対岸の火事ではない | Twilight326

対岸の火事ではない

インターを降りて東京に向けてひた走る頃、
すでに津波の被害が始まっていた。

前日に会っていた彼女たちの顔を思い出しながら
『何とか無事でいてほしい、、。』そう願っていた。
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国道4号線を南下しながら時々ナビを確認すると
とてつもない渋滞が発生している。

なんとか幹線道路から外れようと地名は忘れたのだが
茨城方面へ向けて道を逸れた。

途中、警官に先の橋が決壊し土砂崩れを起こしている
と言われ、改めて地震の凄さを感じた。

僕が通った茨城の一本道も家の塀が両側から倒れてきており
車一台通るのがやっとの道もあった。
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ずっとそんな景色を見ていると工事中なのかと
いまだに平和ボケした頭が現実を拒否しようとする。

進路を知人の住む茨城の取手に変更し幹線道路を避けて
崩れた塀をよけながらひた走る。

あたり一面は本当に真っ暗で車のテールランプだけが
視界に入ってくる。

もしここで塀に乗り上げたり割れたガラスを踏んで
パンクなんかさせたら一巻の終わりだと感じた。

誰も他人のことなんかかまっていられない
我先にと車道もコンビニのトイレもガソリンも、、、。

知人の店に辿り着いたのは深夜の1時過ぎ

酔う気にもなれなかったが脱水症状に近い状態で
出してもらったビールを一気に飲み干し今日の出来事を話し出す


いつの間にか寝てしまい起きたのは午後3時頃
ようやく落ち着いてテレビで地震のニュースを見ることができた。

津波による二次災害は始まっていた
沢山の人の生存安否が確認できない状態になっていた。

本日は3月14日で当日から3日経過しているが
津波の通った後には何千という遺体がいまだ回収されずにあるという。

当日のアポイントのキャンセル
新規開拓を取りやめて岐路に着いたこと
普段ならありえないガス欠に見舞われ超高速走行を中断できたこと

今思うとその日はなんとなく自分でいて自分でないような
そんな不思議な時間を過ごしていたような気がします。

もし僕があの仙台でこの地震に巻き込まれたら一体どうなっていたのだろう!?
おそらくは身寄りのないあの場所で死んでいたかもしれない。

そう思うと改めて大いなる力に助けられたような気がしてしまう

自宅に戻ると風呂に入って体を温め、髭を剃り、歯も磨ける
なんて事のない単純な事がとても幸せに思え、申し訳なく思える

あの、東北の寒い地で家族の生存確認もできないまま
時間の経過だけが彼らの救いになっているのだろうか!?


こちらに戻るとコンビニの食料品や水が品切れ状態になっている
静かな夜にたむろして奇声を発しているガキ共がいる。

ここにいる人たちはまるで対岸の火事とでも言わんばかりに
ガソリンスタンドに並び、コンビニに並び生命の維持に躍起になっている。

それはほんの一部の人たちであることも良くわかっている
自分のあまりの無力さを僕は八つ当たりしているだけだと、、、。

今ここに感じているほんの些細な自分の幸せに感謝し
僕のできることを精一杯やるしかない、、、でもこの無力感

昔、強くなりたかったのはこういう有事の際に
人の役に立ちたかった事を思い出した。

お金を稼ぐことも、力を持つことも
自分にとってのプライオリティーはこれだと確信した。


昔レスキューの方に今回のような非常事態になった時には
助けに行くことが難しいと話を聞いたことがある。

今回のような惨事が地球規模で起こった時に誰も助けには来れない
その時、我々は助け合って生き延びることができるだろうか!?

コンビニで我先に食べ物や水を奪っていった人たちの行動
今回のことをまるで対岸の火事のように扱う人の言動

本質においては一部かもしれないが生命の維持には皆殺人的になるだろう。

様々な場所で見かけたその行動に対して
『力』は持たなければいけないのかもしれない。