
ここから先は残った人類だけで進むしかない。
意を決し巨大な扉を通り抜けると、目の前には大きな空の下、のどかな町があらわれた。
「俺はおかしくなったのか」
「ならば私もおかしくなったことになります」
「あの町の先に見える山の上です」
田園の先にある町に向かって進む。
まばらにすれ違う人々はまるで異性人でも見るかのように彼らを避けていった。当然といえば当然で、血塗られた戦闘服など完全に場違いな場所である。
混乱している彼らにひとりの女の子が正面から近づいてきた。
「その重たそうな道具はここでは何の役にも立ちません。全てそちらの孔へ」
・・・・「あちらでお茶でもいかがですか」
いつのまにか巨大な暗黒ホールが彼らのすぐ後ろにひろがっていた。
Williamたちには解らない。それは天をも突き抜ける巨大な大蛇ヨルムンガンドが大きく口を開けている様とは。
■[ ヨルムンガンド ]とは =======
北欧神話では世界を包み込む程巨大な大蛇
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背筋が凍りつく暗黒を誰もが始めてみた。
そしてそれが何であれ彼らは本能的に赤子の状態になったことを悟った。
通りのカフェで腰掛け対峙すると女の子の表情が変わり、冷たいまなざしで
「ここに来た人間はあなた達以外いない。それに、これからもいない」
女の子は疑似体の女性研究員(Alice jonsson)でなく、まだ子供の、本当の(Alice jonsson)だった。
「“Alice jonsson”はあなたたちの意識が偶像化したとき様々な女性研究員となりて、その実態ははじめからあなたたちの目の前にいる私以外なにもありません」
彼女の思考は驚愕を超えていた。やがて際限の無い多くの会話が哲学の討論会のように並んだ。どのくらいの時間が流れたのだろうか。Thjalfi(シャールヴィ)のパーソナリティは混乱し、Roskva(レスクヴァ)のセルフアイデンティティは強烈なダメージを受け沈黙した。
ただ、あらゆる意味で頭が爆発しそうになりながらも、そもそもこのフィールドが苦手なWilliamは最後に胸ポケットからあの中東で出会った、爆発で傷だらけになった女の子の写真をとりだし
「君の理論は正しいかのかもしれない。
だが、人が動く理由、それがたった一枚の写真だったりもする時、君の理論では私たちはこの清らかな地を、汚れた血によってけがし、命をあがなうただの愚か者にしか見えないのだろうが、
そんな愚か者がここにいる理論を呈した上で今、
君はまったく予期しなかったであろうこの場所で私と話しているのかい?」
(あの好敵手の魂が助けてくれたような感覚。そもそもWilliamはこんな台詞を言ったことが無い)
やがて命がけのミッションによって
「Shining Candy」8号機、「Shining Candy」7号機は停止した。
Aliceは最後に言った。
「助けた訳ではない。ただ、新たな興味の湧く事案が見つかった。収穫祭の後、分けられたチーズをもって伺いましょう」