについて書いておこう。折しも、エルキュール・ポアロ探偵が活躍する『オリエント急行殺人事件』が公開中だ(本ブログは2017年末に書いてます)。

 そこで、ポアロの前に、先達であるシャーロック・ホームズに関して触れなければならない。シャーロック・ホームズは、コナン・ドイルが創造した人物でありながら、あたかも実在したかの如く、彼の住んでいたとされる「ベーカー街221B」にはホームズの家が再現され、「シャーロック・ホームズ博物館」として開放され、世界中のシャーロキアン(熱狂的なホームズ・ファン)を集めている。かくゆう私も以前に訪問して、ホームズ・マーク入りのネクタイを購入して、宝物にしている。

 実は、シャーロック・ホームズこそ映画化されている小説のキャラクターのNO1であり、これはギネスブックで認定されている。我が日本の明智小五郎探偵なども含めて、ホームズなくして探偵小説というジャンルは生まれなかっただろう。

 ポアロも、ミステリの女王アガサ・クリスティの小説を代表する探偵で、ホームズの子孫だ。では、ホームズとポアロはどう違うのだろう。これは、探偵の捜査方法の違いにあると思う。

 思考法の区分けに「演繹法」と「帰納法」がある。「演繹法」はひとつのものから仮定を出して、その仮定を論理で立証していく。「帰納法」はいろいろなものから仮定を出して、その仮定を論理で立証していく。

 ホームズは、タバコの燃えカスからそのタバコを吸った人物像を探り出す。片や、ポアロはタバコのカスだけでなく、灰皿、さらには周りにある品々すべてを合わせて、そのタバコを吸った人物を割り出す。

 ホームズは「演繹法」型探偵であり、ポアロは「帰納法」型探偵であるといえる(むろん、両者とも「演繹」と「帰納」の両方の思考を使うが、基本としてだ)。

 ホームズ型の探偵は、先の明智小五郎であり、ポアロ型の探偵は金田一耕助であるといえる。演繹型の探偵の欠点は、対象がそもそも間違っていたら導き出す結論が違ってしまうこと。証拠自体がまったく違っていて、ミスディレクション(間違った方向に向かう)を起こすこと。帰納法の探偵の欠点は、より多くの対象を集めるまで結論が出ないこと。連続殺人事件が続かない限り犯人を割り出せないケース。「そんなに人が死ぬ前までになぜ、犯人を指摘できなかった?」になる。

 もうひとつ、ホームズが生み出した探偵小説のセオリーは、聞き手のワトソンの存在だ。聞き手はすなわち読者となる。「5W1H」(誰が、いつ、どこで、誰を、どうして、どうやって殺したか?)の問いがあるからこそ、答えが返ってくる。これも探偵ミステリ小説の定石だ。 ポアロにはヘイスティングス、明智小五郎には小林少年、金田一耕助には等々力警部と言った具合に、聞き手が登場する。いわば、Q(聞き手)&A(答え)だ。

 本ブログも、ワトソンがQとなって登場する。

 そこで、ポアロもの最新作『オリエント急行殺人事件(2017)』からのQ&Aをひとつ。

(以下から、映画・小説のネタばれを含みますので未見の方はご留意を‼!)

 

 

Q なぜ容疑者たちが12人なのですか?

 12人とは、陪審員の数であり、その元をただすとキリストの弟子の数。12人の陪審員が公正な裁きを加える、というキリスト教を原点とする西洋のモラリズムがある。そこで陪審員=裁くものが容疑者となったというのがクリスティらしい仕掛けだ。

 新作では、列車の外のトンネル内で待機させられる容疑者たちがレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」の構図風に配置され、キリストの12人の弟子として表現されている。

 因みに前作『オリエント急行殺人事件(74)』のシドニー・ルメット監督は『十ニ人の怒れる男(57)』で、まさに陪審員そのものを描いている。ルメット監督に映画化の話が持ち込まれた大きな要因とも言われている。作品の出来(演出もさることながら、撮影・音楽・衣装とすべて秀逸)スターの格(新作キャストとは月とスッポンくらいの差!)が新作より遙かに上であると思う。未見の方は是非、DVDで観賞して欲しい。

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Q ポアロはなぜ卵の形にこだわるのですか?

