お歌の練習 | 真夜中の深海Bar

お歌の練習

先日の話である。

私が会社勤めをしていた時は車で通勤したり電車で通勤していた。

その移動時間は特になにかをするでもない『ムダ遊び』の時間であった為、
流行りの音楽をMDに録音しては流れる景色を見ながら聞いていた。

通勤は毎日の事なので、
2、3日同じMDを聞いていると自然に楽曲が頭に入り、
友人やらとカラオケに行けば
初めて歌ったとは思えないぐらい自然と歌詞がメロディーに乗った。

その頃はまだ若く、頭が柔軟だったせいかもしれないが。

では、今はどうかといえば
新しい音楽がさっぱり頭に入らない。

自営業になり、移動中の音楽学習時間があまり無くなった事が言い訳になるのかどうかは分からないが、
覚える気で覚えないと全く頭に入らない。

しかし、世の中便利になったものだ。

なんと、携帯電話に着うたをフルコーラスでダウンロードできるのだ。

わざわさ、レンタルしてMDに落としたり、
パソコンからメモリに落としたりする手間が、
電話一台で全て省けるのだ。

私は早速今流行りの音楽を何曲かダウンロードし、
イヤホンを携帯電話に差し込み、
音楽を聞きながらジムに向かった。

ジムでのランニングマシンは退屈で、
テレビはついているのだが、
実際30分近く走っていると
『ちちんぷいぷい』
の角淳一も飽きてくる。

ところが今日はひと味違う。

なんといっても、耳からはダイレクトに新しい音楽がリズミカルに入ってくる。

周りの騒音を遮断する為にボリュームは高めにして、
軽快なリズムで走っていた。

何曲か終わり、私の一番覚えたい真打ちの曲の番がやってきた。

歌詞を頭に叩き込みたいので
携帯電話をポケットから手に取りボリュームを最大に上げたその時、
事件は起こった。


ツルリと手から携帯電話が滑り落ち、
ランニングマシンのベルトの上に落ちた。

その瞬間、私の耳とイヤホンの相性が勝ってしまい、
携帯電話本体からイヤホンプラグが抜け、
高速ベルトコンベアが電話機を後ろ向きにほり投げた。

イヤホンの抜けた本体には、
非常に余計なお世話の迷惑な本体スピーカーが装備されており
大音響で私の聞いていた音楽がジム内に流れた。


ぽっぽぽぽぽぽぽっ~ぽ~♪

同い年の鼠先輩が、ご機嫌にジムに流れ初めた。

周りの人達はやや笑っている。

慌てふためいた私はそれを取ろうとバランスを崩し、
マシンのベルトコンベアに足を取られ、思いっ切り転倒し
携帯電話同様に後ろ向きに投げ出された。

周りは確実に笑っている。


以前もお話したが、ジムでは私はほとんど人と話さない。

が故に、気持ち悪がられている。

そんな奴が、仏頂面でイヤホンを差し
ストイックにランニングマシンで走っているのだ。

なのに聞いている曲は
『ぎろっぽん』

しかも、恥ずかしさ余って転倒までしてベルトコンベアに押し出され、
携帯電話の上に落ちたのだ。

幸い携帯電話は無事で、
まだぽぽぽぽ言っている。

なんで壊れてくれなかったのだろう。

焦りから、メディアプレイヤーの止め方も分からず
鼠先輩は結局最後まで歌い終えた。

立派だと思う。

でも、私は周りを見る勇気が持てず
インストラクターの
『大丈夫…じゃないでしょうね…?』

の身を案じる優しい言葉にすらリアクションする余裕は無く更衣室にトボトボ向かった。

まるで、路上で自分の名前入りのパンツを落とし
人だかりの中、取りに行くぐらい恥ずかしかった。

こうまでして覚えた『鼠先輩』の
『ぎろっぽん』
を披露する日がいつかは来るのだろうか。

次ジムに行く時は何も無かったかのように行ってやるつもりだ。

私は改めて自分自身を大人だなぁと思った日だった。


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