2月25日、どうしても早く帰りたかった。
ごめんね、仕事でこんな時間に帰ってきた。
日付変わってしまったね。
キミと出逢ってから、9年が経ったね。
偶然にも夜になって降り出した雨。
あの日のように強い雨じゃないけれど、空もボク達のこと覚えてくれているのかな?
今夜の雨は静かで、まるで今のボク達のようだと思わないかい?
おやすみ、ハルカ。
2月25日、どうしても早く帰りたかった。
ごめんね、仕事でこんな時間に帰ってきた。
日付変わってしまったね。
キミと出逢ってから、9年が経ったね。
偶然にも夜になって降り出した雨。
あの日のように強い雨じゃないけれど、空もボク達のこと覚えてくれているのかな?
今夜の雨は静かで、まるで今のボク達のようだと思わないかい?
おやすみ、ハルカ。
ボクがとった行動を誰かが知ったなら、バカだと笑うだろう。
でも、ボクにとってハルカの言葉、行動のひとつひとつが力になった。
ハルカだけが自分が生きる術だった。
ハルカからの留守電のメッセージ以降、ボクは明るくなっていた。
会社でも、「何かいいことがあったのか?」と聞かれるくらいに。。。
あれから2週間が経ち、2月も終わりに近づいた夜のこと。
一通のメール。
「流星さん、ありがとう。助けてくれて。」
まぎれもなくハルカからのメール。
よかった、信じて。安心感から、ひとりでにやついていた。
「元気でよかった。今、どこにいるの?」
「両親と一緒に駅前のホテルに。」
「よかった。ご両親が迎えに来てくれたんだ?」
「そう、でも救ってくれたのは紛れもなく流星さんよ。」
「ほんとによかった、ほんとに。」
「ありがとう、今から両親と食事にいくから後でメールするね。」
「うん、でもメールなくてもいいよ。ゆっくり休んで!」
これは夢なのか?いや、事実に間違いなかった。
ボクは初めて、生きていてよかったと思った。
2時間後、ハルカからメールがあった。
「流星さん、お金返したいの。」
「ん?」
「送ってくれたでしょ、お金。ちゃんとあるから。」
「いいよ。ハルカが無事だったんだから。」
「よくない、示談金は両親が払ったから。これからアタシも働いて両親には返していく。」
こんなカンジで結局、ハルカと延々2時間近くメールで話しをしていた。
「ハルカ、おやすみ。また明日。」
「おやすみ流星さん、また明日。」
3ケ月ぶりの「おやすみ」。いや、こんな幸せな「おやすみ」は、もっと久しぶりかもしれない。
お互いにそう思いながら別々の場所で、互いを近くに感じながら眠りについた。
それから数日後、ハルカの姉から留守電にメッセージがあった。
「ハルカと電話したけど、あなたの言う通りだった。親に相談するかちょっと考えてみる。」
ボクは安心した。
ハルカが助かるかも知れない。
翌日、仕事を終えて帰る際に非通知で着信があった。
そして留守電になつかしい声が。。。
「もしもしお姉ちゃん、ハルカです。アタシは元気だから心配しないでね。」
おそらくデリヘルのオーナーの前で電話させられているのだろう。
でも、ボクへのメッセージだと分かった。
自然に涙が出た。
自宅への車中、涙が止まらなかった。
数日が経過したが、ハルカの姉からも連絡は無かった。
ボクは貯金通帳を確認した。
今、何とか使えるのは40万円。
そして、ハルカの姉のふりをして手紙を書いた。
「ハルカへ
元気ですか?お姉ちゃんは元気です。少しでもハルカの足しになればと思って
お金を送ります。
帰ってこれるようになったら、連絡してね。」
ハルカの住所は分からないが、ボクと一緒に住んでたココに送れば
ハルカの元に届くだろう。
そしてポストに投函した。
一種の賭けだった、ハルカでは無く別の人間がこの手紙を見たなら
お金はハルカの元に届かないだろう。
この時ばかりは、神様に願いをこめた。
想いはきっと通じる、そう信じるしかなかった。