 新作の冒頭で、朝食の卵の形にこだわるポアロの姿が描かれる。ふたつの卵の形が揃わないとポアロは納得しない。ここに、ポアロの探偵としての信念が伺える。ポアロにとって、犯罪とはこの世の秩序(均衡)を乱すものに映る。ゆえに、善と悪のバランスを保つように、悪をさばく。

Q 帰納法での犯人探しとは?

 事件の謎を解く要素で重要なのは「犯罪(犯人)の動機」だ。先の5W1Hでいえば「どうして(WHY?)」が決め手になる。ミステリの中には動機なき殺人という変則もあるが、現実の犯罪を含めてすべて動機(原因)があるから犯罪(結果)が生じる

 常人(ワトソン)も、動機がありそうな容疑者を差して「こいつが犯人だ!」と名指しする。金田一耕助シリーズでは等々力警部の「よし!わかった!」(加藤武さんが名演)という口癖に通じるものだ。しかしながら、ここからがミステリの醍醐味で、探偵は常人が思いもかけない真相を突き止め「意外な犯人」をあぶり出す。注:ネタバレです→『オリエント急行殺人事件』では、動機がある容疑者すべてが犯人であるという、驚くべき真相をポアロが解き明かす。

Q ポアロが歴史上の謎の事件。たとえば「坂本龍馬暗殺」事件の謎を解いたら?

 坂本龍馬の死に関しては「誰が(黒幕)、どうして(動機)」の謎がいまだに解き明かされていない。坂本龍馬のDVD(『坂本龍馬の生涯』)を企画プロデュースした際に、龍馬研究の諸氏にも尋ねたが、最後まで突き止められなかった。

 

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 そこで、自分なりに推理したことを拙作の舞台劇『歴女探偵~龍馬が消された真相を追え!』で描いた。ここで推理の元になったのがポアロ探偵が謎を解いた『オリエント急行殺人事件』だ。

 龍馬暗殺に関しては、実行犯は京都見廻組であるのが通説となっているが、黒幕は、幕府側説(会津藩・紀州藩など)、薩摩藩説、土佐藩(後藤象二郎、岩崎弥太郎)説、フリーメイソン(に所属していたとされる)グラバー説に至るまで諸説紛糾でこれといった結論はいまだ出ていない。

 調べれば調べるほど、誰もが怪しいというのが龍馬暗殺の謎だ。

 であれば、皆が結託して龍馬を暗殺したとしたら? 

 トンデモ説には違いないが、そう考えたら妙に腑に落ちた。

 薩長土は表面的には倒幕で繋がっていた。また幕府内でも保守派と革新派が存在していて、倒幕派と通じているむきもあった。であれば皆が京都という、いわば幕末のごった煮のスープの中で混じり合い、互いの利権・利害で動いていたことは想像に難くない。

 誰が、龍馬暗殺で得をしたか? これが龍馬暗殺の謎を解く最大のカギ。

 龍馬は名前にあるように、生まれた時に背中に毛があり、そこから伝説の麒麟に似てるので龍馬(麒麟)と名ずけられた。

 岩崎弥太郎がその礎を作ったのが麒麟!ビールで、原資とされるのが、龍馬が亡くなり後藤象二郎がせしめ、岩崎弥太朗に渡されたという、いろは丸の賠償金(約7万両=現在の通貨価値だと15億円くらいになる)という。

 その土佐藩、そして薩長、それに幕府の一部勢力の思惑が重なり・・・

 これ以上は「シネマ探偵」より「歴女探偵」に登場願って真相究明していただきたいので、そちら(ライノベ辺り?)でまた取り上げさせていただきたい。]

                                    (C)2017/Cinema tantei/misaki naoya