育成 その3 の続き。

 長らく放置していたシリーズです。

忘れていたわけではなく、採集⇒水槽投入⇒一年経過観察して結果が出るのを待っておりました。

日本産水草水槽計画! と銘打ちながら水槽内には熱帯産のも入っておりますが、そこはあくまで「計画」ということで(汗)

では、いくつか紹介。



ヤナギモ

もっとも入手しやすい水草の一つ。
池にも川にも湖にもドブにも生えている。
形状から水槽後景に植えて水流にたなびかせるようにすると映える。

(底床)主に砂。土質の池にも生えているのでソイルでも可能と思われる。

(光)20w 1灯でも育つ。  

(CO2)不要。 

(肥料)主に根元に底肥。たまに液肥。 肥料なしでも即枯れることはない。

(冬季)特に問題なく成長する。

(その他)
とにかく育てるのが楽という印象。
マツモ、セキショウモと肩を並べる入門種といえる。
注意点を挙げるとするなら「頻繁な植え替え、トリミングを避ける」ということ。
ヒルムシロ科(ポタモゲトン)全般に言えることだが、伸びてきたからといってばっさばっさ切っていると草体自体が弱ってくる傾向がある。
ヤナギモはまだ茎の真ん中で切っても脇芽を出してくれるので助かる。
水槽では後景に植えて水面まで伸ばし、あまりいじらない方が調子は良い。




ヒルムシロ 浮葉


ヒルムシロ 水中葉(CO2添加無し)


ヒルムシロ 水中葉(CO2添加有り)

野性下では浮葉を形成している。
水中葉と水上葉の明確な区別がないようで、ササバモに似た葉を水中で伸ばし、水面に達すると浮葉に変化する。
水中ではやや間延びした印象になるので、水槽よりビオ向きかもしれない。

(底床)砂でもソイルでも育つ。 

(光)20w 2灯以上 

(CO2)あってもなくてもよい。 添加すると上の写真のように葉が濃い緑色になる。 

(肥料)主に底肥

(冬季)加温してもしなくても問題なく育つ。

(その他)
調子良く育てるには「とにかく浮葉を出させて水面から光合成、根から養分吸収」の状態にもっていくこと。
安定すれば、地下茎を横に伸ばして増えていく。
トリミングする時は地下茎を切って植えなおす。茎を途中で切っても根は出さないので注意。
なお、浮葉が多くなると水面の流れが死んでアオミドロが発生したりするので、
弱らない程度に浮葉を取り除くと良い。

※ヒルムシロの仲間にフトヒルムシロとオヒルムシロがある。
この2種はノーマルに比べると水槽内育成は難しい。




(フトヒルムシロ)

水中葉はエビモを太くした形態をとる。
弱酸性、貧栄養の水を好むのでブラックウォーターや肥料分の少ないソイルが適しているが、その環境だと他はタヌキモ類くらいしか育たないのであえて水槽内育成する意味もない。
野外だと春に浮葉を出し夏には枯れ始めるので屋外ビオでもあまり観賞するには不向き。




(オヒルムシロ)


オヒルムシロの水中葉(中央の細い葉)

他と違い、細長い水中葉を展開するのでレイアウトには使える。
しかし、成長は非常に遅く浮葉もほとんど出さない。
高温にあまり強くないので通年育成していると成長の遅さと相まって徐々に縮小していく。




シソクサ


水槽内で水中化し始めたシソクサ

普段は水田雑草で抽水状態で生えている一年草。
葉を揉むとシソの香りがする。 水中化させた葉も揉むとシソの香りがした。
見た目が普通の雑草なので慣れないとフィールドでは見落としてしまう。
自然度の高い水田でないと、まず見掛けない。

