飲み会以降、ヨウヘイと話す機会はグンと増えた。

元々、仕事で同じ係にいるのだから、話す機会はそこそこあった。

それまでは仕事のことで、事務的な用件だけを話していたのだが

飲み会で会話を交わし、歳も近いことを知り、

私にとって彼はとても話しやすい存在に変化していた。



飲み会の日に感じたモヤモヤは、翌日になると薄れていた。

だから私は、あれは酔っていて少しおかしかったんだろうと、そう自分に言い聞かせた。

元々仕事上の付き合いしかない私達だから

彼に彼女がいようがいまいがどうでもいいことだと…そう思っていた。



会社の飲み会は1ヶ月に1回以上は行われ、

その会の度に私とヨウヘイは親しくなっていく気がした。

2回目以降の飲み会の席はランダムだったので、最初遠く離れた場所に座っても、

会の途中や2次会から自然に隣にいることが多かった。

色々な話をしていく中で

私と彼は趣味や性格が合うのではないかと思い始めた。

だから、彼と話しているといつもとても楽しかった。




7月、いつもの会社の飲み会。

2次会から隣同士になった私とヨウヘイは、映画の話をしていた。

もうすぐ公開される映画だった。



「面白そうだよね~。私、絶対見に行く!」


「俺も行く予定。すっげ楽しみ。」


「ヨウヘイ君も期待してるんだ!私の周り、あんまり興味ないって子多くてさ。」



映画はいつもシンや友達と見に行っていた。

だけどその時ヨウヘイとの話題にのぼった映画は

さほど前評判がよくないのか、シンも友達も観にいかなくていいと言っていた。

私はとても楽しみにしていたので、ヨウヘイも映画を楽しみにしていると聞いて嬉しかった。



「あ、俺の周りもそうだよ。一緒に観にいこって誘っても乗り気じゃない感じ。」


「なんでだろうね~。私すっごい楽しみなのに。でもヨウヘイ君も同じで嬉しいよ。」


「はは。もし観にいく人いなかったら、一緒に行く?」


「そうだね~。その時は一緒に行こうか!」



酒の席だったのもあって、すごく気軽にそう約束をした。

具体的な話はなに1つなかったし、私も彼が本気で私と行こうと考えているとは思わなかった。

ただの話の流れでの口約束。

そしてその後、携帯番号とメールアドレスを交換した。

仕事や飲み会で仲良く話していたけれど

私とヨウヘイはそれまでお互いの連絡先さえ知らなかったのだった。




その飲み会から1週間ほど経って、映画の公開が始まった。

相変わらず私の周りは誰も観たいと言わなくて、

つき合わせるのも悪いので、私は一人で行こうかと思っていた。

ヨウヘイとの約束を忘れたわけではなかったが

彼が本気で言ったのかもわからなかったので、自分からは何も言うまいと思っていた。

メルアドと携番を交換したとは言え

ヨウヘイとメールをしたのは、交換したその日の、飲み会の後だけだった。

「今日はお疲れ様」というような事務的な内容のメールを。




映画の公開が始まって数日経ったある木曜日の夜。

その日、シンとは会っていなくて、私は部屋でテレビを観ていた。

メール受信音が鳴り、携帯を手に取った。


21:08 ヨウヘイ君

こんばんわ


受信BOXのメール一覧。

新着の場所にそれを見つけて、心臓がドキッと鳴った。

どうしたんだろう…

思いながらメールを開いた。



『映画の公開始まったね。誰かと観にいく約束しましたか?

俺のほうはやっぱり誰も付き合ってくれそうにないから、

もし予定なかったら一緒にどうですか?』



丁寧な口調で書かれたメール。

一緒に映画って…デート?

いや、でもお互い恋人もいるし、ただ誰も一緒に行く人がいないからだし…

シンも行かないって言ってたし、行ってもいいよね…。

メールを見ながら色々考える。

だけど最初から答えは決まっていたように思える。

私はメールの返信を打った。



『私も誰も行く人いないから、一緒に行こうニコニコ

いつがいいかな?都合のいい日教えてね。』



初めて会社関係以外で会う約束。

なんとなく浮き足立つ心を必死に抑える。

すぐに返信が届いた。



『早いほうがいいなー。土曜日とかどう?

もし都合悪かったら別の日にするよ』



土曜…。

仕事が休みの週末は、特に予定がなければ、大体金曜の夜からシンと一緒に過ごしていた。

その週末もそのつもりだった。

だけど…



『土曜でOKだよ~。楽しみにしてるね!』



私はそう返信をしていた…。

シンとはいつでも会えるし、早く映画みたいし…いいよね?

そう自分で理由を立てる。

元々シンとは、お互い予定がなければ、会うってことにしてるんだから。



自分がシンよりもヨウヘイを優先したということを認めたくなかった私は

そう必死に言い聞かせていた。

ヨウヘイと時間や待ち合わせ場所などのメールをやりとりしながら

楽しみだと思う感情を、抑えることができなかった。