JR明石、三ノ宮間の小さな物語 | 真夜中の深海Bar

JR明石、三ノ宮間の小さな物語

先日、普段あまり利用することのない電車に乗った時の出来事。

車内は適度に混み合ってはいたが、
すし詰め状態ほどではなかった。

そんな最中、出入り口付近では緊迫した状態が何かを待つように続いていた。

そこには二人の男がいた。

その男達は、互いの目を睨みつけ何もしゃべらなかった。

一人は、50代半ばの少々目つきの鋭い中年男性。

片やもう一人は、20歳前後の若い今時の青年。

職場の上司部下なのか、はたまた親子関係なのか。

ただ、その二人が一触即発の状態である事は誰の目にも明らかだった。

先に青年が口を開いた。

『なんやねん!おっさんっ!文句あるんかいっ』

その言葉で中年男性は堰を切ったように口を開いた。

『なんややあらへんやろ!人押しのけて入って来て、『邪魔やおっさんのかんかい』っはないやろ!その口聞けんようにしたろかいっ!』

青年もむきになり

『おっさんが、ドア開いてるのに携帯見てボ~っとしてるからやろが!』

と言うと、中年男性は

『それやったら、目上の人に対しての話し方っちゅうもんがあるやろがぇ!ど突き回したろかぇ!』
と酷く悪態づいた。
『なんや、やるんかい!おっさん次の駅で降りろよ!逃げんなよ!』
と青年が凄んだ。

『おお、ええやろ。お前みたいなガキ一回痛い目みなわからんねん!後悔すんなよ!』

中年男性も引かない。
両者は睨み合っている。


そして、1分ぐらいの無言が続いた。

周りの乗客も無言だった。

誰もがこの時、このあと繰り広げられるであろう血みどろの展開を予測し、胸を締め付けられていたのだ。

そんなとき、静寂を破り中年男性がふっと笑った。

『なに笑とるねん、おっさん!』
青年が噛みついた。
『お前はあほやのう…。』
中年男性は言いながら少し微笑んだ。

『なんやと。なにがあほやねん?』

青年がけげんそうに言うと、

『お前の年に近いバカ息子を思い出したわ。今、一人暮らしで九州行ってるけどなぁ。』

『なんや、おっさん子供おるんかい』

青年が聞くと、

『ああ、おるよ。お前みたいに血の気は多いねんけど、父の日には毎年プレゼントくれるんや。このシャツもそうや。
お前見とったら息子思い出したわ。』

中年男性はもう笑顔だった。

『なんやねん。やる気失せるわ。』

青年が言った。

『俺はおやじに怒られた事ないねん。仕事で俺をほったらかしや。大人に真剣に怒られた事ないんや。おっさんに切れられてマジびびったわ。』

その青年の目には笑顔と涙が溢れていた。
『どや、次で降りて飲みにいくか?』

中年男性が言った。
『ええけど、今日バイトやねん。こんどいこうや!約束やで』

二人は笑顔だった。
中年男性は父親の顔をしていた。

青年は携帯を取り出し連絡先を聞いている。

まわりの乗客は窓の外に目を向け、
心で拍手していた。


年の瀬の、ちょっといい話。(実話)


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