師匠 | 真夜中の深海Bar

師匠

グラフィック0910.jpg
☆バーラジルの臨時営業のご案内☆

10月26日(日曜日)
通常営業↑
06-6362-0369
ーーーーーーーー


私がバーテンダーをさせて頂き、
時早くも8年の月日が流れた。

『bartender』と言えば聞こえはいいが、
私自信そう呼べる程、その道の基礎学を学んだのか
また、他店行き着けのお客様に恥じない立ち振る舞いと
メンタルにおける安存に貢献出来たのか
正直申し上げて、懸念しか残らない。

この問題は、決して対外的にではなく
自問自答の最中で、自ら暗礁に乗り上げた最大の未解決問題であろう。

では、私は一体なんなのだろうか?

私は、後にも先にも
『営業マン』

なのである。


良い物を多くの人々に提案し提供する
言わば情報の伝道師。

バーテンダーである前に、
私はいつでも

『営業マン』

なのだ。


そんな経歴の為、バーテンダーとしてどこかで修行した訳でも無く
勢いだけで始めたが故、師匠などいない。

そういった存在がいれば、
もう少しそれらしい立ち振る舞いが出来たのかもしれないのだが。

さて、私のベーススタイルは、
セールスと言う事になるのだが
そうならば『師匠』は存在する。

その『師匠』は仕事もさることながら、それ以外の社会で生きる為に必要な多くの雑知識や哲学、理念、感性を教えてくれた。


あれはサラリーマン時代。

ユーザー様に商品納品と立ち会いで
『師匠』と四国の愛媛県に社用車で向かった時の出来事。

季節はまだまだ寒く、その日は愛媛でも高い山々では積雪が観測されるほど。

遠方から来た我々を出迎えたのは、厳しい雪山の凍結路。

町乗りが多い社用車に雪上を軽快に走る装備など無く、
持参したタイヤチェーンの装着こそが、
唯一の現状を乗り切る選択肢となった。

外は氷点下張りに凍てつき、吐く息は白く
じきに指先にまでその感覚が到達する。

その感覚は次第に指先からも消え、
手そのもの自体の存在を消し去っていく。
私が運転席から降り立ち、
トランクからチェーンを取り出し
装着の準備をしていると
師匠も助手席から外へ出られた。

師匠はそのまま凍結した道を先に歩いてゆき、
随分先の地点で足を止めてなにやら見入っている。

恐らく先見性のある師匠の事だから、
道の先の状況を前もって確認しに行かれたのだろう。

自分の身の危険を覚悟して。

そんな事が平気で出来る男なのだ。

やはり器が違う。

凡人の私には、おおよそ理解し難い発想と行動力の持ち主なのだ。


右のタイヤに何とかチェーンを装着出来た。

と、その時である。

先を調査しに行かれた師匠が、なにやら叫んでいる。

『お~い!!小島~!!大変や~!!』

一体なにがあったのだろうか!?

なにか、大変な事件に巻き込まれたのではないだろうか?

かじかんだ指先を吐く息で暖めながら、
私は不安定な雪道を師匠の場所まで走って向かった。

『なんかあったんですか?』

少し息を切らしながら辿り着いた私に
師匠は小さな凍結した石清水を指差し、

『ほら、きれい。』

と一言いった。

最初は、何の事かわからなかったが
すぐに理解できた。

師匠は、こう教えたかったに違いない。

『目先の事に気をとられ過ぎて、先にある美しい物を見逃すな』

と…。

さすが師匠である。

やはり器量が違う。

そのあと師匠は、

『ちゃぶい、ちゃぶい』

といいながらさっさと車に戻り、
助手席の窓を少し開けて

『なぁチェーンまだぁ~?
遅いんやったら牛でもできるでぇ~』

と、車内でタバコを吸いながら
とても優しく声援をかけて下さった。


部下に対する気配りにも余念がない。

まさに上司の鏡、まるで島耕作の様である。


また、東京出張にて接待の後
師匠と2人新宿で反省会を開いた時の話。


日本最大の歓楽街である
歌舞伎町の夜更けに圧倒されている私に、
当時は細路地から湯水のごとく溢れ出す

『キャッチ』(ラウンジ、キャバクラ等の呼び込み)

の猛攻撃を受け、
その得体の知れぬ黒くそして、
淡い誘惑に私はほぼ完敗しかけていた。

そこでも師匠は師匠たる威厳を私に見せてくれた。

言葉巧みに誘惑してくるキャバクラキャッチを相手取り、

『おまえは初対面で信用できひん。』

『ど~してですか~?
僕が嘘つくように見えます~?
信用してくださいよ~
今なら3000円で60分ご案内できますよ~
さらに、今日はパジャマ祭りで~す!』

とキャッチ。

『パジャ…、そうか…。
でも、おまえはまだ信用できん。』

さすがの師匠も、若干パジャマ祭りの攻撃が効いたのか
一瞬ひるんだが、
すぐさま体勢を立ち直し

『おまえ、免許証貸せ。
俺ら出てくるまで、ここ動くなよ。』


なんと、初対面の人間から免許証を奪い取り、
相手より有利な立場に立ったのだ。

しかも、30分を40分にまで延長交渉して。

決してパジャマ祭りに負けた訳ではない。


師匠が私に身を挺してまで教えたかった事とは、
営業マンたるもの必ず交渉の際には
相手と対等か、それ以上の立場を持って
交渉をスムーズに進めるという折衝術なのだ。

パジャマ祭りなどに全く興味を持たない師匠は、
私の為に店内でも楽しいふりをして
大はしゃぎしていた。

なぜ、反省会の場がキャバクラなのか。

洗練された感覚をお持ちの師匠は、
恐らくお互い店内でのアイコンタクトだけで充分だと判断したのだろう。

そしてやはり店内では師匠は多く語らなかった。

決してキャバ嬢との会話が盛り上がり過ぎてではない。

接待疲れした私をいたわっての誠心誠意の真心である。


店内で師匠がくれた
『たのしぃ~』

と、

『延長する?』

の二言にその気持ちが凝縮されていた。


天性の感性。

努力の行動。

無力の帰宅。


私は営業マンである。

しかしながら、まだ師匠を超える事はできない。

なぜなら、今や彼は師匠の粋を超越した存在だからなのだ。

人々は彼の事をこうささやく。


『ミスターパーフェクト』

と。



☆★NEO SHOT BAR(ネオショットバー)ー深海の洞窟 & BAR l'asil(バーラジル)サイト★☆
お店のお得情報満載のHPもチェックしてね!

携帯版
http://i.neoshotbar.com
PC版
http://neoshotbar.com