(底床)ソイル

(光)強め 

(CO2)必要

(肥料)主に底肥。 たまに液肥。

(冬季)加温してやれば成長不良にならずに伸び続ける。

(その他)
多くの水田雑草は「開花・結実」すると水槽に入れてもそのまま枯れるか調子が悪いが、シソクサは違う。
上の写真のように既に枯れかかった草体でも成長点を作って水中化を始める。
さらに結実した種子を水中にばらまき発芽もする。
冬も調子をあまり落とさないので一年を通じてレイアウトに使うことができる。
ただし、トリミングや急激な環境変化にさらされると茎が腐って枯れることがあるので注意。
調子が良ければ脇芽を出すので増やすのは容易。




イトモ

写真中央の細い草。
水上葉は出さず常に水中化している水草。
野生では冬に殖芽を作って越冬する。

(底床)砂か肥料分の少ないソイル 

(光)強め

(CO2)添加

(肥料)ソイルの場合はなし。

(冬季)加温すれば育つ。

(その他)
草体が細くて小さいので大きい水槽では相当な量を入れないとボリューム不足となる。
魚の食害に遭うと消えてしまうので小型水草水槽の後景に使うのが適している。
成長は割とゆっくりで扱いやすい。
気をつけたいのが、加温しないと新芽を堅くして殖芽を形成して切り離し、越冬モードに入る。
加温してやれば、また芽を広げて成長を始める。
貧栄養の環境が好きらしく、肥料分の少ないソイルの方が調子が良い。使い込んだ肥料切れのソイルだとさらに調子が良くなる。
ポタモゲトンの割に差し戻しで容易に増える。




ホソバミズヒキモ

写真中央の細い草。
野生下ではヒルムシロを小さくした浮き葉を形成しているが、屋内水槽ではほぼ水中葉しか展開しない。

(底床)砂か肥料分の少ないソイル

(光)強め  

(CO2)添加

(肥料)ソイルの場合はなし。

(冬季)特に問題なく育つ。

(その他)
育て方は上記のイトモとほぼ同じ。
草体がイトモ以上に貧弱なので採集圧や扱いやすさを考えれば小型水槽向き。
貧栄養を好むので肥料分の少ないソイルを使うと調子が良い。
乾燥にとても弱く、ちょっと水から出しておくだけで乾いてしまうので取り扱いには注意。
こちらもイトモ同様、差し戻しで増殖可能。




サイコクヌカボ

タデ科植物。
野生では似たものにヤナギヌカボ、ヌカボタデがある。
水上葉はタデ科らしく地味。
地味がゆえに見つけるのは困難。

(底床)ソイル。 砂は試していないので不明。

(光)強め  

(CO2)美しく育てるには必要。 

(肥料)主に底肥。

(冬季)問題なく育つ。

(その他)
タデ科植物は見た目の地味さから注目されないが、本種は水中化する上に長期維持できる優等生である。
差し戻しで増えるし、冬も成長不良にならないので重宝する。
加えて水中葉は新芽の部分がほんのりと黄色味がかり美しい。
成長速度は普通で週1回程度のトリミングで事足りる。
トリミングにも強い。
元は水草というより湿地植物だが、日本産水草の中では安定してアクアリウムに使える貴重な存在である。




イボクサ(上から)


イボクサ(横から)

田んぼ脇にツユクサとセットで普通に生えている雑草。
花もツユクサより地味で野外では特になんということもない草である。

(底床)ソイル

(光)強め 

(CO2)必要

(肥料)底肥と液肥。

(冬季)問題なく育つ。

(その他)
水槽導入当初はとにかく水没を嫌い、すぐに伸びて水面から出ようとする。
形もやや武骨である。
しかし、トリミングを繰り返している内に成長は徐々に遅くなり、草体も細くなって水草らしくなってくる。
強光下だと頂芽が赤味を帯びて美しい草姿となる。
上記のサイコクヌカボと同じく、「冬でも成長が止まらない、頂芽が縮れない」特性を持つ。
増やし方は差し戻し。トリミングにも強い。
形が独特なため、レイアウトにはセンスが要求されるがアクアリウムに即戦力として使える存在。

育成 その5 へ続く。